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第64話
合宿5日目。
凪と紅葉は泥んこ事件のあとは暗くなる前に平九郎の散歩に行くことにして、手を繋ぐだけという健全なデートを続けている。
凪は大人なので人前でイチャついたりはしないのだが、紅葉は無自覚で彼にくっついて煽っているとしか思えない行動をとる。
「何作ってるの?」
キッチンで作業中の凪の背後に回って腰に抱き付く紅葉。
「お前の好きなやつ。」
「肉じゃが?! やったっ!
お手伝いする?」
「…紅葉、危ないから離れて?
今から刺身切るから。」
「えーっ…?!あとちょっと。」
ギューっと抱き付く紅葉に苦笑する凪。
「コラ…っ!!(苦笑)
火使ってる時と包丁持ってる時はダメって言ってんじゃん。」
「…ごめんなさいー。」
「もうすぐ出来るからイイコで待ってな?」
シュンとする紅葉に一瞬だけ口付ける凪。
凪の首に腕を回してもっと、とキスをねだる紅葉。
この状況がほぼ毎日で、慣れてきた他の3人は普通にリビングで編集作業や個人練習をしている。
みなと光輝は新曲の調整中。
「ここ、もうちょっとこの音前に出した方が良くない?」
「でもこのあとのBメロの繋ぎを考えるとバランス的にはこれでベストだと思うよ?」
「光輝くんバランスばっか考えてるけど、これじゃあメリハリ足りないって!」
「…癖ばかり目立たせてどうするの?!」
険悪な雰囲気に普通はドキリとする所だが、他のメンバーは慣れたものでそのまま放置する。
しばらく無言になった2人は同じほぼタイミングで答えを出す。
「ギターのエフェクターを調整してあと少しだけ前出そう。Bメロ入りのとこをベースラインでメロディに繋げる感じで。」
「だね。それがベスト。」
絶妙なコンビネーションだ。
カップルとほぼカップルに挟まれる形の誠一だが、特に気にしていないようで、プライベート時間は星の観測をしながらギターの個人練習を続けている。
「誠一くん、僕もお星さま見ていい?」
紅葉が誠一の部屋にやってきてそう訊ねた。
「いいよ。寒いから上着持っておいで。」
バルコニーに設置した天体望遠鏡で星空を見せてあげるととても喜ぶ紅葉。
凪が紅葉を探しに来たので「せっかくだから一緒に見てみる?」と勧める。
「煙草行ってくるからゆっくり見てていいよ。モニタリングしてるけど、音入らないから安心して?」
気を遣って2人きりにし、部屋を後にする。
「見てみて、キレイー!!
いろんな色があるよ!」
「ってか、さみぃよ(苦笑)」
部屋着だけの凪は寒いだろう。
紅葉は自分のコートを貸そうとするが…
「入らないって(笑)
…これでいい。」
誠一の物だろう膝掛けを拝借して肩にかけ、紅葉ごと後ろから包み込んだ。
「ふふ、あったかい。」
凪を見上げたところでキスをされて、振り向くと、毛布の中に隠れながら深く口付ける。
「ん、や。も、ダメだよ…っ」
立っていられないと訴える紅葉に「部屋来るる?」と誘ってみるが、「みんながいるからイヤだ」と当たり前だが断られる。
「あー、連れ出すにもバレバレだし…。
いつ休みになんのかなー…。」
凪は紅葉を抱き締めながらそう呟いた。
あまりゆっくりしているとまたからかわれてそうなので、何度かキスを交わしたあと、2人で下に降りて誠一を呼びにいった。
合宿7日目
730
早起きのみなはファンクラブ用の企画でモーニングルーティンを撮影中。
一時間前に起床し、パンの材料をセットしてから平九郎の散歩兼自身のランニングをしてきて、貸別荘に戻ってきたところだ。
「シャワーを浴びて着替えてからストレッチとヨガをやりまーす。」
一度撮影を止めてバスルームへ行くためリビングを横切るとソファーで光輝が寝ていて驚くみな。
「ビックリした…っ!
何ー?さっきいなかったよね?風邪ひくよ?」
起きた時にはいなかったはずの光輝がわざわざリビングで寝ていて、声をかける。
何度かお酒を飲んでそのまま寝落ちしている光輝や凪を見かけたり、朝まで作業している時に会ったことはあったが、今朝はどうしたのだろう…。
一先ず薪ストーブをつけてあげるみな。
「はよ…。この寒いのに走ってきたの?」
「今日は雨降ってきたから途中で切り上げたよ。光輝くんこそ起きるの早くない?」
「なんか…、2~3日前からかな?
朝、みなが走りに行ったあとに紅葉が部屋に来るんだよね…。」
「そういえばいなかった気がする…。
なんだ、やっぱり凪のところか。」
「凪が辛抱強くて助かってんだけど…なんかもう…いつナニが起きちゃうかって気になって眠れなくてさ… 避難してきた。」
「うけるっ(笑)
光輝くんと違って仕事だけに集中出来ないんだからさー、もう休みあげなよ。
今キス止まりだけどそろそろ限界だって。」
「分かりました。
ってか、僕だってだいぶ揺らいでるからね?
二度寝する間にお風呂入っておいで。」
「…平九郎!
ここ、ステイ。この人近付いたらウーって言うんだよ?」
「あ、ヒドイ…(苦笑)」
平九郎をバスルームの入口に座らせて見張りを頼んだみなは安心してシャワーを浴びることにする。
結局この日は休みとなり、凪は紅葉を連れて出掛けるという。
「平九郎は私がみてるから楽しんでおいで!」
「ありがと!」
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