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第94話

※本編と違いNL話が主となります。 飛ばしてもらっても大丈夫です。 6/28 1820 Linksスタジオ練習日 光輝と誠一は事務所作業中でこれからスタジオに移動だ。 「あれ? まだ一緒に住んでないの?」 「みなの家には今カナが居候してるんだよ…」 誠一の質問に沈みながら光輝が答える。 なんでも今月から正社員になった区切りで、実家を離れて一人暮らしをしたいと言ったカナに両親は心配から反対したらしく、カナは実家を飛び出してみなのマンションに住み着いたのだ。 光輝が保証人になって部屋を借りる手もあるが、そうするとカナと両親、光輝とカナの両親の人間関係も悪化するためどうすることも出来ずに現在に至る…。 カナちゃん追い出すわけにも行かないし…と光輝は言った。 「え? じゃあ結局ナニもしてないの?」 「…してませんよ。仕事もヤマだしね…。」 「…もう光輝の家にみなちゃんを呼べば?」 「ピアノのない部屋に彼女は住まないよね…。ってか、俺の部屋今月で解約するし。」 「えっ?! じゃあどこに住むの?」 「しばらくここ(事務所)?」 「ここガスひいてないからお湯出ないよ。」 「…ホテルかなぁ…? ってか、忙しくて引っ越し準備もほとんど手付かずなんだよね…」 「さすがにちょっと同情する…。 最悪1週間くらいならうちに泊めてあげてもいーよ?」 「誠一くんっ!! ありがとう!! やっぱり持つべきものはタワマン住みのギタリストの相棒だよね!!」 「ははっ!! ツアー始まる前に新婚生活スタート出来るといいね?」 スタジオ前… 「あれ? 何してるのかな?」 誠一がスタジオの入り口付近が騒がしいことに気付いてよく見てみると、中心にはみなの姿。 「ファンの子?」 光輝がギターを抱え直しながらそう尋ねるが、雰囲気からしてちょっと違いそうだ。 「ちょっと、何してるのかな? 囲んだりしたらダメだよ。」 「あ、誠ちゃん。 ちょっとこれ持ってくれる? さっきから重くて…」 彼女の肩にはギターとベースが掛かっていて、それはさすがに重いだろうと、誠一はベースを預かった。 「カナちゃん、先中入ってていいよ。」 誠一が入り口の扉を指差してカナを先に行かせる。 「もういい? 聞きたいことがあるなら直接本人に聞いてよ。 ちょうど来たし。」 光輝を見つけるとみなはため息をついた。 みなを囲って質問攻めにしていた女の子たちはどうやら光輝の指輪の相手を探しているらしい。みなは揃いの指輪を持っているがつけていない。 「何? またその話? …こういうことになるから言いたくないんだよ。」 「そう言うと思った…。 なら付けなきゃいいのに…! 光輝くんの態度が煽ってるんだよ? こっちも余計なことに時間取られて迷惑っ!!」 「あの…もう練習行かない?」 険悪な2人を止めるように誠一がそう声をかけるが、みなは貴重な練習前から絡まれてイライラが治まらないらしい。 「ちょっと…このまま練習に出れる気分じゃないんだけど…?」 「いいから…!とりあえず中に入ろう…!君たちも帰って?」 「っ! 触らないで!」 光輝が手を取りエスコートしたのがイヤだったらしい。みなが光輝の手を払い除けると、その様子を見ていた恐らくは光輝のファンがキレて彼女に掴みかかった。 「あなたっ!! いい加減にしてよっ!! いっつもそーやって生意気なのよっ!!」 凶器とも言える長い爪をみなの顔に向けたー!! 喧嘩慣れしてるみなはスッと斜め後ろに避けたのだが、彼女を庇うように咄嗟に左手を差し出した光輝に直撃したらしい…ガリっという音に思わず顔をしかめる誠一。 「いって…っ!」 「え、何やってんの?」 「みなちゃん、言い方…(苦笑) 君ね、手出しちゃダメだよー。 光輝、大丈夫…?」 「あ、血が…っ!! ごめんなさいっ!! どうしよう…っ」 手を出した女の子が動揺して謝罪する。 「大丈夫だから…。」 「ねぇ、あんたこそどんな爪してんのっ? これ…! 光輝くんの爪、剥がれかけてるんだけど…!」 「えっ?!!」 「うわ、痛そう…。カナちゃん!救急セットっ!」 誠一が慌ててカナを探しに行く。 「これ…ギター弾けるの? ギタリストなんだから気をつけなよ。 さっきのなら私、フツーに避けれたよ?」 「なんか咄嗟に…(苦笑) えっと、君は怪我大丈夫?」 「あ、はい。 あの…私…っ!!どーしよ…!」 動揺して泣き出す女の子に「俺が手で止めようとしただけだから、偶然当たったんだし、気にしなくていいよ」と告げる光輝。 どこまで人が良いのかと呆れるみなはとりあえず光輝の指をタオルで巻いて止血している。 「でももう暴力は止めてね。 この子も口が悪くて…いろいろごめんね。 でも俺の一番大事な人だから…。 …もし傷付けたら許さない。二度目はないよ?」 そう言うとその場にいた子たちを解散させた。 「あーあ…。 またネットが荒れるよー。」 「ごめんね。 でももう大丈夫。 奥さんを守れたならこの怪我も名誉の負傷だよね。」 「だから私は避けたんだって(笑) それ、光輝くんの自爆だよ?」 そう言うと、スタジオへと入っていく2人…。 結局怪我でまともにギターを弾けない光輝の代わりにみながギターを弾いて(もちろん光輝のレベルでは弾けないが)、練習終わりには病院へ付き添った。 「血管も骨も大丈夫なので、化膿止めだけ出しておきますね。 良かったですね、利き手ではないとはいえ片手だと不便ですからね。 でも奥さんがいらっしゃるなら安心ですね。 いいなぁー、新婚さんかぁ~」 そう呟く医者に再びイラつくみな。 「だから整形外科はキライなんだよっ!!」 病院を出た彼女はそう言いながらも、光輝を連れてマンションへと帰って行った。

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