30 / 144
第30話
12/26 1300
凪は仕事のため、その時間に合わせて早めに帰宅した紅葉はみなのグランドピアノの上にある小さな箱に注目していた。
普段からピアノの上には楽譜以外置かないと決めているみなが、小さた箱とはいえ物を置くのは珍しいなと気になって近付くとアクセサリーケースのようだ。
紅葉も凪にピアスをもらった時にこういうケースに入っていたので中身が気になった。
「開けてみてもいい?」
「うん…。」
許可をもらって開いてみると、きらびやかな指輪が入っていて紅葉も驚く。
「わぁー…!
すごい…。綺麗…!
すーっごい、キラキラしてるね!!」
「…だよね?」
紅葉が凪にプレゼントしてもらったブラックダイヤも上質なもので綺麗な輝きを見せるが、みなの指輪は真ん中にとても大きなダイヤとそのサイドにも小さくはないダイヤがついていて存在感が違った。
「多分僕でもこれ知ってるよ…。
エンゲージリングでしょう?
光輝くんにもらったの?」
「…やっぱそうだよね…。」
「綺麗~!
なんかずっと見てられるね!
つけないの?」
「いやいやいやいや!!
結婚するつもりがないのにつけられないよ!
そもそも私ピアニストなんだけど…
あと、あのさ、これハリー・ウィンストンなんだけど…
いくらすんの?こわっ…
ねぇ、これ遠征に持ち歩くべき?」
「ここの方が安全かも…。
結婚、しないの?
光輝くん、いい人だよ?」
「私とは真逆の真面目人間だよ?
ってか紅葉、結婚反対してなかった?」
「そりゃあ寂しいけど…
でも凪くんが高校卒業したら一緒に住みたいって言ってくれたのっ!!
だからみなちゃんも…光輝くんと住むのはどう?ここぐらい近いとこにしてくれたら会いに行けるよね!」
「はいはい…。ラブラブ同棲ね。
私…一生一人で生きていくつもりでこの部屋買ったんだけど…。」
「そう?
でも本当に本気だねー、光輝くん。
すごいね。」
2人はしばらく指輪を眺め続けた。
その日の夕方からLinksのメンバーは名古屋に向けて移動。スタッフは現地のLIVEハウススタッフに手伝ってもらうのとLinksのスタッフは27日のLIVE当日に名古屋に入る予定だ。
移動の車は2台。機材車に凪と紅葉。
メンバー車に光輝と誠一、みなが乗った。
年長組の3人が交代で運転をする。
光輝はプロポーズ後だけど普段通りで、みなはほっとした。意識せず、身体を休ませながら名古屋へと向かう。
凪と紅葉は移動中もラブラブで運転する凪をカッコいい!と言って撮影する紅葉。
飲み物やガムを渡したり、一生懸命にサポートする献身ぶりに凪もご機嫌で、SAに車を停めると夜で人が少ないことを理由に車内でキスをしたり、手を繋いだり…カップルとしての時間を楽しんでいた。
みなは光輝と付き合ったり結婚してもあぁなれる気がしないなぁとため息を吐きながらコーヒーを飲む。
「次、僕機材車運転するね。
凪たち後ろでいちゃついててもいいけど、僕いるからね?!よろしく。
光輝、連続でいける?」
「まだ余裕。」
「まぁ、一応早めに休憩しよう。」
走り出すと紅葉は凪にもたれ掛かって寝てしまって、凪も紅葉と手を繋いだまま仮眠をとる。
一方、光輝とみなは無言で…少し気不味そう…。
「寝てていーよ?」
という光輝にみなも気を遣うことに疲れたのかいつの間にか眠りについていた。
12/27 明け方に名古屋到着。
24時間チェックイン出来るホテルに到着し、みんなで仮眠をとる。
みなは数時間の仮眠後、毎朝のルーティンであるランニングとヨガをこなす。
身体はキツイが、LIVEに向けて気合いが入る。
昼前にメンバーで集合し、軽食を食べながら打ち合わせをする。
その後会場入りし機材をセットした後、リハーサル。
そして本番へ。
地方のLIVEでもSOLD OUTの公演はLinksの世界に包まれ安定をみせた。
終演後、食事へ向かうメンバー。
みなは21時以降食べないので顔だけだして、ピアノの弾けるスタジオへ。
可能な限り毎日ピアノを弾きたい彼女は疲れていてもきちんと練習をこなす。
ホテルの部屋は基本シングルなのだが、気を利かせた誠一が凪と紅葉だけ同室になるようツインに変更してくれたらしい。
ベッドは別だが、広めなので一緒に寝たいという紅葉に凪が今夜は別々でと提案する。
「何で…?」
うるうるした目で聞かれてたじろぐ凪…。
「今日はLIVE後で身体がまだ興奮してるし、酒も入ってるから…正直襲いそうでヤバイ。」
「…いいのに…。
この前も…普通に寝ちゃってしてないよ?」
「お前初めてなのに…流れとか勢いでヤって傷付けたくないんだって…。
ハードスケジュールで疲れてるんだから寝なさい。寝付くまで隣にいるから…」
そう言っておやすみのキスをしてから紅葉を寝かせ、メールのチェックなどを済ませた凪も隣のベッドに横になった。
明け方、寂しかったのか凪のベッドに潜り込む紅葉。
それに気付いた凪は細身の恋人をぎゅっと抱き込んで再び眠りについた。
ともだちにシェアしよう!