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第114話
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紅葉をオケの練習 に送り、凪は一度帰宅。
夜実家へ向けて出発するので、一旦シャワーを浴びて準備をしている。
今日のフェスも暑さが酷く、体力的にキツかったが、今回はちゃんとドリンクも用意してあり、ステージ脇や客席にはミストシャワーもあり、なんとか乗り切った。
今回は巨大スクリーンでメンバー紹介をバーン!と入れてからの登場し、Linksの旗をステージに掲げてパフォーマンスを行った。
LIVEの反応もまずまずである。
一度機材を持ち帰り、全てをチェックしてから関西方面のツアーに備える。
「あー、くそっ!
なんだよ…ここ…!」
どうもバランスが上手くいかない箇所があり、原因が分からず苛立つ凪。
その時、珊瑚が帰宅した。
凪は一度作業の手を止めて出迎える。
「お帰り。デート楽しかった?」
「寿司は旨かった。
やっぱり魚は眺めるより食べるべきだな!」
「…?よく分からないけど、楽しかったみたいだな。」
そこへタクシーの支払いを終えたらしい翔も顔を出す。
「凪お疲れ!仕事の時間までビミョーに空いたからあがっていい?」
「救世主だよ、翔くん!
ちょっと見て欲しいんだけど…!」
「何ー?」
凪と翔が防音部屋へ行ってしまったので、珊瑚は平九郎を一撫ですると、買ってもらったお土産一式を持って廊下へ移動する。
その姿を見付けて翔は声をかけた。
「珊瑚っ!」
「ちょっと部屋で片付けと作業してる。」
「…あとで行くね?」
頷いて階段を上がる。
凪のドラムを見た翔はある指摘をした。
「野外フェスで使ったんでしょ?
…暑さでビスが歪んだんじゃね?」
「うそだろ?!」
「ちょっと外してみなよ。
…ほら…!」
「マジか…。どんだけ暑かったんだよ。」
「上手く組み立てればこれでも使えるけど…、使いにくいだろうから交換した方がいいよ。
経年劣化もあるだろうし。」
「そうする…。
良かった、まだLIVEまで数日あるから間に合うわ。」
「偉いね、ちゃんとチェックしてるんだ。」
「翔くんが教えたんでしょ。面倒でもちゃんも一回一回チェックしろって。」
お陰で助かった、と凪はパーツの写真を撮ってスタッフにお使いを頼むことにする。
そのままチェックと荷造りを続ける凪を残して翔は2階の珊瑚の部屋へ。
「あ、平九郎用の鞄、客間のクローゼットにしまったんだった…!」
今回は京都でもLIVEがあり、その前に凪は実家に2泊する予定だ。
もちろん紅葉と平九郎、そして珊瑚も連れて。
母の早苗はのんびりしていきなさいと言ってくれているが、先月、紅葉と平九郎を預けたのお礼代わりに少しは働かないとと、凪は思っている。
階段を上がり、珊瑚のいる部屋のドアをノックしようとするが中からガタガタっと規則的な物音が聞こえてため息を吐いた。
「この家でヤるなって言ったのに…っ!」
しばらく離れることになるカップルにはその要求は難しかったようだ。
仕方なく向かいの自室で音楽をかけて束の間の仮眠をとることにする。
LIVEの疲れからかすぐに睡魔が襲う。
18:38
凪が寝ている間に翔は仕事で帰ったらしく、入れ替わるように帰宅した紅葉に起こされる。
「お帰り…。」
「ただいまーっ!
お洋服出しておいてくれたの?」
「あぁ…、それで大丈夫だったらスーツケース入れて?」
「うん! ありがとう。」
キスをして、紅葉を抱き寄せる凪だったが…
恋人からストップをかけられる。
「シャワーまだなんだ…。
ごめんね、ベタベタで凪くんまで汚れちゃう…!
今、珊瑚がシャワー入ってて…!」
時間大丈夫?と心配する紅葉。
「全然大丈夫…。
腹減った?
もう冷蔵庫の中身整理しちゃったからさ、SAでメシ食う感じでいい?
平九郎の散歩とか、珊瑚も途中で写真撮りたいって言うし…早いけど、支度出来たら出ようか。」
「うん。
一応平ちゃんのトイレだけ今行ってきちゃうね。ごはんもあげちゃおうかな…。」
「了解。じゃあ俺、ドラムとベース機材車乗せて光輝のとこ預けてくる。」
今回は機材を専門業者に運んでもらうのでチェックを終えて一度光輝に預ける。
もちろん紅葉のヴァイオリンは肌身離さず持って移動するが…
「すぐ帰ってくるから一緒に行こ?」
「…こっちもすぐ終わるけど?」
行き帰りと楽器の移動合わせても光輝とみなのマンションまで30分程の距離だ。
「だって…しばらく2人きりになれないし…っ!」
「何、カワイイ。
部屋別にしてもらうから今夜の移動だけじゃん?」
「それでも…! …珊瑚デートだったんだって!
僕たちも30分、ドライブデートしよ?」
「ふっ…、喜んで…。」
凪は笑顔を見せて紅葉に口付けた。
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