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第77話

翌朝早く 鍵が締まる音に気付いて飛び起きた紅葉は、寝室の向かいの珊瑚が使っていた部屋が無人なのを見ると涙を浮かべた。 「…もう行ったのか…。 泣くな、紅葉。…また会える。」 凪は紅葉を慰めて、強く抱き締めた。 異変を感じた平九郎もリビングの定位置から上がってきて紅葉の手を舐め続けている。 珊瑚は置き土産で食費なのだろうお金と、商店街にある古びたカメラ屋の伝票をテーブルに残して行った。 2人は開店と同時に店を訪れると年配の店主から写真を渡された。 中身は珊瑚の撮った写真とSDカード。 彼の撮影する写真はほとんどデジタルデータなのだが、2人へのプレゼントとして現像に出してくれたらしい。(現像代はこちら持ちだったが…) いつの間に撮ったのだろう… 夕陽が部屋に射し込んでいて、ベースとドラムが並んでいるだけのシンプルな写真から始まり、 2人が楽しそうにベースとドラムの練習をしている写真… 紅葉がバイオリンを奏でている真剣な横顔の写真… 珊瑚が桜の撮影をしている間に凪と紅葉と平九郎が桜並木の花びらが舞う中、川沿いを並んで散歩している時の写真… どうやら寝室にも勝手に入ってきていたらしく…向かい合って指先を絡めたまま眠っている2人の写真… 犬は苦手だと言っていたはずなのに、平九郎が満面の笑顔のように見える写真… どれもが美しくて、写真を眺めているだけで2人を幸せな気持ちにしてくれる作品だった。 紅葉はまた涙をいっぱいに溜めながら何度も写真を見返している。 凪も珊瑚が人物を撮るのは家族や恋人だけだと言っていたので、自分は紅葉の恋人として認めてもらえたのかなと思うと嬉しかった。 「これ…、ベッドシーンはあれだけど…(苦笑) データもくれたし…、他はちゃんと飾れる用に引き伸ばしてもらおうか…。」 「うん…っ!! 宝物…。 凪くんもカッコいいけど、平九郎がすーっごい可愛いよね! コップとか作りたいなー!」 早速親バカっぷりを発揮する紅葉だった。

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