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第54話
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バレンタインデー
Linksは今日、バレンタインLIVEイベントにシークレットゲストとして出演する。
ゲネプロ直前で曲作りに忙しいメンバーはいつも以上に過酷な日々を送っている。
特に凪は翔のバンドLiT Jサポートとして毎週LIVEに出ていて、紅葉も進学のためのテストと課題が多く、2人で過ごす時間も少ない中でこの日を迎えた。
今朝、バレンタインだからと紅葉に手作りプリン(プリンなら茶碗蒸しの要領でいけると思い、睡眠時間を削って作った)をプレゼントして朝からイチャイチャラブラブしてきたので寝不足だが、多少復活したらしい。
対するみなはいろいろ煮詰まっているらしく、今日がLIVEイベントだということは覚えていたが、バレンタインだと言うことは昨日のバンドリハーサルで男性スタッフのウキウキした顔を見るまで忘れていたらしく、今朝専属スタッフのカナを連れてコンビニをハシゴしてチョコレート(当日なので値引きされていた)を買い漁り、テキトーに配っていた…。
そんなコンビニチョコでもみなからの贈り物にご機嫌な光輝…。
紅葉は凪にあげるチョコをクラスメートの女子たちとデパ地下に買いに行ったらしく、話を聞いたみなは顔がひきつっていた。
「あんたよくあんな戦場に行けたね…。
ってかクラスでカムアウトしたの?大丈夫?」
「相手が凪くんってことは言ってないけど、彼氏に甘くないチョコ買いたいんだけどどこに売ってるの?って聞いたら連れてってくれた!
光輝くんと誠一くんにも買ったの。あとで渡すー!!」
「じゃあステージで渡せば?(笑)」
そんな冗談で言ったつもりのことが現実となるとは…!
2028
静かなピアノのSEから一気に暗転し、派手な特攻で登場したLinksは歓声を浴びながら代表曲を特別メドレーで歌い会場を沸かせた。
このメドレーアレンジに死ぬほど苦労したメンバーはテンション高く、ファンを煽っていく。
「こんばんは。
Linksです。シークレットゲストに呼ばたので気合い入れてメドレーなんて作ってみました。
多分もうやりません。過酷過ぎました
次はバレンタインとリンクするこの曲で…」
メドレーのあと2曲披露し、MCへ。
「バレンタインだからチョコあげたいんだって。ここで渡してもいいかな?
…あ、ごめん、私からじゃない。私はコンビニチョコを女子優先でさっき配りました。」
紅葉がスタッフに持ってきてもらった紙袋4つを順番に渡す。
「まずは、みなちゃん!
いつもありがとうー!」
「え、これ昨日くれたやつ?
しかも紅葉が食べてなかった?」
「今日渡す予定だったのに、間違えてちょっと食べちゃった。」
「えっ、食べかけ…?
……あげる。」
「あぁーっ!!」
そのまま近くのファンに渡すみな…。
「次は光輝くん!
スーツ買ってくれてありがとうー!」
マイクでお礼を言って手渡す。
「ありがとう。
ギター型チョコだ。しかも3サイズ!
マトリョーシカみたい…(笑)」
「誠一くんもお洋服くれてありがとう!
お星さまだよ!!」
「ありがとう。
金平糖だ…!うわ、子供の時以来~!(笑)」
紅葉のチョイスに笑みが溢れる。
最後が凪になったのでインストや配信で紅葉の告白を聞いていたファンは大いに盛り上がる。
「凪くん…っ!!」
名前だけマイクで呼んで、凪の前まで走って行き、ドラムセットを挟んで背伸びをして凪の耳元で何かを呟くと両手で紙袋を差し出した。
ヒューヒュー言われて、盛り上がるファンたち。
「何て言ったの?」
誠一の質問に紅葉は
「秘密ーっ!」と答えた。
ファンからチューして!!の声も上がる。
「紅葉、ありがと。チューはあとでね(笑)」
いつも通り笑いで流して最後に新曲を披露する。
終演後、他のバンドと飲みにいくメンバーに断り真っ直ぐ帰宅するというみな。
光輝はタクシーを手配して彼女を見送った。
「大丈夫?」
「何? 曲?まぁ期日までには…多分。
じゃあお疲れ。紅葉頼むね。」
彼女自身を気遣ったつもりがうまく伝わらず、苦笑して気をつけてと言い手を振った。
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飲み会からタクシーで凪の家に帰宅した紅葉はお風呂上がりに凪からもらったプリンを食べていた。
今日もソファーで髪を乾かしてもらっている。
「美味しいー!
凪くんも一口…!」
あーんとされて、口に含めば思ったより滑らかな舌触りで仕上がったプリンの甘い味が広がった。
「夜中だけど、俺もチョコ食べよっかな。」
凪は紅葉からもらった一口大サイズのカカオ85%チョコレートを開ける。
「美味しいー?」
「旨い。カカオの香りがいい感じ。」
ほら、と紅葉に包みを1つ差し出す。
「半分ずつ食べよ? …ん」
口にチョコレートを咥えて凪にも食べるように言う紅葉。
凪がマジでー?と笑いながらチョコレートごと紅葉と唇を合わせた。
「紅葉…(笑)お前ほとんど食っただろー?」
口をもぐもぐさせながら笑い合う2人。
「思ったよりにがーい!
でもドイツのチョコレートこんなの多いよ。」
「そうなんだ?
何…? もっと食べる? それともキス?」
「あとでチューしてくれるって言った!!」
「そうだった…(笑)
あ、さっきのもう一回言ってよ。」
「いいよ。
凪くん…、世界で一番大好きです!」
抱き合ってキスをして、でもベッドへ行く頃には紅葉は半分夢の中だった。
イベントLIVEでいろんなバンドの人間とたくさん話して疲れたのだろう。
凪は起こさずそのまま寝かせると、無防備な寝顔の頬にキスをして一緒に眠りについた。
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