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第14話
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みなのマンションにて
「で?
私がブタ箱にぶちこまれそうになってる間に2人でイチャイチャラブラブしてたって?」
「ブタ…??
違うんだけどー、んー。
なんか凪くん甘かったっ!」
「あ、そ。
で? 付き合うんだよね?」
「分かんないけど…明日のデートでもう一回告白してみるね!」
「浮かれてるけどさー!
紅葉…、これから演奏会とテストと年明けはコンクールだよ?
どうすんの?
バンドもあるしキツくない?」
「うーん、頑張らないと…だね!!
演奏会みなちゃん来る?
凪くんも来てくれるかな?」
「いいけど…。
付き合うなら演奏会来てもらえばいいじゃん」
「ふふっ。頑張るー!」
紅葉は一気にやる気をみせた。
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紅葉の誕生日
去年迷子になった新宿駅での待ち合わせだが、今回は迷わなかった。
約束時間の20分前に到着した紅葉は念には念をと、先ほどビデオ通話でみなに場所が合っているのかを確認済みだ。
服は前回の反省からシンプルに。
黒のショート丈ジャケットに首もとにラメの入ったオフホワイトのカットソー、ダメージ加工されたスキニージーンズにブーツ。
朝イチで美容室にも行き、伸びてきた髪を切り、セットもしてもらった。
凪は少し仕事が押してるらしく、待っていると次々に声をかけられるようになる。
日本人にはNoと言い日本語が分からないふりを、外国人には逆に英語が分からないふりをしてその場をしのぐ。
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「いた…っ!
何してんの?
見えなくて探した。」
凪が到着すると、ナンパと怪しげな勧誘防止のためにとしゃがみこんで地面を見ていた紅葉。
「あ! 凪くん! お疲れ様ー!
アリさん見てた…!」
「アリ?
それもういい?
…行こっか。
遅れてごめんな?」
「いーよっ!!」
凪は全身黒系のコーディネートで、薄い色つきのサングラスという出で立ち。
腕時計と重ねたオニキスのブレスレットが大人の男らしくスタイリッシュにまとめている。
デートと言っても男同士なので、フツーに紅葉の観たいと言っていた今話題のアニメ映画を観ることに。
「これ2~3年前からシリーズになってたやつの続編?」
「うん!このアニメで日本語勉強したんだー!」
「そりゃあスゲーな…っ!(笑)」
映画の後はカフェでお茶をしながら他愛のない話を楽しみ、凪は誕生日プレゼントにと一緒に選んだ服、これから使えるだろうコートを買ってあげた。
女の子とのデートならレストランでディナー、ホテルの流れだろうが、凪はデートということを意識し過ぎず『友人』として店を選んだ。
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「ここ?」
「そう。ドイツの家庭料理の店だって。
ここでいいか?」
「うれしい!」
そろそろ故郷の味が恋しくなる頃だろうとドイツ料理をと思いたったのだ。
本当は自分で料理を作って振る舞いたかったのだが、いかんせん馴染みがなくレシピを調べても完成品の味が分からないので、今回はネットで調べて評判の良い店であえて家庭料理を提供する店を選んだのだ。
店はドイツ人の主人と日本人の奥さんが夫婦で営んでいるらしく、紅葉を見るとドイツ語で挨拶してくれた。
「わぁー!!
これ絶対美味しいよ!!
凪くんに食べさせたかったんだ~!!
頼んでいい?」
「いいよ。
誕生日なんだからお前が食べたいの選べよ。」
「ありがとう。えっと…。迷う~…っ!!」
結局ご主人のシェフにお任せして、ソーセージをつまみつつ料理を待った。
「めちゃくちゃ旨い…。
これが本場の味?
ってか、これはビールが合う。」
「飲む?」
せっかくなのでドイツビールを飲みたいが、車なので我慢するという凪。
「車だったの?」
「そー。近くのパーキング入れてる。
このあとちょっと連れて行きたいとこあって。」
出された料理はどれも美味しかった。
多分日本人にも馴染めるようにアレンジされた味なのだろう。
レシピを聞いたら教えてもらえるだろうか?
凪がそんなことを考えていると、紅葉はニコニコで今日もよく食べていた。
「美味しいー!!
えっと、これは何て料理ー?」
多分全員でずっこけた。
なんで祖国の料理の名前を知らないのか…(笑)
食後、奥さんが小さなケーキを出してくれた。
予約の時に誕生日だからと言って特別に用意してもらったのだ。スパークリングジュースは2人からのプレゼントだと言われ、ありがたくいただく。
人懐こい紅葉はすっかり打ち解けたようで帰りに2人にハグをしてお礼を言っていた。
こういう誰にでも素直なところが紅葉の良いところだ。
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