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第52話
「紅葉くんはいくつ?」
「18才」
「じゅうはちっ?!若っ!
お肌ピチピチだね…。
じゃー27の俺はオジさんー?(苦笑)」
「?
あのね、翔くんって呼んでいい…ですか?」
「いーよ。あと敬語もなくていいよ。」
「ありがと。翔くん、髪の毛ライオンさんみたいでカッコいーねっ!!」
「天然なの?天使なの?
…オジさんとみんなのお昼買いに行こうか。
手がこんなだから手伝ってくれる?」
「任せてっ!!」
重いスポドリは置いて、買い出しに出た2人。
牛丼を人数分頼んで、コンビニで飲み物も買う。
翔のポケットマネーらしく、財布を預かった紅葉は未だに慣れない日本円の小銭をレジで一生懸命出している。
「札で払って良かったのに。」
翔がそういうと、
「日本人は誤魔化したりしないでちゃんと教えてくれるから安心だね。僕も勉強してちゃんと出せるようになるんだー!」
笑った顔に見覚えがあって翔はハッとした。
「ゴスロリバイブルの男の娘特集出てたっ?!」
「? あ、これかなー?」
紅葉がスマホの画像を見せると翔が食いついた。
「やっぱり!!スゲー可愛いから覚えてた!
まさか本人と会えるとは…!
やっぱり天使なんじゃ…」
「??」
「ね、普段もロリータ系着てるの?
写真ある?」
食い付き気味に聞く翔に少し驚く紅葉。
「着ないよ?
嫌いじゃないけど、お仕事。
お給料がね、いいの。」
「何か欲しいものあるの?
凪に買ってもらえば?」
「違うの。僕が買ってあげたいんだー!」
「因みに何をっ?」
「えっとね、車ー!!」
思わぬ高級品に驚く翔はますます紅葉の人となりが分からなくなった。
みんなで牛丼を食べてリハーサルを見学する。
LiT Jのベース、マツを紹介してもらう紅葉。
「5弦ベース…!
なるほど!だから音域が広かったんだぁ!」
「弾いてみる?」
マツの好意で借りるとその重量に驚く紅葉。
「大丈夫?
マツは大柄だからね。
もっと軽い5弦もあるよ。」
翔にそう言われた。
ストラップの長さを調整し、細身の紅葉では重すぎるベースをしっかり抱えて奏でる。
「…すげぇ、完コピ出来てる…!(苦笑)」
弦が増えても特に問題なく奏でていく紅葉。
凪のドラムを一緒にチェックするだけの予定が、自然とベースラインも耳コピしていたらしく、練習に付き合ううちにLiT Jの曲も弾けるようになっていたらしい。
翔やマツが驚いていた。
「大変勉強になりましたっ!」
お礼を言ってマツにベースを返す。
「荷物ぶちまけたり、ドアに『PUSH』って英語で書いてあるのに思いっきり引っ張って開かない!って言ってた子と同一人物??(苦笑)」
「音楽のこと以外、全体的にそんな感じだから…」
凪がそう言うと翔は「面白い恋人だねー」と呟いた。
これから紅葉は電車で東京へと戻る。
都内で光輝と合流してスーツを買ってもらうらしい。
凪は何度も乗り換えを教える。
その過保護具合に少し離れた場所から2人を見ていた翔は苦笑していた。
「分からなかったら電話して?
待ち合わせ分からなかったらカフェかコンビニに行って光輝に連絡して。
で、ちゃんと合流出来たらLINEして?」
「分かったっ!
凪くん、LIVE頑張ってね。
見れなくてすごく残念だけど…」
「遅くなるからダメ。危ない。
ファイナルは来ていいから…。
ほら、もう行かないと…やっぱり俺、駅まで行こうか?」
「大丈夫っ!
寂しいけど、頑張る。
…やっぱりチュー欲しいな?」
「みんな見てるからハグね。
チューは帰ってから…!」
紅葉を送り出して楽屋で寛ぐLiT Jメンバーと凪。
翔は凪に近寄って気になってたことを聞いた。
「ねー、凪…。
あの子に貢がせてんの?」
「はっ?
本命相手にそんなんするわけないっしょ?!」
「…だよね?
なんか車買ってあげたいとか言ってたけど…」
「車? あー、それあいつの実家にだと思うよ。
それか機材車かな?
たまに暴走すんだよね…。」
紅葉が祖父母と弟妹たちのいる実家に仕送りしていることを知っている凪は、紅葉のモデルの仕事も黙認している。
「凪のことめっちゃ好きなんだねー。
あの子、見てて可愛いーわ。」
「手出さないでね…?」
「出しませんー。ってか、手折れてるし(笑)」
他愛のない会話を楽しみ、本番なステージへ臨んだ。
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