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第116話

シャワーを浴びて仮眠をとる凪。 おやすみのキスをおくる紅葉は途中でお腹が鳴ってしまい、凪が寝付くと厨房に朝ごはんをもらいに行った。 多めにもらったおにぎりと自販機で買った牛乳のパック(背を伸ばしたいので毎朝飲んでいる)を持って珊瑚の部屋を覗くと、まだ起きていたので食べる?と聞いた。 「食べるけどさ…、組み合わせおかしいから(笑)おにぎりにミルクはない。俺は水でいい。」 「そう? じゃあ僕が2つ飲むよ。」 食べ終わったら寝るという珊瑚の部屋を出て、平九郎と中庭を散歩する。 途中で凪の義父と会い、挨拶をし、プールのお礼を伝える。 平九郎を撫で回す義父。 「近所で子犬が産まれたんだよ! 平ちゃんと同じ犬種の!見たくない?」 「見たいーっ!」 写真を見せてもらい、2人で可愛い可愛いと盛り上がる。 「一匹譲ってもらえないか今お願いしてるところなんだよ。」 「ここのお家にもわんこが来るのっ?! 素敵だねー!」 「早苗さん次第だから交渉中なんだ。 紅葉くん、見方になってくれるよね?」 「わんちゃん来たら抱っこしていい?」 「もちろん!」 「ふふっ…! ちっちゃいもふもふっ!」 「最高だよね! 平ちゃんと仲良く一緒に遊べるといいなぁー!」 妙に気が合う2人だ。 暑くなると早速平九郎とプールで遊んで、昼前に起きた凪に賄いを作ってもらう。 午後も片付けや掃除を手伝うという凪に紅葉は自分も一緒にと申し出るが、厨房は暑いため早苗の相手をと頼まれる。 昼下がり、まだ暑さは厳しいが、夕方からはまた忙しくなるため街へ出る3人。 かき氷を食べて涼をとると、身体の火照りも少しおさまる。 途中席を外した珊瑚は戻ってくると、珍しくボーっとしているので熱中症を心配したが… 「なんか、写真の…新人コンクール…ダメ元で出したら二次予選通ったって。」 「ホントに?! すごいね!!」 「良かったわね。」 「お祝いしないと! あ、翔くんに電話してきなよ!」 「いや、仕事って言ってた気がするからあとにする…。 本選用に写真決めて送らないと…。」 プレッシャーだなと気落ちする珊瑚に早苗は大丈夫よ、と声をかけた。 「期限はまだ先なんでしょう? 写真はこれから撮るの? もう決めてる?」 「いや…まさか通ると思ってなかったから何にも考えてない…。」 外面を忘れ、素のままで答える珊瑚。 「せっかく京都に来たんだから、今は目の前の撮りたいものを撮りなさい。 みんなで美味しい物でも食べて、温泉につかってのんびりしていくといいわ。 心と身体が癒されれば、何を選ぶのかはその時になったらちゃんと答えが出るものよ。」 珊瑚は早苗の言葉をゆっくりと自分の心で受け止め、頷いた。 その後は早苗の馴染みの着物店や京小物の店を巡っていく。 珊瑚が撮影をしている間、早苗と紅葉は弟たちへのお土産を選んだ。 早苗は甚平を人数分買ってくれて、更に紅葉にも浴衣を仕立てているのだと言う。 「良かった! サイズが分からなかったから…! ようやく買えたわ!…ええ、まとめてうちに届けて下さいな。 珊瑚くんはどういう柄がいいかしら?」 「俺はいいですよ。高価なものだし…!」 遠慮する珊瑚に負けて早苗は帽子と手拭いに扇子を購入した。 「京都も暑いから…。 外に出るときには持ち歩いてね。」 「珊瑚、その帽子似合うよー!」 食べ物屋さんの通りでは、有名な生八つ橋だけでなく、漬物やお茶にも興味を示す珊瑚。 早苗の友人の経営する日本茶の店で説明を受けながら撮影をさせてもらう。 「綺麗な外人さんね。日本語お上手…。 ご兄弟?」 「そうなの。ふふ、2人とも美人でしょう?」 「息子さんも帰ってきてるの?」 「ええ。凪は手伝いをしてくれてて…私が2人とも借りてきちゃったわ。 この子が紅葉くん…うちの子なの。 もー、珊瑚くんもうちの子にしたいわ。」 「珊瑚、凪くんの先輩と付き合ってるの…。」 「あらっ! それは残念…!」 「紅葉!余計なこと喋んな。」 「今度は恋人といらっしゃいな。」 お茶屋さんにもそう言われて珊瑚は対応に困る。 紅葉は呑気に試飲のお茶をすすっている。 「お母さん、このお茶美味しいから大家のおじいちゃんにお土産にしたいな。」 「それはいいわね。 …こちらお包みでお願い。」 「ありがとうございます。 温かいのでも冷たくても美味しいですよ。」 そんな調子でけっこうな量の買い物(と、撮影)を済ませて帰宅する。 「お母さん暑い中ありがとう。 僕がお手伝いするから休んでて!」 「ありがとう…。 お父さんと義くんが働いてくれるって言うから私も少し休むわ。あなたたちも休みなさい。」 凪の義弟の義からお茶菓子をもらってそれぞれ部屋で休むことにした。

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