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第72話

3/20 1400 成田空港 到着ロビー 凪Side 今日は紅葉の双子の…確か向こうが兄だったかな?双子だからどっちでもいい気がするが…まぁ、その双子の片割れ『珊瑚(さんご)』が日本に来日するため、紅葉と2人で彼を迎えにきたのだ。 本当はみなのマンションに居候する予定だったのだが、彼女は化粧品メーカーとのCM契約が決まり、そちらの仕事とレコーディングの歌入れもあり多忙なのだ。 因みにアルバムリリース後のツアーもそのメーカーの化粧品をLinksのメンバー一同使わせてもらえるらしく、大手スポンサーの獲得に光輝も大変喜んでいる。 みなは一人でゆっくり休む時間が欲しいと、いつぞやの演奏会での『貸し』を返せと言われた紅葉に頼まれて今日からしばらく珊瑚を居候させることになってしまった…。 だから、ラブラブ同棲生活は? どこ行ったの? 東京に帰ってからめちゃくちゃタイトなレコーディングスケジュールに悲鳴をあげていて、またしばらくお預けだ…。 「遅いねー。 もう着いてるのに…!すれ違ったかなぁ?」 自分と同じ顔のやつを見過ごすことなんてないだろうに心配そうにゲートを見つめる紅葉。 しばらくするとサングラスをかけたスラリとしたスタイルの青年が現れた。 「あ!来たー! さーんーごーっ!! ここだよぉーっ!!」 ぴょんぴょん跳ねながら走って出迎える紅葉に苦笑する。 「小学生かよ…(笑)」 久しぶりの再会が嬉しいのか、ハグと頬に挨拶のキスをして一緒にカートを押してくる。 ドイツ語で何やら話す2人… 「凪くん、僕の兄弟の珊瑚だよ。」 まずは自己紹介らしい。 サングラスを外した珊瑚が右手を差し出してきたので、握手をしようと自分も右手を伸ばす。 なるほど… 確かに同じ顔。 でも背は珊瑚の方が高いし、身体付きもしっかりとしている。 二卵性双生児だからか、髪の色も若干珊瑚の方が明るく、瞳のグリーンも明るめで青みががった不思議な色をしていた。 「ヨロシク、紅葉のダーリン?」 口元だけで笑った珊瑚はハグ…と見せ掛けて近付いたあと唇を舐めるようにキスをしてきた。 咄嗟に身を引いて払おうとしたが、紅葉と同じ顔なのに紅葉よりも抵抗する力が強くて驚く。 「あーっ!! ちょっと、何してんのっ?!!! バカバカっ!!珊瑚ーっ!! 凪くんはダメーっ!! 離れてよぉーっ!!‼️」 紅葉がすごい勢いでやってきて珊瑚と俺を引き剥がす。 「いーじゃん、ちょっと味見しただけだし。」 「何言ってるのー!?! そんなのダメに決まってるっ!!」 「…キス1つでうるさいなぁ…。 ってか、なんかお前縮んでない?」 「~~っ!!」 どうやら怒っているらしい紅葉はドイツ語で珊瑚と言い合っている…。 初めてみたけど、キレると母国語になるんだな。 別に戯れ程度のキスくらいで傷付いたり怒ったりはしないが、内心ものすごく複雑な気分だ…。 紅葉はあんなテクニックのキスをしないし(出来ない)、この双子、性格もキスの経験値も随分違うようだ…。 性格はみな寄りだと考えればいいのか? いろいろと考えつつ、とりあえず2人を宥めてカートを押す。 「おーい。とりあえず帰るぞー。」 1745 珊瑚には紅葉用に整えた部屋を客室として与えて荷物を運んでやる。 やたら多い荷物はカメラと機材らしい。 珊瑚はカメラマンをしている…と言ってもまだ駆け出しらしいが、日本には桜を撮りに来たそうだ。 流暢な日本語は発音も完璧で、紅葉曰く、彼は頭が良くて他にもいろんな言語を話せるらしい。 「ゴタゴタしてて出遅れたし…。 これから北に行けば間に合う?」 「こっちもまだだから全然大丈夫。」 「ならいーけど…。 ってか、その犬どかしてくんない?」 犬は苦手らしい…。 平九郎はブンブン尻尾を振って離れないから好かれてはいるのだろう。 いや、もしかしたら紅葉と見分けがついてないとか…?平九郎もちょっとアホなところがあるからな…。 「珊瑚は小さい時に隣の犬にちょっかい出して噛まれてから苦手だもんねー?」 「うるせー。 お前が8才までオネショしてたこと彼氏にバラすぞ?」 「もう言ってるし! ひどい! 内緒にする約束でしょーっ!」 仲が良い2人に夕食を振る舞うことにする。

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