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第21話
1800
紅葉はみなに連れられてなぜかエステに来ていた。
明日はハロウィンで新曲の衣装を担当してくれるブランドのイベントがあり、そのための準備らしい。
紅葉に対して施術するエステティシャンは女性と男性どちらになさいますか?というスタッフの問いに悩むみな…
「ちょっと待って。確認する…」
そう言って電話をかけて相手はもちろん凪で、凪はたっぷり30秒程悩んだあげく「女で…」と告げた。
「だよね。
お姉さんでお願い。」
そう言って全身磨きあげられた紅葉は羞恥で固まりながらもすべすべになった肌に感心していた。
「ピカピカっ!」
「ヤバい…。女子力上げすぎたかな?
すべすべじゃん!」
「きめ細かくて本当にキレイなお肌で羨ましいです!これから乾燥する時期ですのでしっかり保湿されて下さいね。」
にこやかなスタッフの笑顔に見送られて店をあとにした。
10/31
ヴィジュアル系ブランドの服を身に纏い、朝から撮影…
みなが王子様系の男装で、紅葉がゴスロリ系の女装なのだ。
小さな頃からサバサバした性格のみなと大人しいくおっとりとしている紅葉。
性別が逆なら良かったのにね、と言われてきた2人が正にそれを表現した今回の企画は衣装もメイクも気合いが入り、かなりの完成度のようだ。
「スカート短い…っ!」
「見せパン履いてるからいーじゃん。
ヒールは大丈夫?歩ける?」
みなは格好さながら王子のように紅葉の手を引いてエスコートする。
紅葉は以前着た服よりスカートの裾が短いのが気になっている様子だが、言われるがままにポーズをとり、撮影は進んでいく。
個人毎の撮影が終わるとツーショット撮影。
双子のように、時に恋人のようにも見えるように絡んだりしながら様々なシーンを撮影していく。
撮影の合間の休憩にはブランドの社長や専務などの重役たちが顔を出して、2人の写真の仕上がりに大変満足そうだった。
差し入れで豪華なお弁当やお菓子も大量に貰う。
撮影されたデータはすぐにデジタルポスターになり、ブランドの店舗やSNSで流される。
今日は夕方から2人で店頭に立ち、直接洋服の販売を行うのだ。
一定額以上の商品を購入した客には2人の生写真がプレゼントされるらしく、
すでに店舗には行列が出来ていて、他の店から在庫を移したりスタッフも慌ただしく動いていた。
「お洋服の販売なんてやったことない…。
出来るかな?」
「プロの販売員さんがやってくれるから、紅葉はニコニコしてお客さんにお菓子を渡せばいいよ。」
ハロウィンなので服を購入してくれたお客さんにはお菓子のプレゼントがあるらしい。
みなは本来こういった愛想良くする仕事は苦手だが、今回は新曲の衣装提供のスポンサーであるためこの仕事を引き受けたようだ。
「あ、凪からLINEきたよ?」
「なんて?」
「衣装買い取るって(笑)
さっき写メ送ってあげたの、ほら!」
それは紅葉が本を読んでいるポーズで組んだ脚がよく見えるように下から写した一枚だった。
「でもこれ、高いよね?
僕着ないよ?みなちゃんいる?」
「いらない。
くれるならこっち(男装)がいい。
社長さんに言ったらくれるかな?
まぁ、手元にくるの展示のあとになるだろうけど…。あとで聞いておいてあげるねー」
1800 イベントスタート
「キャーっ!
可愛い可愛い可愛いっ!!
細ーい!」
「本当に男の子?
腕とか腰とか足とかもう全部細いんだけど…」
「みな王子と手繋いでる写真欲しいー!!
写真ランダムらしいから当たるまで並んで買おう!!そしたら何回も会えるし!!」
「あんなキラキラ間近で見たら倒れるかもー!!」
「さっき買った子たちが顔ちっちゃい、睫毛長い、いい匂いしたーって言ってたよ!」
「五万買ったら2人と写真撮ってもらえるらしいよ?!どーする?!」
女の子たちがキャーキャー言いながら異様な盛り上がりを見せる店の一角。
時々男性の客も来ていて、だいたいが彼女や友人の付き添いでブランドのファンかLinksのファンだが、一部紅葉目的の男も混じっていたようで、購入したゴスロリの服をそのまま紅葉にプレゼントしている人がいた。
困惑する紅葉にみなが助け船を出す。
「この子はダメだよ?
カレシに怒られちゃうもんね?」
「ごめんなさい…。」
袋を突き返す紅葉の顔は真っ赤だった。
途中休憩では、原宿名物クレープをスタッフに買ってきてもらって2人で仲良く食べていて、みなはその様子をSNSにアップしていた。
だいぶ時間を押して販売会は終わり、売り上げは過去最高だったらしい。
社長やスタッフ方との食事会までが仕事だった。
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