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第83話
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「紅葉起きて…。
早めに帰らないとバイオリンの練習する時間なくなるぞ。」
珍しく凪の方が早く起きて、キスで起こしてもらった紅葉はご機嫌だ。
昼過ぎからみっちり仕事なので、昨夜の余韻に浸る余裕のないくらい忙しい1日になりそうだ。
「腹減ってる?
軽く摘まめるやつ、ルームサービス頼もうか?」
「うん…!」
朝食を待つ間に身支度を整える。
着替えを済ませて鏡の前で紅葉の髪をセットしてあげる凪。
「あ、やべ…っ。」
「ん?
なんか変? 寝癖直らない?」
「違う…。 ここキスマ見えてる。
ってか、これ首開きすぎだろ…。
帰ったら着替えてね?」
「可愛いデザインなのに…。
はぁい。」
帰りがけにみなにフルーツタルトと平九郎には犬用のガムをお土産に購入して、自宅へと戻った。
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「お帰りー。」
「ただいまー。
みなちゃんありがとう!これタルトだよ!
…平九郎~っ!ただいま~っ!」
帰ってきて早々、平九郎を構い倒す紅葉。
せっかくセットした髪型も崩れ、シャツも毛だらけになるが気にならないらしい。
「平九郎は何の問題もなかったよ。
あ、朝の散歩の時に裏のおじいちゃんに会って…私を紅葉と見間違えたみたいでビックリしてた(笑)
珊瑚た会った時もビックリしたみたいだよ~!
何か用があるみたいで、帰ったら声かけてって言ってた。」
「了解…。ありがとな。助かった。」
「いーえ。ご飯ごちそうさま。
じゃあ、帰るね?
あ!凪の誕生日の食事会、バーベキューだって!!光輝くんから連絡きてたよー。」
「わぁーい!バーベキュー!
お外なら平九郎も行ける?」
「大丈夫なとこ押さえたみたい。
来週のイベントLIVEの翌日だって。仲良い人も声かけてって言ってた。」
「だいぶ参加者増えそうだな…(笑)」
凪は多分肉を焼く係りになりそうだなと苦笑しながらも、たまには大人数で盛り上がるのも良いかと楽しみにしている様子だ。
みなが帰宅し、紅葉はバイオリンの練習を、凪は家事と在宅ワークを片付けて、着替えなど支度を済ませたあと2人で大家の池波家に向かった。
用件を聞くと、ホームセンターで花を買いたいということだったので、翌日連れていく約束をして仕事へ向かった。
雑誌の写真撮影の仕事。
個別の撮影で、凪の撮影を見つめる紅葉は大好きオーラが止まらず、みなの専属スタッフのカナに怒られる始末…。
スタジオの角で漢字ドリルをやらされていたとか…。
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ご老人の朝は早い…。
朝イチからホームセンターの園芸売場でカートを押しているミュージシャンは自分くらいだろうと凪は思った。
大家のじいさん…池波が選んだ花や土、肥料を言われるがままにカートに積んでいくのが凪の役目だ。
つい先日まで『ご主人さま』だったのに、今ではじいさんと孫 の家来?付き人?…ただの荷物持ち兼運転手に降格だ…。
池波にくっついて見ていた紅葉も欲しくなったらしく、気が付けば初心者向けのものを選んでいる。
田舎に住んでいたのだから、土いじりくらいした方が気晴らしになるかと思い、買い物を手伝う。
紅葉の選んだのは朝顔で、小学生の頃育てたな…と懐かしい気持ちになる凪。
それからトマトの苗を見つけると目を輝かせてこれもいい?と聞いてきた。
食べれるまで育つのかと半信半疑だが、意外と初心者向けだと池波に言われたのでとにかくやってみることにした。
凪が会計別にして払おうとしたが、太っ腹な池波が今日の礼だとまとめて支払ってくれ、タクシー代より高いのではと思ったが、素直に受け取った。
荷物運びを終えて、早速植えるらしいので、平九郎も外に出して遊ばせて、凪は昼食を作る。
そのまま3人で昼食をとり、紅葉の奏でるバイオリンをえらく気に入った池波からは時々聞かせて欲しいと頼まれた。
豪華なホテルもいいが、こんな平和な日常も悪くないと改めて思ったのだった。
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