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第45話

1/18 8:30 微睡みの中で、隣に凪の姿を確認した紅葉は一度彼の胸に身体を寄せながらぎゅっと抱き締めた。 夜中に帰宅したであろう彼を起こさないように口パクでおはようを告げたあと、そっとベッドを抜け出してリビングへ向かう。 真冬の朝の室内は冷えるのでエアコンをつけさせてもらうことにして、一度防音部屋のドアを開けてそちらまで空気が温まるまで待つ。 パパっと顔を洗ったら、レンジでホットミルクを作ってふーふー息を吹き掛けながら身体を温める。 一息つくと防音部屋に籠って朝の練習を始める。 先日、珊瑚から送られてきた両親の演奏を胸に、2人に近付きたいという想いを大切にバイオリンを構えた。 リハーサル前に苦手な部分をきちんと確認し、集中して奏でていく。 9:15 「はよ。」 防音部屋を開けて凪が声をかけた。 「凪くんっ! おはようー! 早いね。寝不足大丈夫?」 「お前こそ身体大丈夫? ツラくないか?」 昨夜の行為のことを気遣われて赤くなる紅葉。 バイオリンを置いて凪のもとへ駆け寄る。 「凪くん優しくしてくれたから大丈夫。」 指を絡めて手を繋ぎ、微笑みながらキスを交わす。 「朝飯軽く食ってくだろう? 俺もコーヒー飲みたいし、おいで。 あ、ってか会場まで送ってくから。」 「えっ?ホントに? いいの?凪くんも今日忙しいでしょう?」 明日コンクールを見に行く為に時間を調整した凪のスケジュールが詰まっていることを心配する紅葉。 「送ってく。そしたらギリギリまで一緒にいられるじゃん。」 凪の言葉に感激した紅葉は彼の首に抱き付いてとびきりの笑顔を見せた。 そして凪が夜中からこっそり仕込みをしていたお弁当を朝食の合間に仕上げて渡すと、大きな瞳を潤ませながら今度は抱き付いて離れなくなった。 「そんな嬉しかった?」 「すっごい嬉しいっ! 幸せー!リハーサル頑張るっ!」 「紅葉の好きな唐揚げも入れたから。 野菜もちゃんと全部食えよ? お前絶対痩せたぞ?」 恋人の細い腰を抱きながら心配そうにそう告げる凪。紅葉がこれ以上無理しないよう小まめに手料理を食べさせないと、と誓う。 「そうかな? ふふ、唐揚げ楽しみー!」 10:20 コンクール会場の脇に車を停めた凪は紅葉をリハーサルへ送り出した。 今日は1日忙しく、迎えには来れないが、明日の成功を祈って自身も気合いを入れた。 「さて、帰って俺もトレーニングと練習するか…!」 1/19 11:00 前回の演奏会の時と同様、みなと2人でコンクール会場に足を踏み入れた凪。 一応ジャケットは着てきたが、ロックテイストが抜けず、相変わらず服浮いているが、気にしないことにする。 みなは毛先を赤色に染めていて、今日も完璧な男装だ。 「光輝来れるって?」 「抜けれたら来るってー。誠ちゃんは試験。」 席につくと、ドイツ料理店の夫妻が観にきていて挨拶する。 「紅葉ちゃんのご兄弟? あら、イトコなの? 2人とも美人さんね! 実は私たちクラシック大好きなの!でもお店を始めたらなかなかコンサートに行く機会がなくて…。紅葉ちゃんが出るって言うからこれは応援しに行かないとって、今日はとっても楽しみにしていたのよ!」 奥さんはにこやかにそう話、みなは紅葉の出番と曲目を教えたりしていた。 出番まで時間があるので凪はまたうとうととし、隣を見ればみなも眠そうだ。 聞けば曲作り中らしく、連日寝不足なのだと。 「そーいえば光輝くんが来月ゲネプロして、3月にレコーディングと合宿したいとか言ってた。ねぇ、あの人鬼なの? ってか、あんま可愛い子がいない…。 演奏はフツーだし、退屈。」 彼女の呟きに思わず苦笑する凪。 合宿とはまた斬新だ。 合間の休憩に夫妻とランチしようかと話してると、紅葉から電話がかかってきた。 急用らしく、夫妻には断りを入れて紅葉に会いに行く。

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