紅葉side 一方その頃、みなのマンションでは… 「ちゃんと告白出来たんだ？」 「うん…！手紙も渡せた！ 迷惑じゃないかなー？ 奇跡が起きて付き合えたりとかしたらいいのに…。 なんで僕、女の子じゃないんだろう…。」 「紅葉はその辺の女の子より可愛いよ？ もうちょっとアピールしとけば？」 「アピール…？ え、みなちゃん！僕の長所って何？」 「顔と見た目？ バイオリンが上手い。」 「えーっ?! それだけ?!」 「とりあえず可愛く攻めてみよっか？」 「うん…？」 10/6 1640 そんなノリでイトコのプロデュースの服に着替えて、凪くんのお家に音源を持ってやってきました…。 玄関のチャイムを鳴らすと低めの声で「誰？」と聞かれ、「紅葉だよ」って言っても一瞬信じて貰えなかった…。 「お前…その格好で電車乗って来たのか？」 「うんっ。恥ずかしかったー!! はい、これ、新曲の音源！」 「いや、データでさっきもらったし…。 それ(女装)見せるための口実だろ？」 「そーなのっ?!」 「一瞬みなが来たのかと思ったけど、あいつこんな格好しないしな…。モニター見てビビった。 この服どーした？ってか、脚寒くねーの？」 白のニットセーターと同じく白のモコモコ素材のショートパンツに上部にレースがついた黒のニーハイとショートブーツを合わせて、メイクしてもらったのだ。 髪は胸までの長さがあるウイッグを2つ結びにしもらった。 …自分で鏡を見ても驚いたけど、どう見ても女の子に仕上がっていた…。 メイクってスゴい…!! 「へ、変？！」 凪くんの視線がスゴくて緊張する。 「まぁ…可愛い…んじゃね？ 違和感ないのが怖いくらいだけど…」 「ほんとっ?!やったっ！」 「でもお前、別に女の子になりたいわけじゃないんだろう？」 「うん…、そーだけど！こういう格好したら一緒にお出かけしても、凪くんイヤじゃないかなぁって思って…。」 「別に紅葉と出かけるのイヤじゃねーよ。 男同士でも普通に買い物とか行くし。 だから無理に着飾らなくていい。 いつものままでいいから。」 「凪くんっ!! 嬉しいー!!」 「つーか、なんかロリっぽいな。 えー、俺そーいう趣味だと思われてる？ …とりあえずメイク落とすか…。髪も…。」 ウイッグを外してもらって、メイク落としシートで顔を拭く。 「…むしろスッピンでも違和感ないのがスゲーよ…!!ジェンダーレスってやつだな…。」 「そう？ 隣に座っていい？」 「いーけど。…脚、これ掛けて。」 膝掛けを貸してくれた。 暖かい～ 「脚好きなの？」 「そこが出てるとなんか落ち着かないんだよ!!」 ニーハイとショーパンの間の素足が気になるらしい。ずっと視線を感じていたのでもしかしたら凪くんは脚フェチなのかな？と思った。 ちょっと動揺する凪くんが可愛くてソファーの隣を詰めて近づいてみた。 ノートPCで音源を確認している横顔がすごーくカッコいい！ 「心の声漏れてるよ？」 口に出してたみたい！！ 「ごめんなさい…っ。 気持ち悪いよね…。」 そっと距離を取って、膝掛けをギュっと握った。 「いや、別に気持ち悪いとかはねーけど…！ そーいえば、紅葉って誰かと付き合ったことあんの？」 「ないよ？ 今まで誰も好きになったことなくて…。 言ってもらったことはあるけど、ずっとよく分からなくて…。 あの、…その、そっか。面倒なのが気になるなら練習してくるよっ！」 「アホ!! どこの誰とだよ！！ 言っておくけど、それ浮気だからな?! いーからいつものお前らしくしとけ!! なんか調子狂うんだよ…！」 凪くんはイライラしたみたいで、普段僕の前では吸わなかったタバコに手を伸ばした。 「うん…。 あの、ごめんなさい…。 僕、今日もう帰った方がいいかな？」 「待て。帰るなら送る。 その格好じゃ心配だし…!! あと、別に面倒でもないから。 俺が言った事だけど…変なこと気にしなくて大丈夫だから。」 そう言ってもらって、頭を撫でてもらったらすごく嬉しくて、 なんだか今日は空回りしちゃったけど、凪くんの「大丈夫」はすごく安心出来るんだ…。 でもそのままでいいって難しい。 ありのままの自分を好きになってもらうってどうしたらいいのかな？ 僕、バイオリンはちょっとは上手かもしれないけど他に何ももってないし…。 一気に自信がなくなってしまった…。 「あ、ちょっとだけでいいからバイオリン、弾いてくれないか？」 このあとレッスンがあるから着替えとバイオリンは持ってきていたんだ。 先にズボンを履き替えて、 凪くんのリクエストにはりきって弦を構える。 得意のバッハで『無伴奏パルティータ 第３番』ロンドとガボォット なんでだか分からないけど、ベースを猛練習してからバイオリンの演奏も安定している。 音も綺麗に最後まで弾き終えることが出来た。 「やっぱお前のバイオリンは最高の癒しだね。」 凪くんからの言葉こそ、僕にとっては最高の誉め言葉で一気に元気がでる魔法のようだよー！