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第56話

2/20 1530 LiT Jツアーファイナル東京公演最終日 都内にも小雪がちらつくこの日、凪が先輩翔の怪我のためサポートを務めたLiT Jがファイナル公演を迎える。 リハーサルから顔を出しにきた紅葉と付き添いのみなは客席からその様子を見学していた。 「広いねー!」 「だね。音の響き方が違う…」 今のLinksよりもキャパの多い会場に興味津々の2人。 「ヤッホー! 美人さんたち!来てくれたんだね。」 今日も明るい翔が2人を見つけて声をかけてくれた。 「翔くん! 今日演奏するってホント?! 大丈夫ー?」 「医者がちょっとならいいって言うからさ、後半凪に代わってもらう予定ー! まぁ、結局打ち込み使うんだけど…。」 「翔くんが出ることに意味があるんだよ! スゴいねー!」 「…相変わらず天使っ!! 凪だけじゃなくて俺も見てってね!! みなちゃんも楽しんでってね。 あ、2人とも何か飲む?」 「あとでいいや。 …ってか、ハウリングがヒドイ。 早く直して? 頭痛くなる…。」 ギターの不協和音に絶対音感を持つみなは不快らしい。 「あー、ここ音の反響特殊なんだよね…。 一回外出る?」 「…触んないで!」 肩を抱こうとする翔の足をみなは思いっきりヒールで踏む。 「痛いっ……!! …今度は左足の指が折れたかも。」 「わわっ!ごめんね、翔くん! 僕手伝うね。 みなちゃんこっち…」 紅葉に手をひかれて会場の外で待つみな。 寒いからと紅葉はマフラーとコートを彼女に貸した。 会場に戻った紅葉は翔にもう一度謝り、メンバーのもとへ行き音の調整を手伝うと申し出た。 凪と翔に間に入ってもらって、紅葉曰く、会場の一番音の集まる場所から指示を出すと徐々に音が落ち着いてきた。 「すごい…!なんでこんなの出来るの?」 翔が驚く。 「才能じゃね? うちの時もいつも一番音が集中するポイントでボーッとしてる。 今度のマスタリングは同席させるつもり。」 凪が答える。 「ヤベーね!スゴい人材見つけたね! 時々借りれる?」 「ごめんね、僕Links以外でベース弾くつもりないんだー。」 紅葉が2人の元に戻りそう告げた。 調整が終わり、みなを呼びに行くと先程より雪の粒が大きくなっていた。 「わぁー!すごい!積もるかなぁ?」 「どうかな? …寒い。冷えた。 骨折ドラマーにスタバ奢って貰おう!」 翔はねだられるままにスタバでコーヒーを買い2人に与えた。 「みなちゃんさ、カレシいる? 今度俺とデートどう?」 さっき足を踏まれたというのに懲りずに彼女を誘う翔。 「…何ご馳走してくれるの?」 「おっと! それはOKな感じなの? 何でもいいよ! とりあえず付き合う?」 「あ、ごめん、それは無理。 一件保留案件があって…。 あと顔が好みじゃない。」 「はいっ?!」 「翔くん、マジでやめといて。 うちのバンドのために。 多分骨折じゃ済まなくなる。」 凪が間に入って止めた。 LIVEは大いに盛り上がり、翔が途中からステージに上がると大きな歓声に包まれた。 「凪くんカッコ良かったぁー!!」 結局凪しか見えていない紅葉は目をハートにさせて同じセリフを繰り返した。 LIVE中に降り積もった雪でタクシーが捕まらないらしく、帰宅を諦めたみなは凪に帰り送ってくれるように頼み珍しく打ち上げに同席することにした。 「やだな。夜更かしすると肌荒れする…! 明日の朝は凍結で走れないし、最悪。 あーあ。夜中にお菓子食べても太らないし、肌荒れもしない体質とこの肌が羨ましい。」 「いひゃい…」 紅葉の頬をつねりそう愚痴るみなはスタッフの女子からモテモテだった。 体型維持のポイントや流行りのメイクの話題で盛り上がる。 メンバーたちは仕方なく男で集まり飲んだり食べたりを楽しんでいる。 もちろん運転予定のメンバーはノンアルコールだ。 「みなちゃん美人だけど、彼女にするにはちょーっと性格キツイよね…! 顔が好みじゃないとかバッサリ言われれば諦めよ…。 レベルは劣るけど、最近シャンプーに通ってる美容師さんとまぁまぁいい感じなんだよね! 凪は幸せだね、あんな天使つかまえて…! …くそっ、羨ましいっ!」 「天使?(笑) 翔くん飲み過ぎだってー!」 「凪も飲みなよ! いーよ、もうその辺泊まれば!」 「あいつ(みな)送らないと…。 そーいえば、電車止まったらしいよ。」 「マジで?! よし、朝まで飲もう!! 凪は天使とラブホ泊まっていろいろ抜いて帰ればいいじゃん!」 「リスキー過ぎるから…(苦笑) ってか静かだな…寝てる? おーい、紅葉?」 「もう寝てるよ?」 みなの隣の席で紅葉がテーブルにふせて寝ている。 「酒飲ましてない?」 「大丈夫。勝手に寝た。」 「早…っ!ってか寝顔マジ天使!! 写真撮っていーい?」 「ダメ。」 凪は翔のスマホを取り上げて紅葉にはコートをかけてやる。 2/21 0:30 雪道の悪路の中をわざわざみなを迎えに来た光輝はスタッフの女の子たちも送り届けると言って回収していった。 凪も2時を回る頃、紅葉を連れて帰宅することにした。 翔は朝までコースらしく残りのメンバーも盛り上がっていた。 路面凍結でスッ転んでまた骨折だけはやめてねと伝えて寝惚ける紅葉と車へ移動する。 「雪…っ!…わーい!いっぱいになってる! 凪くん、お家に着いたら雪だるま作ろうよ!」 「目ぇ覚めた? 雪だるまは明日にして、さみーからあったまることしよーよ? 頑張ったご褒美ちょうだい?」 そう誘うと寒さでだけではなく頬を赤く染めた紅葉が小さな声でいいよ。と答えた。

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