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第63話

2110 「おかえりー。」 「ただいま…。 風呂って今から入れる?」 疲れた声の凪と、泥だらけの紅葉と平九郎が散歩から帰ってきた。 「紅葉っ?! 何その服! 泥だらけじゃん! 平九郎もっ?!何してんのー?」 「紅葉が転けて、泥にハマった。 何でか知らないけど、こいつも突っ込んできて…」 稀にみる大惨事に3人は爆笑。 「怪我はない? とりあえずそのままお風呂行きなよ。」 誠一がそう言って、バスルームの場所を案内する。光輝は予備用に買ってきたタオルを渡した。 「ありがとうー。 怪我は大丈夫! 凪くんも一緒に入ろ?」 いつものように凪と入浴する気でいる紅葉。 「アホ…。 二匹まとめて洗ってやるから早く来いっ!」 クスクス笑いながらみなは紅葉の着替えの入った鞄を取りにいく。 「鞄ごと置いとくから自分で出してね。」 しばらくして綺麗になった平九郎を連れた凪がリビングに戻ってきた。 暖炉の前でガシガシタオルドライしている。 「代わるから凪も入ってくれば? びしょびしょじゃん()」 みなに言われて平九郎の世話を代わってもらう。紅葉の血縁だからか、ただの女好きなのかみなにもすぐに懐いた平九郎は大人しく拭かれている。 「こいつがブルブルしまくるから…。 手だらけだし…。 ちょっと散歩に出ただけなんだけど…!(苦笑)」 「さすが紅葉だね。」 「さっきも普通に2人でお風呂入ろうとしてたよね?いいよ、別に。いつも一緒なんだもんね?」 誠一にからかわれて凪は「メンバー全員にバレてるとか何の修行だよ」と言い返す。 「誠一も恋人とデート中、せっかくいい雰囲気になってんのに、いきなり転けて泥だらけになられてみろよ!(笑) 特にこいつが来てからそういうのパワーアップしてるし…想定外過ぎて身が持たねぇよ。」 3人が再び爆笑していると、 「何の話ー?面白いことあったのー?」 と、紅葉がバスルームから出てきた。 その格好は真っ白なモコモコ素材のルームウエアで、まるでヒツジの着ぐるみのようなデザインだった。寒いのに何故かハーフパンツ(尻尾つき) 「何それ、可愛いー! 自分で買ったの?」 「後輩の風ちゃん…コンクールで伴奏頼んでたけど急に出れなくなった子がお詫びと卒業のお祝いでくれたんだー。」 「あの子か。よく分かってんね。 腐女子なのかなー? うん、めっちゃ似合う! よし、写真撮ってアップしよう! …いい?」 凪に許可を求めるみな。 「…髪乾かしてからな…。」 もちろん凪にドライヤーをしてもらって、砂糖を少し溶かしたホットミルクにご機嫌の紅葉。 スマホで撮影会が始まる。 「タイトル【オオカミさんに気をつけて】でどう?」 「誠ちゃんナイスっ! 光輝くん、今すぐそれでアップして!」 「え、オオカミいるの?どこー?」 窓の外を探す紅葉に凪は諦めて入れ替わるようにバスルームへ向かった。 合宿3日目 本日の昼食(凪、光輝、誠一にとってはブランチ)は手作り食パン、スクランブルエッグ、マカロニ入りトマトと豆のスープ、サラダ、白身魚のフリッター(冷凍食品) みな的には手抜き料理なのだが、光輝と誠一は感激している様子だ。 「まさか焼きたてパンの匂いで起きる日が来るなんて…!ピアノとバイオリンの生演奏も聴けるし、夜はお摘まみ作ってくれたり…。 ここ天国? みなちゃん、光輝とじゃなくて僕と結婚しよう?」 ガシャンとフォークを落とす光輝。 みなは「誠ちゃんはないなー。絶対離婚案件だもん。」と笑っている。 「あ、光輝、睨まないで?冗談だよ?」 「パンもっと!!スープも!」 「え?紅葉まだ食べるの? パンは冷凍したやつならあるから凪、出してやって。」 「他にもっと食べる人ー?」 凪の問に光輝と誠一も手をあげて、まとめて解凍しにいく。 「みなは普段洋食が多いの? ってか、料理どこで習った?」 光輝がスープのおかわりをよそいながら聞く。 「そんなことないけど…。 凪(和食専門家)がいるから張り合ってもしょうがないし、和食か中華作ろっかな?って。 料理はYouTubeとクックパッドだよ? 母は全く出来なかったし。 あ。今日の夜さ、歌わなくていい? みんなで餃子作ってプレートで焼こうよ!」 「わぁーい!餃子パーティー!!」 「しかしみんなホントによく食べるね。 大家族のお母さんになった気分なんだけど(苦笑)」 環境を変えて穏やかな時間を過ごしている効果なのか、みなのメンタルも落ち着いて再び曲作りも出来るようになった。 彼女的には【作ろうと思って作る音楽】と【自然と形になっていく音楽】は違うらしく、後者の音楽がたくさん出来ていき、それをそのまま共に形にしていくメンバーが近くにいる今の環境はとてもリラックス出来るらしい。 料理を作っている時に鼻歌で作曲していて、すぐに忘れてしまうので、光輝が勿体ない!と言って取り零さないように注視している。 早く起きるみなと紅葉は練習前に散策をしているらしく、バスケのコートを見つけてみんなでやろうと言う。 籠って音楽制作ばかりしていると運動不足になりがちなので、時々みんなでバスケをして楽しんだ。

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