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第67話※R18
凪と紅葉のオフデート回想
「紅葉、どっか行きたいとこある?」
「お蕎麦食べたい!
昨日テレビでお蕎麦が有名って見たよ。」
「どこ?」
紅葉の調べた店をナビで検索すると多少距離はあるが、逆にその方がいいかと行ってみることにする。
「これでOKっと。
じゃあ行くか。」
「あ、待って?」
紅葉の方を向くとチュッとキスされる。
「外行ったら出来ないから…!」
紅葉も今日のデートを楽しみにしているらしい。凪も上機嫌でハンドルを握った。
車を一時間程走らせて辿り着いた蕎麦屋は秘境の店と言った感じで、贅沢にも貸切状態の店内で清流を眺めながら天婦羅蕎麦をすする。
上手に箸を使い「美味しいー!日本サイコー!」と、蕎麦をすする紅葉に店主も笑顔だった。
近くの牧場を教えてもらい、霧雨の降る中、2人は手を繋いで放牧されている馬を眺める。
ラッキーなことにここも貸切状態だ。
「お馬さんー!」
走って行く紅葉にひやひやする凪。
「転ばないでね?(苦笑)」
「人参あげたいっ!」
観光客用に用意された餌のカップを買ってやり、人参を馬に与える紅葉をスマホで撮影する。
「馬好きなの?」
「可愛いよね。おばあちゃん家の隣が叔父さんのお家で、馬とかヤギとかニワトリがいるの。犬も!
お馬さんを集めるのを手伝うと人参がもらえるよ。」
「え、それは人間用?」
「そうだよ!僕のおやつだった(笑)」
「スゲーなー。あ、それは食わないでね?(苦笑)」
そのあとウシを見て、この極寒の中、ソフトクリームを食べたいという紅葉に買い与えるが半分ほど食べるとブルブルと震えだしたので、仕方なく残りは凪が食べるはめになった。
お土産コーナーで平九郎に似た小さなぬいぐるみを購入して早速鞄につける紅葉。
犬はいなかったけど…まぁいいかと一回り大きな物を凪が買って、車に飾ることにする。
「わぁい!平九郎がいっぱい!
これでいつでも一緒だね。」
ご機嫌な恋人の笑顔に癒されて凪は「次は俺が行きたい所でいい?」と訊ねる。
「もちろん!どこ?」
「…着くまで秘密。」
高速脇の道を走らせて適当なところに入る。
所詮観光地によくあるラブホだ。
平日の昼間から男2人で入れるものなのかとは思ったが、ダメなら他に行けばいいやと開き直りになり、紅葉の手をひいていく。
時間を気にするのは面倒なので泊まりで、一番良さげな部屋をさっさと選ぶ。凪はこういうところをケチる男ではない。
サングラス越しに受付で鍵を受け取るとこちらを見たばぁさんに一瞬ギョッとされたが、どうせもう2度と会わないのでスルーして部屋に上がる。
終始キョロキョロしていた紅葉は部屋に入ると
いかにもな部屋に驚きつつも「ここってラブホテル?」と今更ながら確認してきた。
「そうだけど…ダメだった?」
「ううん! そっか。凪くんが行きたいとこココだったんだね!僕初めて来たよー!」
そりゃあそうだろうと笑った凪は部屋を探索する紅葉を好きにさせて、冷蔵庫から飲み物を取り出してソファーに座った。
変に緊張されるよりは良いが、どこかのほほんとした雰囲気の恋人に調子が狂う凪。
ズボンのポケットを探り癖でタバコを探すが、禁煙中だったことを思い出す。
なんとなく手持ち無沙汰になったところで紅葉が隣に座ったので「風呂でも入る?」と聞き、早速お湯を溜める。
並んで歯を磨いて、広いバスルームへ入ると、露天風呂風のお風呂だった。
「これって温泉…?」
手でお湯を掬いながら訊ねる紅葉。
「多分違う。でも雰囲気は出てるよな?」
「うん。温かいねぇー。」
備え付けのテレビで懐かしのアニメを眺めながら瞼を閉じる紅葉。
後ろから抱えながら「寝るなよー!」と声をかける。
「癒されて寝ちゃいそうだった…。」
「え、眠いの?」
「大丈夫だよ。
なんかさ、みんなでいるのも楽しいけど、やっぱり2人がいいね!
最近いつも一緒にいられたから当たり前のように感じてたけど…一緒にお風呂入ったり、くっついて寝たりするのって大事なんだね。
幸せってそういうところにあったんだね。」
「お前…時々スゲー良いこと言うね。」
へへっと凪に顔を向けて微笑む紅葉に口づけて、細くて透明感のある身体に手を這わせていく。
「んん…っ!!
ぁっ。 ね、今日僕ダメだと思うー。」
「何?…したくないの?」
「違っ…!
なんかもう、気持ちいい…っ!
から、すぐいっちゃう気がする…、んっ!」
「…んー…?それはいつも通りってこと?(笑)」
「もぉっ!! いじわるー。」
「キライ?」
「……スキ。」
「可愛い。」
「ねぇ、凪くんも好きって言って?」
「えー? どーしよっかなぁ…?」
「…やだ。…じゃあしないーっ!」
「なにそれ、可愛い。」
「……好き?」
「ん。」
「好き?」
「…そうだね。」
「…凪くん…っ?」
「分かった…(笑)
好きだよ。
もー、ベッドいこ。」
言葉遊びを楽しみながら移動する2人。
紅葉にバスルームを着せて、濡れた髪を拭いてやり、凪はタオルだけ巻いて、水を二本持って大きなベッドへ向かう。
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