66 / 144
第66話
2人が貸別荘に戻ると誠一が「早かったねー!」と出迎えた。
「あれ?誠ちゃん出掛けなかったの?」
「昼食べに出て、ワイン買って、ここで飲んでた。」
「昼間からワイン…!(笑)ミュージシャンの鏡だね。飲みながらでいいから夕食作るから手伝ってよ。」
「いいよー。動画撮っとく?」
光輝と平九郎は薪ストーブの前のソファーで休憩モードだ。
「ごめん、後から手伝う…。」
「こっちいいから平九郎をシャンプータオルで拭いておいて。」
「了解ー…。」
「ナニしてきたの?光輝疲れてるね?」
「軽くトレッキング…?」
「健全だねー。
…あの2人は帰ってくるのかな?」
「どうかな?泊まりかもねー。
まぁ、いっか。連絡くらい寄越すでしょう。」
「だねー。ところで何作るの?」
「シチュー!! じゃがいも洗って、皮剥いて、1/4くらいに切って水につける。よろしく!」
指示を受けた誠一は撮影用にカメラをセットしたあと、早速作業に取りかかる。
「いや、不器用過ぎるでしょ、お兄さん…!
何?あの超絶技巧の速弾きはデフォルトなの?なんでギターあんなに弾けてじゃがいもが切れないの?(笑)」
「これ無理でしょ。もう皮ごと切っていい?
煮れば食べれるよね。」
緻密な計算は得意なのに料理には大雑把な誠一に笑う。
結局光輝も手伝ってなんとか野菜を切り終え、仕上げはみなが行う。
「平九郎もいっぱい遊んで疲れたね。
鶏肉茹でてあげるねー!」
3人が食事を済ませた頃、凪と紅葉が帰宅。
「おかえりー! 楽しかった?
ご飯は?食べた? 私たち今からデザートだよ。」
「デザート…?」
何やら気だるげな紅葉がデザートという言葉に反応する。
「悪い、うっかり寝てて連絡忘れた…。
夕食みなが作ったのか?」
「みんなでシチュー作ったんだよ。食べる?」
「もらう…。あ、自分でやるからいーよ。
紅葉も軽く食べる?デザートはそのあとな?」
「はぁい。
平九郎ー、ただいま。いい子にしてた?」
ソファーでゴロゴロしながら平九郎を撫でる紅葉。みなに今日の報告をしているようだ。
「お蕎麦食べて、お馬さんとウシさん見て、アイス食べて、温泉入ったー!」
「馬いいね!
平九郎はボールでたくさん遊んだよー。」
ワインの新しいボトルを取りにキッチンへ向かう誠一が、シチューを温めている凪に話しかける。
「で?
その肩噛み痕には触れた方がいいのかな?(苦笑)」
部屋が暖かいので、上着を脱いだ凪のカットソーの隙間からは生々しい歯形が見えている。
「あー…。なんつーか、焦らし過ぎただけ?
何なの…マジで…。この性事情が筒抜けな感じ…!(苦笑)」
「とりあえず凪も飲めば?
休みだから誠一なんて昼間から飲んでるよ?」
光輝にワイングラスを渡された凪は素直に受け取って、誠一に上質なワインを注いでもらう。
「旨いね…。」
「でしょ。もっと飲みなよー!」
「飲ませてもこれ以上は喋んないからな!」
その後、夕食を食べる凪と紅葉に合わせてデザートを食べる光輝、誠一、みな。
みなも凪の肩についた歯形に気付くと顔をしかめた。
「ちょっと!
紅葉にあんまりハードなことさせないでくれる?なんかが減る!」
「なんかって何だよ(笑)
初心者相手にそんなハードなことしてねーよ。」
「え、何ー? あ、あれ?
ちょっとね、我慢出来なくて、勢い余って噛んじゃって…。
凪くん痛い? …ごめんね。
やっぱり消毒する?」
「いい。紅葉それ以上喋んな。
俺のも半分ケーキ食っていいから。
…それ以上は秘密。」
「分かった!
ケーキっ!」
「あれは…半分しか聞いてないね…。」
誠一が苦笑する。
「もうあの部屋2人で使っていいよ(苦笑)
誠一、寒くても狭くてもいいから同室よろしく。」
どうせ凪と紅葉は一つのベッドで眠るのだ。
荷物はこのまま部屋に置かせてもらえばいいし、最初からそうすれば良かったねと光輝も苦笑した。
ともだちにシェアしよう!