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第33話
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光輝、誠一、凪は車を近くのパーキングに止めて適当に飲み屋を探した。
もう食事は済ませたのでバーへ入ることに。
落ち着いた雰囲気の店内は洋楽が流れていてふらりと入ったけど良い店だと判断した3人はテーブルについた。
「今日はいろいろあったけど、暗い話はやめてここは楽しく飲もうよ。」
誠一が明るく切り出し、ウイスキーのボトルを入れる。彼はザルなのでいくらでも飲めるし、年齢の割りに良いお酒を知っている。
「だな。
何気に3人で飲むの久しぶりだし…」
凪も続いてそう言った。
「そうそう!
とりあえず今投げられるサイは全部投げたしね!
1人来てくれる子、凪のローディーの友達だつけ?見つかったし、なんとかなるよ。
やっぱ地元強いね。」
「地元ってか隣の兵庫だけどな。まぁ、近いし…明日の宿も最終選択で今アポとってるから。」
「本当に?じゃあなんとかなるね。」
「あー、本当にごめん…。
俺の詰めが甘いせいだー。」
光輝が落ち込む。
「いや、逆に詰めすぎたんだって
ってか、やめよ?
楽しく飲もう!
これだって来年には笑い話になるって!」
凪がそう言うと3人はグラスを合わせて、下らない会話を楽しむ。音楽について語ったり、他のバンドの話や誠一の学校の先輩がヤバい女につかまった話など気の合う3人はお酒もすすみ、上機嫌だった。
「っと、こんな時間?
ちょっと電話してきていい?」
凪が断りを入れて席を立つとると誠一が微笑む。
戻ってきた凪にウイスキーをつぎながら聞いた。
「電話…紅葉?
体調大丈夫そう?」
「たこ焼き食って、薬飲んで、風呂入ったら落ち着いたらしい…。」
「良かった…。でもこっちの方が寒いから油断しない方がいいな。」
光輝もほっとしたように告げる。
「今日ビックリしたね。
公開告白!ってまたネットがすごいんだけど…(苦笑)」
「マジで?(笑)
本人反省してたよ。」
「紅葉は素直だからつい本音がでたんだろうね。でもこれで変に脅されたりとかしないだろうから逆に良かった気もするな。
…凪はどういうスタンスでいくつもり?」
紅葉との交際を公言するのかどうか光輝が確認する。
「うーん。まだ付き合いたてだし、否定もせず、肯定もせずでいこうかと思ってる。」
「それが一番良さそうだよね。」
「それでいいか? 光輝…」
「うん。俺たちもそれに合わせるし、また紅葉が何か言っちゃったらまたその時はその時で…。」
「バンド内恋愛OKで認めるの?」
誠一が聞くと光輝は頷いた。
凪もほっとする。
「ありがとう、光輝。誠一も面倒かけるな…。」
「あんな素直でいい子が恋人で羨ましいよ。
紅葉くんの片想いだったのにすっかり凪も夢中だもんね。あ、そうだ!あのピアス絶対高いよね?」
「せっかくならちゃんとしたものあげたいだろう?」
うんうんと頷く光輝。
光輝のみなへのプレゼントも大概いい値段している。服は気付くとだいたい紅葉が着てるけど…。
「ってか、ちょっといい?
もう…最近なんか俺ヤバくて。」
「え、何?何ー? 猥談?」
椅子を近付けて誠一が話にのってくる。
まぁ、飲みなよと光輝も2人に酒を注ぐ。
「俺男の子と付き合うの紅葉が初めてなんだけど…ってか、この先多分男は他にないと思うけどさ。
あいつまっさら過ぎてヤバい。」
「手出せないってこと?」
「あいつ今日も喘息出たり身体あんま強くないのにさー、歯止めきかなくなって壊しそう…。」
「え、凪…変な性癖あったの?」
意外だなぁと呟く誠一。
「いたってフツー…!
だけどなんか…めちゃくちゃ追い込んでみたくなるんだよな…。」
2人は笑いながらも思ったより内容がハードだったと言い合った。
「別に大丈夫だと思う…。
紅葉、見た目より打たれ強いし。
男の子だし。」
「うん。うちの練習、最初から根をあげずについてきてるし…今日のトラブルもすぐに受け入れて、僕に自分が出来ることあるか聞いてくれたし。めちゃくちゃ根性あるよね。
何より凪のことが大好きって滲み出てるし。
勢いも大事だよー。」
2人のアドバイスに頷く凪。
「これ落ち着いたら年始は休みだし、ゆっくりラブラブしたら?」
「年明けたらコンクールあるから…」
「おっと忙しいね…。」
「あ、卒業したら一緒に住むわ。」
「そうなのか?!
じゃあそこまで待てばいい。」
光輝が言うがあと2ヶ月半の禁欲はさすがに長い…と言う凪。
「因みに俺は2年待ってるんだけど…」
「…光輝って神なの?バカなの?」
「そっち何かあった?
みなちゃん割りと大人しいよね?」
いつも毒舌だが、控え目なみなに気付いた誠一が聞くと光輝は真面目に答えた。
「クリスマスのLIVEのあとでプロポーズしたよ。」
「…いつもしてるよね?」
「指輪も渡した。」
「マジでっ?!
え、で…?」
凪も驚き結果を聞く。
「保留…。」
「あ、なんとなく分かったけど、ようやく意識してもらえたって話かな?」
「そんな感じ。
返事はあと2年は待つって言ってある。」
「やっぱバカ…?(苦笑)」
誠一も苦笑していたが、光輝はずっと本気なのだ。
「えー、僕は結婚する予定ないけど、参考までに。指輪何にしたの?」
「一応ハリーウィンストン…」
「…やべ。外車買えるやつだ…。」
誠一は2人の恋愛がうまくいくように乾杯しよう!と追加のオーダーを出した。
「誠一は誰かいないの?特別。」
「んー、遊ぶ子は何人かいるけど彼女はいないんだよね。」
「誠一、刺されないでね?
もうトラブルやだよ。」
大人3人の夜は賑やかに過ぎていった。
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