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第18話

その後、紅葉に電話して、本番前に顔だけ見に行く。 「凪くんっ!今日もカッコいいねっ!」 「お前、緊張とかないの?」 「ないよ? ね、みなちゃんと2人でいるのズルい…! 一緒に写真撮ろう?」 控え室の片隅でスマホでツーショットを自撮りして、満足気な紅葉。 凪は「いつも通り、頑張れよ。」 と、声をかけて再びホールへと向かった。 「母たちの映像は時代的にあんまり残ってなくて…。とりあえず自分たちのは録るようにしてるんだ。あとで復習出来るし。」 そう言ってビデオをセットするみなを手伝う凪。 紅葉の曲目はバッハ パルティータ第三番ガヴォットとラヴェルのバイオリンソナタ 上位三人は二曲弾くらしい。 ステージに出てきた紅葉はキョロキョロと立ち位置を確認して、お辞儀をした。 体調を崩したり、追試もあって練習不足だったので少し心配だったが、それはバイオリンを構えた瞬間に杞憂に終わった。 凪も何度か聴いたことのある紅葉が好きな曲。 誰もが知ってる名曲の旋律を美しく奏でる紅葉。軽快で楽し気な曲は紅葉のイメージによく合っていて、とても素晴らしい出来映えだった。 続くソナタは難しい内容だったが、危なげ無く仕上げていく。 「うん。まぁ、なんとかなったね。」 「やっぱ巧いわ、あいつ…」 生き生きとバイオリンを奏でる紅葉はとても楽しそうで、聴いている人を幸せにする音楽だと感じた。凪は才能溢れる恋人を誇らしく思った。 10/29 演奏会から数日…疲れも見せず、紅葉はバンドの練習にも元気な顔を見せた。 ベースを弾く紅葉はのびのびとしていて、技術力も表現力もすごく成長している。 練習後、全員で新曲の取材をうけて、この日の仕事は終了。 明日はオフのため、凪は紅葉を自宅に招いた。 1ヶ月前…紅葉サポートメンバーに加入した時に同居してたのだが、それはほんとにただの同居で…。恋人になってからは初めて一緒に過ごすオフなので単純に楽しみにしていたのだ。 夕食は仕事の前に下味をつけておいた紅葉の好物である唐揚げを揚げて、サラダを2人で仕上げる。 「あとブロッコリーとトマト乗せて?」 「うん。ドレッシングこれ? かけちゃっていーい?」 「おう。ん、OK! キレイじゃん?」 凪がそう言うと嬉しそうに微笑む紅葉。 前髪にキスをおとすとビックリしたのか思い切り後ろに下がる紅葉… ガコッと棚に後頭部をぶつける音がした。 「い、たいっ!」 「大丈夫か?(苦笑) …動揺しすぎなんだけど…!」 「だって…っ!! いきなりするんだもん。」 「そう…? 『キスしていい?』って毎回聞いた方がいい? なんか間抜けじゃない?」 目を合わせて再びキスをする。…今度は唇に。 「凪くん…ずるい…っ!」 「何が? じゃー、冷めないうちに食べるか。」 夕食を食べて、2人で片付ける。 テキトーにTVを眺めてから 凪は先に風呂に入り、冷蔵庫からビールを取り出して喉を潤した。 紅葉は防音の部屋でバイオリンを奏でていて、いつものようにそっと近付き聴き入る凪。 一曲終わったところで声をかける。 「コンクールの曲?」 「そうなんだけど…難しくて…。」 先日の演奏会でも注目を集めた紅葉。 奨学金をもらっているため学校に貢献するためにもコンクールに出ないといけないらしい。 「お前はよく頑張ってるよ。 今日はもう切り上げて風呂入って来い。」

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