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第69話
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「おはよ…っ!」
リビングに降りてきた紅葉はあくびを噛み締めながら伸びをした。
平九郎の頭を撫でながら、ダイニングの椅子に座る。
「紅葉遅くない?
まーたイチャイチャしてたでしょ?」
隣に座ってノートPCを眺めるみなに言われてハッとする。
「ごめんね、うるさかった?
凪くんお酒飲んでから寝るから、寝てたら起こされて…!その…!」
「酒入るとヤリたくなるらしいね…。
たるんでるよー!!
ね、これ、見て。 こんな感じでどう?」
差し出された楽譜を覗き込む紅葉。
手書きの楽譜は簡易的に書かれたものだが、長い付き合いなので理解出来る。
「うん…。
うー、…ごめん、頭回んない。
顔洗ってくるー。」
「朝ごはん準備しといてあげる。
ねぇ…シャワー浴びたら?」
「…そーするー。」
いろいろ見透かされた気がした紅葉はいそいそとバスルームへ向かった。
朝食を食べながら楽譜を確認して、少し訂正を入れる。
「一回これでやってみよ!」
みなと2人で演奏を始める。
修正を加えながら演奏していると慌てた様子で階段を降りてきた光輝が驚いた表情を見せる。
「なに、どーやったの?」
「Linksの『eternal』のピアノとバイオリンでのアレンジだよ。どう?」
「…よく、出来てる。
目ぇ覚めた。」
「良かった!一回やってみたかったからみなちゃんと考えたよー。」
「光輝くん?大丈夫?
二日酔いー?
ってか、3人はまた片付けないで寝たでしょー? もう、大変だったんだからねー!」
「こんなの出来るならもっと幅が広がるな…。やっぱりキャパ無理してでもホールLIVE入れるか…!」
起きて早々仕事モードに入った光輝に苦笑して、2人は遊び始める。
一緒にピアノを弾いたり、歌ったり…背中合わせに座ってピアノのバイオリンで即興曲をやったり…小さい頃もそうしていたので懐かしいー!とお互いに言いながら音楽を楽しんだ。
その日のミーティングで、光輝から提案があった。
「東京戻ったらアルバム…2パターンでレコーディングに入りたい。
基本8曲と+2曲 、インストメンタル+基本8曲+1曲(typeB)
基本8曲も曲順変えて、プラスする曲でガラっとイメージ変えていきたい。MVは撮るか分からないけど…配信とかメイキングで使えるかもだからここで素材だけ撮影しとこうかと。
あと、録音もここで少ししていきたい。
雑音入るから本来は使わないけど、あえて使うのも面白いかと思って。まぁ、本当に使うかは分からないけど…!」
「え、前も言ったけどさ、何仕事増やしてんの?(苦笑)」
凪が突っ込む。
「あと2日で終わる?」
誠一も不安そうだ。
「やっと曲纏まってきたから、残りは遊ぼうと思ってたのに!
昨日あと少しだねって言ってたじゃん!」
「ごめんね、あと少し、頑張って。」
「鬼っ!」
みなにも罵られて、でも頑張ろうと言う光輝。
紅葉だけは文句も言わず、ニコニコと微笑んでいた。
そこからまさかの急加速で追い上げにかかり、なんとかここで出来ることを終わらせる。
片付けを残して、午後はみんなでバスケをした。通りがかりの地元の男子高校生も誘ってミニゲームを楽しんだのだ。
「Links知ってますよ。Twitter見てます。」
「本当に?」
「みんなイケメンだからクラスの女子たちもよく見てますー。ティックトックはやらないんですか?」
「光輝くん!ティックトックだって!」
「若者は見るんだね。…前向きに検討します。」
「今度高3?ってことは紅葉たちの一個下?
…落ち着いてるね。」
絶対届かないのにダンクをしてみたくてゴールに向かってジャンプを続ける紅葉を眺めながら凪がそう呟いた。
「お礼にジュースでも奢るよ。
付き合ってくれてありがとね。」
誠一がタバコを咥えながら立ち上がる。
「誠ちゃん、運動したあとにタバコって…(苦笑)」
「ビールも欲しい。
本当、久々に全力だして歳を感じた(苦笑)」
みんなで笑い合いながら合宿を締め括る。
夜は残りの食材でバーベキュー。
「寒い…。
やっぱり夏に来たかった!」
「また来ようー!
平九郎も一緒に来ようね。」
「すぐレコーディングだからね?
みな、仮歌詞つめといて?」
「はぁい。」
「じゃあ一先ずお疲れ様!
明日はチェックアウト11時。
手続きしとく。
各自自由解散。」
「了解ー。私はどこに乗ればいい?」
みなが聞くと誠一が気をきかせた。
「僕、ワイナリーよって帰るから。
光輝に乗せてもらって?」
「高級ヤン車、もっと乗りたかった…。」
「すみませんね、オンボロの社用車で。
どっか寄るから我慢してね。」
「夕方にボイトレレッスンあるから直帰で。
紅葉たちはデートして帰るの?
…平九郎みたいなぬいぐるみあったら私にも買っといて?」
「分かったー!」
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