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第108話

1925 凪と紅葉は1週間ぶりに自宅に帰宅する。 玄関に入ってすぐ、凪は二足の男物の靴とリビングと階段に脱ぎ散らかる衣類を見つけてタメ息をついた。 紅葉は平九郎に夢中で気付いていないので、しばらく愛犬と戯れてから大家にお土産を渡しに行くように告げる。 「待って、この酒も。 あとじいさんがちゃんと夜もエアコンつけてるかチェックして。」 「分かった! 珊瑚は寝てるのかな? まぁ、いーや! あとでいっぱい話せるし…! 平ちゃんもいこー! 行ってきまーす!」 これで30~40分は帰って来ないので、凪は荷物を置くと足音を立てて階段を上がっていく。 「おいっ!珊瑚っ! 男連れ込むなって言っただろーがっ!」 容赦なく客間(一応紅葉の勉強部屋でもある)のドアを開ける。 「は…っ?」 ベッドで寝ている男はよく知った顔で凪は驚きを隠せない。 「ん? あ、凪おかえりー。 お疲れ! お邪魔してまーす。」 「えっ?! …翔くん…だよね?」 「はい…。翔くんですよ。」 「ナニがどーなってんの…?」 「ざっくり言うと…こーいうコトなんで。」 「見りゃあ分かるよ… えー…?! マジかよ…! ってか珊瑚!起きろよ。」 珊瑚の相手が身近すぎて驚きを通り越す凪。 そしてこの状況で平然と寝ている珊瑚を起こす。 「…腹減った。」 双子あるあるなのか、 情事後のセリフまで紅葉と似ている。 「あ、凪。 手持ち足りなくなって洗面所に隠してあったジェルとゴム勝手に使っちゃった。ごめんね?」 翔が悪びれることなくそう白状してくる。 「…どれだけヤってんだよ…。」 凪は頭を抱えた。 「あ、犬の世話はちゃんとしたよ?」 一応そこは主張する珊瑚。 俺にも飯をくれと訴える。 「とりあえず…2人ともシャワー浴びて。 あと落ちてるのも拾って!掃除! シーツも自分たちで洗濯してよ? 今、紅葉隣にいってるから30分以内ね。 話はそれから…。」 2000 「ただいまー! おじいちゃんお土産喜んでた! 凪くんの選んでくれたお酒好きなんだって。 お返しに素麺と野菜たくさんもらったよ! ふふ、凪くん見てーっ! これ僕の育てたトマト!」 元気いっぱい笑顔で帰宅した紅葉は行く時より荷物が増えている。 精神的疲労が満載な凪は紅葉を抱き締める。 「お帰り、俺の癒し…! これ早速夕飯に出来るな。」 「あ、トマトが…っ!!」 ぎゅっと抱き締められて抱えたトマトが潰れそうになり、慌てる紅葉。 凪が苦笑しながら紅葉を解放したところでバスルームから珊瑚が出てきた。 「あー腹減った…っ! おっ!うまそーじゃん!」 「あーっ!! 僕のトマトっ!!」 「けっこう甘い…。」 「ひどいよ珊瑚ーっ!!」 また珊瑚が紅葉のものを勝手に食べてしまい、恒例の兄弟喧嘩が始まったらしい。 「前もそんな光景見たなぁ…(笑)」 翔もバスルームから出てきて、タオルで頭を拭いている。 「翔くん?」 「はい。こんばんはー、紅葉くん。 お邪魔してるよー!」 「こんばんはっ! 髪の毛切ったの? 短いのもカッコイイね! あとなんだか平ちゃんみたいだね!」 「やっぱり?(苦笑) あ、凪ー、ビールある? ついでに俺のメシもある?」 「どーぞ。 3人分も4人分も変わらないから別にいーよ。 飲みながらでいいから手伝ってね。」 「了解ー。」 「僕も手伝う?」 紅葉が凪に聞くが、久々の兄弟再会なので大丈夫だと告げた。 「手洗ったらジュース飲んでいいから、向こうで珊瑚と話してな。仲良くな?」 「ありがとうっ。」 ナチュラルにキスを交わす2人に、翔が羨ましそうな視線を投げる。 「なんでそんなにラブラブなの?」 「え? フツーでしょ? むしろ付き合いたてならそっちの方がラブラブなんじゃないの?」 「…そーだよなー。 俺ら身体からだし、逆に難しいってか、珊瑚、あの性格だし…。」 「内容がヘビー過ぎる…(苦笑)」 翔の相手であるはずの珊瑚は彼を見ることもなくソファーに座って、勝手にお土産のお菓子を漁っている。 「珊瑚っ! ご飯の前はお菓子食べたらダメなんだよ!」 「だってもう腹減って死にそうなんだもん。 …これ旨い。」 「でしょっ! カステラのラスク!サイコーだよね。」 「これも旨い。紅葉まんじゅう…? お前、共食いじゃん!(笑)」 ケタケタと笑う珊瑚に異変を感じる紅葉。 「珊瑚っ?!!! く、口の中に何か入ってるっ!!!」 「何? あー、舌ピ?」 「舌ピ…? ピアスなの? えっ?! 口の中だよ?! 大変っ! えーっ痛そう…!! ちょっと見せてっ!!」 「ちょっと…!今菓子食ってるって…!!(笑)」 「凪くん! 珊瑚が不良になっちゃったー!!」 珊瑚の口の中を覗き込みどうしようー!と言う紅葉の言動に笑いながら凪は手早く夕食を作った。

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