110 / 144

第109話

(108話を半分に分けました。) 4人で座ってもゆとりのあるダイニングに夏らしいメニューの夕食が並ぶ。 食器は数がなくてバラバラだが、素麺に合わせて冷しゃぶと夏野菜のソース(紅葉の育てたトマトも入っている)、茄子の揚げ浸し、チャーシュー(これはお土産で購入した物)、そして安定の肉じゃが 久しぶりの日本食に珊瑚の箸が進む。 「うまっ!! これを食いに日本に帰ってきたんだよ。」 「え、俺に会いにじゃなかったの?」 「…それは違う…。 今回は…蛍は終わったよね? 日本の夏祭り撮りたいんだけど、蒸し暑すぎてやる気が出ない。むしろカメラも壊れる気がする。」 珊瑚も日本の夏の暑さにバテ気味のようだ。 凪は一応スケジュールを伝える。 「俺ら東京のフェスが終わったら京都行くけど一緒に行く?大阪と神戸、名古屋まわるけど、京都に実家があるからお前は残ってもいいし。」 「了解。とりあえず行く。」 「えっ?! 俺と一緒にいよーよ! なんで日本にいて遠距離になるのっ?!」 「うるせー。 俺は遊びに来てるんじゃねーんだよ。 仕事させろ。」 「俺が養ってあげるから日本にいる間は休もう?デートしてイチャイチャして過ごそうよー。」 「それじゃあヒモじゃねーか…。」 「…?」 紅葉が翔と珊瑚のやり取りを見てさすがに首を傾げる。 「あ!紅葉くん!ごめんね、言うの遅くなったけど、俺と珊瑚と付き合うことになったんだ! よろしくね。」 「そーなのっ?!」 「俺…付き合うって返事したっけ…?」 「そんな…っ!! いや、完全に付き合う流れだよねっ? 合格点くれたし、 あれだけ愛し合っておいてそれはないって!!」 「愛し合…っ!! 珊瑚っ! 恋人じゃない人とそーいうことしたらダメなんだよっ? そーいえばイタリアのピザ屋さんとはお別れしたの?」 「はいっ?!」 「いつの話…? ってか、誰だっけそれ?」 恋多き珊瑚に不安が募る翔… 油断したら自分もあっという間に過去の男にされてしまいそうだ。 「翔くんも珊瑚も付き合うならちゃんと真面目に向き合いなよ? 特に翔くんはいい大人なんだからさー! 珊瑚も茶化してばっかで何でも許される訳じゃないからな?」 凪に説教されて2人は見つめ合う…。 「…仕事のこと…尊重する。 大事にするんで付き合って下さい。」 「…いーよ。」 翔が改めてそう告げると珊瑚は少しうつむきながらもコクンと頷いて返事をした。 「わぁ~!! おめでとうーっ! 乾杯しよー!」 麦茶のグラスでかんぱーい!と嬉しそうに号令をかける紅葉。 凪も新しくビールを取り出すと翔に勧める。 「いろいろ大変そうだけど、頑張って。」 「ありがとうー!」 凪も紅葉も2人の門出を笑顔で祝った。

ともだちにシェアしよう!