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第11話

10/7 凪Side LIVEを終えたばかりだというのに次の新曲を煮詰めつつ、ラジオ出演や雑誌の撮影、取材を受ける。 空き時間は個人練習と後輩のフォロー、ジム通いで埋まっている。 あれから紅葉とは毎日会っている。 まぁ、そうは言ってもドラムとベースの練習と飯だけだが…。 告白後で気まずくなるかと思ったが、2人でいても今まで通りで、たまに無意識に距離が近くなったりすると驚いて向こうが離れたり、それで頭とかどっかしらをぶつけている… 本当分かりやすい反応だ。 まぁ、そうやってすぐ動揺するところがちょっと可愛く見えてる…とか…。 で、この日はローディーをやってくれている後輩の優希の初ライヴに顔を出していた。 紅葉も他のバンドを見るのも勉強になるからと言うので連れてきている。 緊張する優希を宥めて、ドラムのセッティングを見てやって、打ち込みの音とのパワーバランスなどを軽くアドバイスする。 無事に優希たちのバンドの出番が終わり、次のバンドのセッティングが始まる。 「俺、ちょっと声かけてくるから…」 「うん!ここにいるね。」 紅葉をフロアに残して楽屋に顔を出した。 興奮気味の優希たちを労い、今度飯に連れていく約束をしてフロアに戻ると、紅葉が一人の男と話していた。 「あ、凪くん、おかえり!!」 「雷(らい)?お前も来てたの?」 「わぁー!凪くんだっ!!お久しぶりです! そうなんですよー。 って、あれ? 紅葉くん、凪くんの連れだったんですね。」 「紅葉はうちのサポメン。 2人知り合いだったのか?」 「違うよ。 あっ!あのね、雷くんがジュース買ってくれた。」 「いやー、なんかめっちゃ美少年がいる!と思って声かけてたんですよー。 一杯奢らせてもらって、これから仲良くなろうかな?みたいな。 そっかー、Linksのサポメンなんだ!」 「そー。よろしく。 紅葉、そろそろ帰るぞ。」 「えっと、まだ2組残ってるよ?」 「いーから。 雷、これこいつの分。 それと、コレ(紅葉)は遊びとかダメだから。」 「…残念。まぁ、そんな感じッスね。 了解でーすー。」 雷にジュース代を渡し、紅葉の手をひいてライヴハウスを出る。 突然の俺の行動に驚いたのか、紅葉もオロオロとしていた。 「凪くんっ、どうしたの?…怒ってる?」 「あのな、知らないやつにいきなり奢ってもらうとかなし。」 「うん…。」 「あいつはバイでこういう所でもナンパひっかけるので有名だから、友達もなし。連絡先教えたりしてないよな?」 「教えてないよ。あれ、ナンパだったの?」 「そう…。紅葉が知らないだけで、悪い男ってその辺にいるからんだからな。 もう少し危機感持てよ? なんでもホイホイ信じて着いてったりしたらヤバい目に合うぞ?」 「分かった…。気をつけるね。 ふふ。凪くん心配してくれたの、嬉しい。 ありがとう。」 「お前ね…。本当分かってる?! 紅葉の容姿は目立つし、みんなキレイなものに群がるんだよ! お前の行動1つでスキャンダルとかになったらバンドの行き先も変わるの。 ちやほやされて気分いいのかも知れないけど、あまり浮かれてるんじゃねーよ!」 「っ! ごめんなさい。」 「あっ! 紅葉っ!!」 ヤバい。 言い過ぎた…。 と思った瞬間には紅葉は走り出していた。 追いかけたが、街は人混みで見付からず…。 一呼吸置いて冷静になると、これは完全に嫉妬からの八つ当たりじゃねーか…。 涙目の顔が頭から離れない…。 「最悪…っ!」 慌てて紅葉に電話が繋がらなくて心配したが、その後、とりあえず無事に家に帰ったことはみなを通じて連絡がとれたのでその日はそれ以上のコンタクトはやめた。 帰宅後はものすごい自己嫌悪。 紅葉は思った以上にまわりを惹き付ける。 整ったキレイな顔に色白ですらりとした今時のモデル体型。 屈託のない笑顔と真っ直ぐすぎる性格。 モテないわけがなかった。 呑気な紅葉がナンパに気付かずにいることにもイラついたけど、他の男と楽しそうに話している姿を見てめちゃくちゃイラついたんだ。 完全に嫉妬だろ…。 ヤバい。 あいつに堕ちかけてる。 …なのに傷付けた。 「どうすっかな…。」 夜中までいろいろ考えていたら寝過ごして、朝(俺的には深夜)紅葉から着信が入っていたが、気付いた時には授業中だろう時間だったのでLINEを入れた。 昨夜言い過ぎた詫びと会って話そうと。 しかし昼に来ていた返信には今日(8日)と明日(9日)はテストらしく、終わったらと…ビミョーに距離を取られた感じだ。 えー、そしたら次に会えるの誕生日(10日)の時じゃん…! いや…その前になんとか時間作って会いに行かないとこのまま終わる気がする…。 さすがにこれで終わらせたくないかな…。 仕方ないので仕事して、久々にジムで発散する。

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