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第31話

12/28 1100 名古屋インストアイベント当日 朝から咳き込んでいる紅葉を心配して念のため休日診療をやっている病院へ連れていく。 風邪ではなく喘息と言われてほっとしつつも驚くメンバーたち。 一度滞在先のホテルに戻り、ロビーで休憩をとりつつも話すことに。 「向こう(ドイツ)では大丈夫だったってことはやっぱ東京って空気汚れてるんだねー。」 みなは紅葉に薬を飲ませて加湿のためホットタオルを渡す。 「昨日、居酒屋だったからタバコの煙とかもあるかも…」 誠一がそう告げるとみなが続いた。 「凪、タバコ止めなよ。」 「紅葉の前で吸ってないし、俺のアイコスなんだけど…」 「…止めるよね?」 「…努力します。」 「紅葉大丈夫? スケジュールもキツくてごめん…。 今日ホテルで休んでてもいいよ?」 光輝が心配そうにそう告げると紅葉は大丈夫だと笑顔で答えた。 「インスト終わったら渋滞に捕まる前に早めに移動してホテルで休むようにしようか。 チェックインの時間確認するね。」 誠一が電話をかけに席を外す。 しばらくして誠一が光輝を呼びにきた。 何かトラブルだろうかと気になる3人。 時間がかかっているため、凪も様子を見にいこうかとした時、2人が戻ってきた。 「何かあった?」 「大阪のホテル、予約されてないみたい…。」 宿泊先の手配を担当している誠一が告げた衝撃の内容に驚く3人…。 「はっ?!」 「本当に?え、何でっ?」 「… 違うとこになったの?」 「確認したら、正確には予約はちゃんとされてたんだけど、1週間前に誰かが俺の名前使ってキャンセルしたらしい。 ご丁寧に連絡先の電話番号とメールアドレスも変更してね。」 「マジで?! え、その時の電話番号とかから誰がやったかとか…」 凪が指摘するが、ホテル側にお願いしてかけてもらうともう繋がらなかったそうで…。 「えっと…、結論から言うと、今日泊まるとこないってことで合ってる?」 みなが若干青ざめている光輝に尋ねる。 「…今探してるけど、現時点で見つかってない…。」 項垂れるようにソファーに座る光輝。 隣に座った誠一がネットでホテルを探すが、 年末のこの時期に今から空いてる宿を見付けるのはものすごく困難だ。 「えー…、最悪ラブホでもいーよ? 私が何回か出入りしたらいいし…? あ、カップルは普通に入ればいいよね。」 みなの提案に光輝が叫ぶ。 「アホっ!! そんなんバレたらバンド生命終わる!! 只でさえ変な噂たってるのに…。」 しかも高価な機材や代わりの利かない衣装なども詰んでいるのだ。セキュリティーのしっかりとしたホテルでないと難しい。 「とりあえずキャンセル待ち連絡して…あと範囲広げて探すね。」 「分かった。みんなで手分けしてやろ。 ってか、光輝くん、明日のLIVEスタッフがちゃんと来るか確認した方が良くない? 考えたくないけど…宿泊先知ってるなんてスタッフとメンバーだけだよね? 連絡つかないのが犯人の可能性が高いと思うんどけど…。」 そう言われてハッとした光輝はスマホを手にするが、気が重いのか、なかなか連絡アプリを開けない。 「連絡したくない…。」 「私がやろうか?」 「いや、やるよ…。」 光輝がアプリを開くと同時くらいに通知がきて、3人のスタッフのグループトークに導かれ、開くと長文のトークが送られてきた。 「あー…。」 「何?向こうから連絡きた感じ?」 「こんなことする奴誰だよ、ったく!」 誠一と凪も手を止めて光輝の周りに集まる。 内容は最近のバンドに関する噂話に踊らされたらしく、みなと紅葉が付き合っているのに、みなが凪や誠一、光輝もひっかけて家に呼んでいるとか…。 光輝はいつも正論ばかり言い、細かいことばかり指摘するのでスタッフの負担が大きいこと。 新しいスタッフばかりに甘く、自分たちのことを軽視している旨、待遇の不満などが書かれていた。 途中まで読んだところでみなが「胸くそわるっ!」と言ってトークを消去した。 ついでに3人をブロックする。 「あ、ちょっと! 消したら原因が分からないじゃないか!」 こんな時にも真面目なことを言う光輝にため息を吐いて、時間の無駄だとホテル探しを再開させる。 「何て書いてたの? 明日のLIVE出来る?」 日本語が読み取りきれなかったのか紅葉が尋ねる。 凪はポンポンと頭を軽く叩いて言った。 「スタッフが3人辞めたから大変だけど、LIVEはやるしかない。」 残ったスタッフに連絡を取った結果、みな専属のカナと新人スタッフの大和が急遽来てくれることになった。 まずは彼らの宿泊先を最優先に決めていく。 かなり高額だが、シングルが2つ取れたところでインストへ向かう時間になった。 「一回切り替えてインスト頑張ろう! イベントが終わる頃、良い連絡がきてるかも!」 誠一の掛け声にみんなで頷いて出発した。

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