116 / 144

第115話

2000 高速に乗り、お腹がすいたという紅葉のリクエストで有名なSAに入る。 珊瑚は昼が遅かった上に寿司をたらふく食べてきたようでまだいらないと言うので、平九郎を預けて2人でいろいろ買って、ちょっと蒸し暑いが外で食べることに。 途中、珊瑚と平九郎も合流してみんなでおかずをつつきながら夕食を終える。 「そーいえば、お前今回食費とか払わなくていいから。」 「何で?少しは出すよ。」 「翔くんが自分は仕事だからお前に何か旨いもん食わせてくれって2万も寄越したからさー。 とりあえずガソリン代と高速代、食費で半分もらった。 あとはお前に渡すから好きに使いなよ。」 「えー!なんか…。」 戸惑う珊瑚に紅葉が助言する 「翔くんにお土産買って行ったらいいんじゃない?」 「そーそー。 もし京都に残るなら新幹線代の足しにしてもいいし。」 「マジでいーのかな…。 ってか、お前らがこの前くれた金もカナダ行く直前で気付いたから余ってるんだけど…! ってか、あんな大金黙って隠すなよ? 危うく申告漏れになるところだったし!」 「そっか!ごめんー!」 紅葉は笑いながらも謝り、お金が余るなら弟たちに京都のお土産を買えばいいと言う。 「金のことが気になるならさ、いつか俺たちがドイツに行った時はお前が奢ってよ。 それまでに一流のカメラマンになって稼ぎまくってね!」 凪の言葉に珊瑚は分かったよ!と言いなんとか納得したようだ。 凪が平九郎を引き受けると珊瑚と紅葉は出発前にトイレに寄る。 2人は個々でも目立つ容姿だが、一緒だとより注目を浴びる。 紅葉が手を洗って入口付近で珊瑚を待っていると一人の中年の男が近付いた。 「どこに行くの?観光かな? 向こうでジュースでも買ってあげようか?」 「っ」 紅葉が固まっていると、すぐに珊瑚がその男の手を捻り上げる。 「俺のおとーとに何してんの?」 ほぼ同じ身長の珊瑚に睨まれてすぐに退散する男。 紅葉はホッと息を吐いた。 「ありがと。」 「お前相変わらず変態ホイホイだな…。 凪が一緒にいろっつー意味がよく分かった。 ってか、なんで遠い方の手洗い場に行くんだよ。」 「こっちじゃなかった?」 「本気で迷子になるぞ…。」 3人分の飲み物とガムやちょっとしたお菓子も買って西に向けて走り始めると、紅葉と平九郎は早々に眠りについた。 「…こどもか(苦笑)」 「お前もこどもだろ。寝ろよ。」 「じゃー次の休憩で起こして。 俺国際免許持ってるから運転代わるよ。」 「マジで? 助かる! でもそれ早く言って(笑)」 凪はBGMの音楽の音量を落として、隣で眠る恋人の顔を横目に夜の高速を走り続けた。 途中珊瑚と運転を交代して、凪も仮眠をとる。 下道に降りて夜明けを撮影する珊瑚。 結局紅葉は一度も起きることなく、早朝凪の実家に到着した。 「カミングアウトしてるんだっけ?」 「おー。」 珊瑚の問いに答える凪はまだ眠そうだ。 「ごめんね!僕だけずっと寝ちゃって…!」 「いーよ。フェスにオケの練習もあって疲れてたんだろ。」 車を降りてフロントに顔を出すとすぐに母親の早苗がやってきた。 「おはよ…。」 欠伸を噛み締める凪に苦笑する早苗。 「凪、紅葉くん、お帰りなさい。 お疲れ様。 紅葉くん、九州のお土産たくさん送ってくれてありがとう。 …そちらが珊瑚くん?初めまして凪の母です。 ゆっくりして行ってね。」 「初めまして、マダム。 お世話になります。 素敵な旅館ですね、何年くらい前の建築ですか?」 珊瑚の外面の良さに顔がひきつる凪… 「あいつ敬語使えたのか…」 早苗とにこやかに話をしている。 「京都は初めて? 思ったより背が高いのね。」 早苗の一言に固まる紅葉…。 「母さんそれ禁句だから…。」 「あ、紅葉くん…! 大丈夫よ!まだ若いからこれから伸びるわ!」 いや、もうそんなに伸びないだろう…と凪は思いつつ荷物を部屋に運ぶ。 平九郎を連れて裏から母屋へ抜けると中庭にプールが用意してあり驚く凪と喜ぶ紅葉。 「わぁーい!プールだぁ!」 「それお父さんからよ。 暑いから平九郎くんと紅葉くんにって。 張り切っちゃって…! 花火もスイカも買ってあるって言ってたわ。」 「小学生じゃないんだから…(苦笑)」 凪はそう言うが紅葉も平九郎も嬉しそうだ。 「凪たちの隣が珊瑚くんのお部屋ね。 ちょっと狭いかもだけどエアコンもあるから使ってね。」 「ありがとうございます。」 綺麗な笑顔でお礼を言う珊瑚はホストさながらだ。 「じゃー、厨房手伝うよ。」 早速働く気の凪に早苗は首を横に振った。 「少し休みなさい、疲れた顔してるわ。 大丈夫そうなら賄い作りからお願いするわね。」 それならお昼からなので十分仮眠もとれる。 「…下っ端に格下げされてる…(苦笑)」 「夏休みをあげたから下の子がいないのよ。」 「了解ー。」 「僕元気だからお手伝いするっ!」 張り切る紅葉に早苗はまた鯉の餌やりを頼み、自身も仕事へ戻るという。 「あ、母さん。 珊瑚この街の写真撮りたいんだって。 京小物の店とか…撮影交渉出来る?」 「任せておいて! あとで私とお出掛けしましょう。 紅葉くんも一緒に。またあの氷屋さんに行きましょう。」 「うん! 今度は僕がご馳走するよ!」 「楽しみにしてるわ。」 またあとでねと言って、早苗は館内へ戻って行った。

ともだちにシェアしよう!