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第20話
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翌朝もキスから始まり、くっつきながら起床する。
お腹を空かせた紅葉とブランチを食べながら凪は先日みなに言われていた付き合うにあたってのルールを再確認しようと話を切り出した。
「ナンパについていくとか、ハグと挨拶のキス以上の身体の関係は浮気で絶対ダメ。
気をもたせるようなことしたらお仕置きするからな?」
「…うんっ!」
なんで少し嬉しそうなんだよ、と苦笑する凪。
「男同士だから線引きが難しいけど、好きとか好意持ってくれてる相手と二人きりで食事とかもなし。もちろん学校の友達とかはいいよ?」
「分かった。」
「もし俺たちの関係を知って、対価…金とか身体を求められてり、脅してきたりされても応じなくていいから。」
「…バレてもいいの?
Linksのメンバーに迷惑かからない?」
「俺は構わないし、お前が傷付けられるよりいい。
メンバーには折りをみて俺から話すし…。
だから自分の身体や心のことを一番に考えて?」
「凪くん…。うん、分かった。約束する。」
「紅葉からはなんかある?」
「んと、僕、誰かと付き合うの初めてだからよく分からなくて…なんでも相談していい?」
「それ大事。報告、連絡、相談!
日本では『ほうれんそう』っていうんだよ。」
「面白いね!
ほうれんそう、大事!
毎日食べて心掛けるよっ!
あ、僕はもし凪くんが浮気しても別れないからね!」
「随分健康的な目標だな(笑)
浮気?しないって。
大事にするって約束しただろ?」
「そっか…。良かった。ふふっ…。」
可愛いのでとりあえずキスしておく。
「あとは?」
「あのね…、もうみなちゃんとも一緒に寝たりとかお風呂入ったりしたらダメ?」
「…風呂まで入ってたのかよ…。
お前ら距離感近すぎだから…!!
もーダメ。
ってか、それ他で言うなよ!
特に光輝とか…発狂すんぞ…」
「でもホラー映画観たあとのお風呂ってすっごく怖いんだよ。寒いし、一人で寝るの寂しい…っ」
みなが移動中などにたまに眺めている下らないホラー映画を一緒に観ているらしい…
怖いなら観なきゃいいのに…と思う凪だが、
「……。
じゃあ…卒業したらうちで一緒に住むか?」
「っ!!
いいのっ?!
それって結婚してくれるってこと?」
「え、っと…同棲からでもいい?
ってか、結婚って言われても…日本って同性婚出来ないんだよ…。
大学もこっちからの方が近いし…チャリかバスで行けるなら痴漢の心配もないだろ?」
「凪くんっ!!」
勢い余って飛んできた紅葉を受け止めると床に押し倒される凪。
「すっごい幸せ!」
「そっか。
じゃあ恋人らしいことしとく?
またしばらくオフないからな…」
「ダメですっ!!
ベースとバイオリンの練習してからー!!
学校の課題がいっぱいあるんだー。
テンポが複雑になるとこがあって…凪くんチェックしてくれる?」
キッパリとそう告げた紅葉は切り替えた様子で立ち上がると防音の部屋へ向かった。
最初はベースとドラムで合わせての練習。
新曲をメインで何曲か奏でていく。
一時間ほど集中し、最後は即興で遊んだりして凪は練習を切り上げた。
紅葉はそのままバイオリンの練習に移り、凪はリズム練習のコツを教えてからしばらく聴き入り、スムーズに弾けるようになったのを確認すると家事を始めることにする。
洗濯機を回し、掃除は自動掃除機のスイッチを入れておく。
パパッと買い物を済ませて帰り、作り置きの料理をいくつか作っておく。
リビングでノーパソを開き、メールのチェックや細かな仕事をこなしてもまだ紅葉は防音部屋にいた。
時々スマホを操作して何やら確認しながら、ずっと演奏を続けている。
かれこれ三時間程…
「え、俺忘れられてる?
スゲー集中力だな…。」
仕方ないので紅葉の好物の抹茶プリンを見せて声をかける。
「わぁい、おやつ?
ありがとー!」
凪は自分もコーヒーを入れて休憩する。
「美味い?」
「うんっ!!プリン好きー!!」
「口んとこついてる…(笑)」
指で拭って口に含むと思ったよりも甘ったるくて眉をひそめる凪。
口直しにと紅葉にキスするともっと甘くて苦笑する凪。
「あっま…!」
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