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第4話

9/27 1100 凪Side 「ん…っ?」 あー…、昨夜飲みに行って…? あれ?俺、 誰かと寝たんだっけ? 朝、久しぶりに隣に感じる人肌に寝惚けながらも記憶を辿る…。 …… …ヤってねーよ。 そもそも自宅に女の子連れ込まない派じゃん! 未成年家に留守番させてるからって音楽仲間との飲み会を早めに切り上げて帰ってきたんだ… 布団を捲ると綺麗な顔した子(紅葉)が隣に寝てた。 いやいや!…何もねーよな?! 酔ってたって言っても男同士だし…!! 服着てるし!! うわっ…ビビった!! なんつーか、朝から妙なダメージが…!! 「おい、紅葉ー? お前なんでここに寝てる?」 「ふぁ…?」 もぞもぞと起き出した美少年はサイドに寝癖をつけながら目をパチパチとさせた。 睫毛なげーな…。 「起きた? 時間へーきか?」 「あれ?凪くん…? はよー…。……」 「いや、座ったまま寝んなよ(笑)」 紅葉がうちに居候して3日。 誰かと一緒に暮らすなんて、実家を出てから初めてだけど案外うまくいってると思う。 俺の家(賃貸だけど)には防音の練習部屋があって、紅葉と交代で個別に練習をしている。 合わせたい時に音合わせが出来る環境なので紅葉の上達も速い。俺も紅葉のベースラインに合わせて細かな調整を入れたり、全体的にはどうかと考えたりする時間が楽しいと感じている。 かなりの勢いで基礎と曲の軸、ポイントを叩き込んだけど、紅葉は全く臆することなく、正確に理解し、時に質問し、修正し、独創的なベースラインを作り上げていく。 音楽に向き合っているときはものすごく真剣で、その成長ぶりははっきり言って末恐ろしい。天才以外なんて表せば良い? それにお互いの練習を聴いているだけでも刺激になって、特に紅葉のバイオリンは巧いし心地好い。クラシックなんてロックばかりやってきた俺にはお堅い音楽だと思っていたのに…すごく癒されている。 そのうち紅葉のバイオリンにドラムソロを合わせるのもありかなとか考えたりしている… なんていうか、こいつの音楽性に惹かれちゃってる…のか? ヤバい。 自分で考えてて頭イタくなってきた…!! さっさと起きて朝食作ろう…!! その前にコーヒーを飲もう。 「紅葉!! 学校っ!!午後からって言ってたけど、そろそろ起きねぇと遅刻すんぞー!!」 「っ!! お、なかすいたよー。」 「ははっ!! さすが10代。 準備しとくから顔洗って来いよー!」 「凪くん?! わわっ!! あれーっ?」 テンパってる紅葉の柔らかな髪をくしゃっと一撫でして、キッチンへ向かった。 オフモードになると、年相応(もしくはそれ以下)の少年で…全体的にほわほわした雰囲気だ。 今朝もだが何かと手がかかる。 よきせぬ同居には理由があって… 本来同居しているはずのみなが、多忙な上にサポートメンバーが紅葉に変わって衣装などの調整をしつつ、曲作りも平行して作業しているため、押し付けられたのだ…。 …そーいえば、コラムの締切3日過ぎてるけど原稿白紙だって言ってたな。 確かに何から何まで面倒みろと言われたっけ? 他のメンバーに任せようにも、リーダーでギターの光輝はバンドの個人事務所社長、マネジメント管理、インディーズレーベル代表も兼務のため超多忙。何事も完璧主義者。バンドマンにしては真面目過ぎる男だ。 もう一人のギター、誠一は有名私立大学生兼友人と会社を興しているこちらも変り者。美形で、めちゃくちゃモテるけどな。 みな曰く「誠ちゃんと紅葉じゃ頭のレベルが違い過ぎて…。ってかあの人、女のとこ行って面倒見ないよ、絶対」 だからってなんで俺が…と聞いたら 「凪はなんだかんだ面倒見がいいし、ごはんも作れる。彼女もいない。」 おい。 なんでお前が知ってるんだよ。 どうせ彼女なんて半年以上いねーよ。 と、思わず突っ込んだ。 有りがたくも日々忙しいのと、ドラマー特有なのか先輩後輩との付き合いがけっこう多いし。 そりゃあいい年した男だから、時には可愛い子を見つけて一夜を共にすることもあるけど…。 たまたまそのまま付き合おうと思える子に出逢えてないだけ…だと思いたい…。 まぁ、バンドがある程度知名度をもつようになってから、女の子と遊ぶのもだいぶ気をつけてる。 でもいきなり同居? まぁ、未成年のほぼ外国人を放り出すわけにもいかず…結局自宅に招くことになった。 紅葉のハニーブラウンの髪は朝の太陽光の下ではキラキラと輝き金髪にも見える。 モデルのような細身の身体に長い手足。 色素の薄い肌は確かに外国人を思わせるのに、人懐こい性格とベビーフェイスで屈託のない笑顔は万人を惹き付け、濃い目のグリーンの大きな瞳は黒目にも見えるせいか日本人の要素も見せる…。 左目は少しヘーゼルの色が入っていて神秘的だと気付いたのはついさっきだ。 「凪くんごめんね。」 朝食を用意してやると紅葉はシュンとしながら謝ってきた。 「別に怒ってねーけど…ビックリはしたなぁ。男子高校生に寝込み襲われたかと思った(笑)」 「違うのっ! えっと、夜中に目が覚めて…。 僕いつも兄弟と寝てて…、一人で寂しかったから、ちょっと顔見ようと思って部屋に入ったら凪くんもう寝てて…!! あの、何も変なコトしてないよ?! 寝顔見てただけ…。そしたら僕も眠くなって寝ちゃったみたい…!!」 「あー…、そっか。」 「ごめんなさい。失礼なことしました。 気持ち悪い? 出ていった方がいーい?」 「…そこまで気にしてねーよ。 あ、ホームシック的な? 悪かったな、一人で置いていって…。 酒の席だったからさ…」 「えっと…、ちゃんとお留守番出来るし、もう凪くんの部屋には行かないから僕ここにいてもいいかな…?」 「いいよ…。 じゃあ学校終わったら合同練習な。」 「うん!! 凪くん、ごはんとっても美味しい!! おかわりしていーい?」 「いーけど、朝からよく食うね(笑)」

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