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第17話

10/24 1100 新曲のレコーディングを終えたLinksはプロモーションの合間に束の間のオフ。 今日は紅葉の学校の演奏会だ。 みなと凪は応援に来ていた。 校内では生徒や保護者、招待客らしき人が溢れる中、ロックテイストの強い2人はちょっと浮いていたが、気にせず会場となるホールへと向かう。 「うわー。JKがいる…。 ヤベーな、若い。」 「凪、心の声漏れてるから… ホント脚フェチだよね? 見すぎると通報されるよ? 只でさえ厳ついんたから…」 「……。 え、そんな見てる?」 「見てる。 あ、新曲の紅葉の衣装、めっちゃ凪好みにしておいたよ? デザイン画見る?」 スマホの画面で見せられた衣装は太ももが大きく露出していて、ショーパンのサイドは編み上げだったり、ニーハイの裾が黒いレースだったり、なんというか際どかった。 こんな格好した恋人(紅葉)が目の前にいたら演奏に集中出来る気がしない…。 「あ、ダメ。 足はサイコーだけど、腹見せすぎ。 もうちょい丈長くして。」 「うわ…っ。 本気のダメ出しじゃん(笑)」 「ガチだからな。訂正頼むよ。」 「はいはい。 ってか、あの子いろいろ抜けてるからちゃんと言っておいた方がいいよ。 付き合うのにルールの確認みたいなの。 紅葉みたいなのを博愛主義って言うのかな…悪気はないんだけど、逆に厄介かも。 ごめんね。よろしくね。」 「分かった。 ちゃんと真面目に付き合うから。」 「うん、ってか、ちょっとめんどくさいのがいるからそのデカイ身長を活かして盾になってもらえるかな?おにーさん。」 「何? 元カレでもいたか?」 「いや、もっとめんどくさい系ー。 なるべく目立たずいこー。」 「服と髪ですでに浮いてるだろ(笑)」 本格的なホールに入り、ビデオカメラをタイマーでセットすると空いている席に座った。 ロックのライヴ、スタンディングばかりしか知らない凪は落ち着かない様子だ。 入口でもらったパンフレットを眺めるが、曲名をみてもさっぱりだった。 「なー、俺、絶対寝るだろうから紅葉の出番なったら起こして?」 「OK!」 みなは椅子に深く座り、少し身体を丸めて目立たないようにしているようだった。 態度悪く見えるがそれでも目立ちたくないらしい。 紅葉の学年…三年生は2つのグループに分かれているらしく、最初のグループの演奏中に眠りに入る凪。 クラシックは馴染みのない人には眠くなるもののようだ。 紅葉のグループの出番になり、ギリギリになって凪を起こす。 「…めっちゃ寝てた。 紅葉どこ?」 「あそこ。コンマスっていってオケのリーダー、一番巧いバイオリニストが立ってるんだけど、その真後ろの席。」 「…あ、いた。」 凪は同じ制服のメンバーの中からライトブラウンの髪色を見付ける。 「紅葉の方が巧いよ。 この前のテスト追試になって落とされたんだって。」 「そーいう奴だよな(苦笑)」 曲は何年か前の大河ドラマの主題歌と王道の協奏曲で、先程のグループよりも巧いと感じた。 「こっちが巧い方のオケだからね。 個人も最後の方の出番が巧い子たち。」 無事に演奏が終わり、そのままソロ演奏だが、紅葉の出番はまだなので一度外へ出ることに。 出口の辺りで初老の紳士に声をかけられた。 「やぁ、リナさんのお嬢さんだよね。 久しぶりだね。あれから元気だったかな?」 にこやかな男性に対してみなの顔は険しかった。 「君もここに入ると思っていたが…。 まぁ、あんなことがあったからね…。 でもエナさんのご子息が日本に来てるってことは今度のコンクールには一緒に出るのかな?」 「出ませんよ。 コンクールに興味ないんで。 じゃあ…」 手短に切り上げると足早にホールを去るみな。 しばらく歩き、テラスを見つけた凪は指を差し休憩することに。 「大丈夫か?」 自販機で水を買ってを差し出すと一呼吸おいてから口をつける彼女。 「平気…。 ありがとう。」 「あれがめんどくさい系?」 「そう…。 隠してもあれだから言っておくけど、母の多分元パトロンね。けっこう有名なオケ牽引してて、今は評論家かな。…そういうのいっぱいいる。 私、最初から父親いないから…母はいろんなコネ使ってピアニストしてて。 あ、紅葉のとこは違うよ? 向こうは両親ともプロで、フツーの家庭。 うちの母のことはさ、そこはもう仕方ないってか、不自由なくさせてもらってたし、軽蔑とかもしてないんだけど…。 10歳くらいからかな、娘だと分かると寄ってくるんだよね。」 「ごめん…、胸糞わりー世界だな。」 「いや、ホントそうなんだよね。 しかも、けっこうそういうのが普通な感じ。 狂ってる…。 ずっと母が守ってくれてたけど、もういないし…。今はクラシックのフィールドにいるべきじゃないかなって。 まぁ、ロック業界もキレイなものじゃないのかも知れないけどさ…。 でもLinksにいればみんながいてくれるし…。 バンドで有名になって誰も手出し出来ないくらいの地位を築けたらまたピアノやれればいいかなって思ってる。」 「そっか。」 みなは衣装も含めて普段から男装っぽい服装を好んで着ている。 今はだいぶ普通だが、出会った頃はろくに目も合わせず、態度が悪いとイラついたこともあったのだが、今思えばそれは彼女の防御策で、自分が女として見られることに嫌悪を抱いているのかもしれない、と凪は悟った。 「なんか…片手間でバンドやってるよね、ごめん。」 「いや、そうは思ってねーよ。お前仕事の幅すごいし…いつも全部バンドのためにやってるし…」 「…ありがとう。」

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