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第110話
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強行スケジュールだが、翔の深夜ラジオの生放送が終わってからそのまま千葉の海岸へ向かうことになった4人と平九郎。
凪は犬もいるし、砂で汚れるだろうから自分の車で行くと言ったのだが、"高速代節約して珊瑚のと紅葉くんの弟たちに何か買おう!"という翔の提案に乗り、彼の運転で夜明け前に出発したのだ。
珊瑚は先日の交際宣言からてっきり翔の家に転がり込むのかと思ったこだが、紅葉と話があるらしく、何やら難しい顔をしてドイツ語で話しているので実家の家族の話かと察した凪はなるべく2人をそっとしておいた。
珊瑚が持ってきてくれたドイツ土産は紅葉の好きなお菓子とキレイな装飾の写真立て、幼少期のアルバム、そして弟たちからの手紙だった。
「幸ちゃんからもあるっ!
すごい!字が書けるようになったのー?」
末の妹(4才)からの手紙に感動する紅葉。
「何て書いてあるんだ?」
「…分かんないっ!
でもハートがあるね!
これは"LOVE"かな?
女の子らしいねー!!」
5人の中では一番年上のアビー(18才)からは日本語の手紙が入っていた。
「すごい…!
僕より字が上手…っ!!」
賢いと聞いていたが、きちんと勉強しているようだ。
手紙の内容は金銭的援助のお礼と日本語の先生になりたいので、何か日本語の本を送って欲しい旨、弟たちに新学期用の文房具を揃えてもらえたら助かるという内容だった。
「そっか、9月から新学期か…。」
「日本の文房具使いやすいからプレゼントしたら喜ぶね!!よしっ!買いに行かなきゃ~!!」
すっかり兄の顔になった紅葉は買うものをリストにしていく。
珊瑚と紅葉の幼少期のアルバムは凪と翔を大いに喜ばせた。
「マジで天使っ!W天使っ!!」
翔の興奮がスゴかったらしい。
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無事に海岸に着き、珊瑚は日の出を撮影するべく準備している。
凪はまだ眠そうな平九郎と紅葉を連れて珊瑚の邪魔にならない場所に移動する。
「ほら、海だぞ?」
「うん……。」
「紅葉…、起きて! 」
「…ちゅーしてくれたら起きるよ?」
紅葉のリクエストに苦笑し、周りを見渡せば少し離れた場所にサーファーはいるが、彼等は波に夢中だし、他に人は見当たらないので凪は素早く恋人に口付ける。
「ん…っ! ホントにしてくれた…っ!」
「起きた?」
「うん!
平九郎、海好き?
お水怖くないかな?」
「確か泳げる犬種だったと思うけど…!」
「スゴいね!
僕が溺れたら助けてねっ!」
平九郎は砂の感触や潮の匂いに反応しながら2人を見上げる。
さすがに泳ぎはしないが、今日は着替えも水も持ってきているので、またスッ転んで海水に浸かっても、砂まみれになっても大丈夫だ。
もちろん足元はお揃いのサンダル。
キレイだが、既に夏の暑さを感じる朝日を2人で眺める。
しばらくするとまたキレイな貝殻を拾いながら珊瑚たちの方へ戻る。
「珊瑚ー!
もう終わったのー?」
「終わり。潮にやられるから撤収して俺は寝る。」
「一緒に遊ぼうよー!」
紅葉が誘うが、短時間に相当集中したらしい珊瑚はお疲れらしく、車へ戻っていく。
「タバコ切れたからコンビニ行って買ってくるね。ついでに何か買う?」
翔が買い出しを申し出てくれる。
「朝飯なら一応おにぎり持ってきたけど…。」
凪が答える。
「わー!いいねー!
じゃあコーヒーとか買ってくるね。」
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