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第13話

スマホのアラームで目覚めたのが1230 とりあえず…二時間ほど眠れた。 既に紅葉は隣にいなくて、とりあえずリビングに向かう。 そろそろ飯も作って食わせないと…。 「紅葉~? なに食いたい?」 声をかけるが返事がなくて、見渡せばリビングの一角にある防音の部屋でバイオリンを弾く姿を見つけた。 「っ! あ、し…っ!!」 何故かスエットの下を履いてなくて生足が剥き出し、完全に彼シャツ状態で、しかし本人はそれを全く気にせずに真面目に演奏に集中している。 ヤバい… 細い、白い…生足… なんとか意識を足から遠ざけて防音ルームへ近付く… 扉の前まで行けば僅かだが音は聞こえる。 なんだったかな…有名な曲を弾いていた。 相変わらず上手い。 俺に気付いた紅葉は少しは眠ったのだろう、さっきよりはいくらか顔色がよさそうだ。 「凪くん、おはよっ!」 「おはよう。 お前ズボンは?」 「起きたらどっかいって見付からなかったー!!(笑)制服はまだビミョーに裾が濡れてるの。」 「別の服出すから…。 あ、飯何にする?」 「カレー!!」 「寝起きにカレー?(笑) いーけどよ。 じゃあ出来たら呼ぶから…」 「待って、僕も手伝う!! カレー作れるよ!! みなちゃんに教えてもらった!!」 「そうか…。 じゃあ手伝い頼む。 あ、多めに作って持って行けばいいな。 あいつ帰れたかなー?」 「まだ連絡ないよ…。心配。」 「大丈夫だって。 弁護士と光輝がなんとかする。 あ、飯食ったらもう一回さっきの曲弾いて? なんて曲名か知らねーけど、キレイなやつ。」 「G線上のアリア、バッハだよー バッハ好き~」 「俺は髪型しか知らねー(笑)」 その後2人でカレーを作って食べて…(紅葉の包丁使いにはハラハラしたが…) バイオリンを聴いて、そのあとはアップテンポの曲に変えてノリでドラムと合わせてみたり… 朝の出来事が嘘だったかのように穏やかで楽しい時間を過ごした。 (因みに下は履かした。) 「凪くんのドラムカッコ良くて好きー! 即興であんなに叩けるものなの? 僕ももっとベース練習しないと!」 いつも通り明るい紅葉にホッとする。 良かった。 ショックも大きかっただろうけど、もう前を向いている。見た目だけでは分からない芯の強さは本物だ。 結局…俺は紅葉の笑顔を見ていたいのだ。 一番近くで、特別な関係でみることが出来たらどうなんだろうか…なんて考えていた。 昨日みたいな泣き顔や、今朝みたいな苦しい顔じゃなくて、紅葉の笑顔にひかれ、元気をもらい、時に癒されている。 些細な嫉妬や周りの偏見にも負けない信頼関係が紅葉となら築けるのではないか… こいつは求めた以上に返してくれる。 なんか意識し始めたらやたら紅葉が可愛く思えて急に離したくなくなっていた。 「今日はもうこのまま泊まれば? 明日仕事の前に送ってってやるし、電車も乗りたくないなら学校まで行くし。」 そう言うと過度なまでに驚きテンションのあがる紅葉だった。

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