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第78話

※本編と直接関係のない話になりますので、飛ばしてもらっても大丈夫です。 ※NL要素を含みます。 3/31 1900 みなの誕生日 小さな…でも決して安くはない、上品な雰囲気の鉄板焼店に現れたのは光輝の想い人でこの日18才の誕生日を迎えたみな。 合宿帰りにダメ元で、光輝がBDディナーデートに誘うとOKをくれたので2人で会うのはホワイトデーデート(あれはデートと言うよりはトレッキングだったが)以来だ。 去年は彼女の母親の体調が悪くて誕生日どころではなく、一昨年は無視されていたので、かなりの進歩と言える。 が、会話はいつも通り。 会っても「お疲れ」から始まり、ほとんどが仕事の内容だ。 「CM撮りと編集チェック無事終わって、予定通り明日から流れるって。 来週、全員でツアー用のメイクリハでいいんだよね?衣装の直しって間に合う?」 「プッシュしてる…けど、細かい調整だけだからチェックだけなら今のままでも大丈夫。」 「それもそっか…。 ジャケ写は?」 「…最高。見る?」 光輝が珊瑚から送られてきたサンプル画像を見せる。 木漏れ日が射し込む新緑の中にポツンと置かれた古い木箱が映る写真は自然の中にありそうで…でもどこか幻想的で不思議な感覚を与える。 もうひとつのパターンはその木箱の蓋が開けられていて…新緑の奥へ続く道には足跡が見える。 物語を連想させる2パターンの写真は光輝の理想通りだったらしい。 「契約書書く前にカナダ行っちゃうし…珊瑚くんにLINEでギャラの振り込み先聞いたらいらないとか言うし…。どうしてもって言ったらこれって言われたんだけどさ…。 口座の名前が…ドイツ名だと違うの?」 みなが確認するが、紅葉も珊瑚もドイツでもどこの国でも同じ名前なはずだ。 「どれ? …あー、多分おじいちゃんの口座かな? こんな名前だった気がする。」 「マジか…。どうしよ…。」 「珊瑚がここにって言うなら、振り込んであげて。あ、ユーロでお願い。」 「経緯説明しといてね?」 「了解。ありがと。 紅葉も仕送り始めたみたいだけど、珊瑚が一番無理してるからさー。助かると思うよ。」 「そっか…。 パッと見ヤンチャっぽいけど、実はすごいイイコだよね。こんなすごい写真撮れるし…。誠一も珊瑚くんは頭良いって言ってた。」 「…私たち3人の中では一番優秀で一番責任感あるかな。ちょっとオトコ見る目はないんだけどねー(苦笑)」 「ふっ。そういえば翔くんどうしたかね?」 「しまった、聞き忘れたっ!! ツアー終わって帰ってきたら聞き出そうー。」 楽しそうにそう言うみなは、出されたステーキに微笑んだ。 「美味しそうっ! いただきます。」 「お誕生日おめでとう。 ケーキも用意してもらってるけど、食べれる?」 「ちょっと、カロリーオーバーだって。 それにこの前もみんなで食べたよ?」 甘やかし過ぎだと笑う彼女。 「小さいのにしたから…食べきれなかったら持ち帰りにしてもいいし。 それに誕生日は特別でしょ?」 2人はノンアルコールのカクテルで乾杯して食事を楽しむ。 ミニサイズのケーキは蝋燭だけ消して持ち帰ることにする。 「ちょっと光輝くんに聞きたいことと言うか確認したいことがあるんだけど…、例の件で。」 そう言うと光輝は店員に目配せをしてケーキを包むという口実で2人きりにしてもらう。 「何?何でもどうぞ?」 「結婚ってさ、一生というか、今後の人生そのもののことだと思うんだけど…」 「そうだね?」 「…良かった。そこの認識はあったんだね。」 「え?そのくらいの常識はあるよ?(苦笑) 恋愛は自由だけど結婚は誓約。よくみなが言ってた。」 「イヤ、光輝くんちょっととんでるからさ…。 で、仮に私と光輝くんが結婚したとして…仮にの話ね? したとして、どうなりたいの?」 「どう…っていうか、普通に、一般的な結婚生活をおくりたいと思ってるよ。」 「一般的…? 普通に?」 「うん。一緒に住んで、一緒に生活して、いつかこどもが出来たら家族が増えるよね?」 「こども欲しいの?」 「まぁ、絶対じゃないけど、恵まれれば欲しいかな。」 「なるほど…。で、私はどうしたらいいの? 絵にかいた奥さんになって欲しいってこと?」 「家庭に入るタイプじゃないよね? もちろんそうしたいならそれでもいいけど…。 今まで通りの君でいいよ。 歌って、曲を作って、1日中ピアノを弾いて。もし音大に行きたいのならそうしたらいいし。 あ、みなのご飯はすごく美味しいから作ってもらえるなら嬉しいけど、毎回じゃなくていいし。レトルトでも冷凍食品でも、外食も…Uber Eatsもあるし(笑) 僕も家事は…掃除とかは出来るからやる。 料理も必要なら覚えるしやるよ。 まだ若いからこどもはすぐじゃなくてもいいし、もしこどもが産まれたら僕が育休取る。 とにかく僕は全力でサポートするつもりだよ?」 「ちょっと…具体的過ぎて…。」 「ごめん、半分妄想だね(苦笑) 因みに知ってるだろうけど、僕も両親いないし、親戚も両親の遺産使い込んでるの知ってから縁切ったからいないよ。」 「そっか…。 とりあえず囲いたいとかいうのじゃなくて安心した。」 「何それ?(苦笑) 君は自由だよ? あ、自由って言っても浮気はダメだけどね。 何なら弁護士先生に頼んで公正証書でも作る?っていうか、あの人変えない? …元カレでしょ…?」 「ガチガチのはいらないけど…浮気うんぬんとかの擦り合わせは必要かもね。 ん?元カレ?確かにそうだけど…私じゃなくて母の元カレだよ?」 「えーっ?!!! マジで? ヤバい…ずっと勘違いしてた。」 「だから光輝くんどっか抜けてるって…(苦笑)因みにあの人、私の生物学上の父親。」 「えっ?! はぁーっ?! 待って、待って!! え、いくつの時の子だよ…。」 みなの母も若かったが、彼女の後見人を務める弁護士はまだ30才前だったはずだ。 「だから何の記録も残してないんだよ。 でも最期はあの人に私のこと託した…。 ねぇ、もう少しだけ待ってね。 今日のこと踏まえて、ちゃんと返事する。」 そう言うとごちそうさまでした。と手を合わせた。

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