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第117話※R18

「凪くんっ!」 紅葉は数時間振りの再会に大喜びで荷物を持ったまま飛び付く。 「おっと…! 熱烈な歓迎だな…。 買い物楽しかった?」 「うん。」 「とりあえず荷物置こうか…!」 ビミョーに紙袋が当たるんだよね、と苦笑する凪に紅葉はごめん!と謝る。 改めてキスをして、紅葉にシャワーを浴びるように言う。 暑い中歩いて汗でベタベタだったので、素直に従い、早苗が用意してくれた作務衣に着替えてお茶菓子を食べると、凪が寝ていた布団に押し倒される。 「ん、ダメだよ…っ! 珊瑚が隣にいるし…、鍵かかんないから…!」 「なるべく声我慢しててね。」 「や…っ! ぁ、だって…!! 気持ち、いいから…それは無理…!」 「(笑)じゃあ聞かせたらいいよ。」 「あ、やだっ。 はずかしーよっ! あっ、凪く、ん。 待って、一回止まって…! ん、せめて夜にしよ…っ?」 「あー、ごめん。 夜飲みに行ってきてもいい? 中学の時の友達とさ、さっき会って。 酒屋の息子なんだけど、地元戻ってきてたみたいで、さっき配達にきて偶然会った(笑)」 「…そうなの? いい、けど…! え、さみしいな。」 「だよね…。 だから…しよ…?」 「ん…。お布団汚さないようにして。 お洗濯に出すのホントに恥ずかしいよ。」 先月来た時も洗濯機を借りようと思ってた紅葉に早苗が一緒に洗濯するから溜めずに出しなさいと言ってくれて、お言葉に甘えたので今更別でとは言えない。 「分かってる。 可愛いことばっか気にして…! もっと他に言うことないの? 恋人置いて飲みに行くのか、とか…」 「…あとで珊瑚と温泉入ってもいい?」 交換条件なのだろう、凪は兄弟なら…とOKする。 「いいよ…。ただし貸し切りの方だけね。 あとは?」 「…好き。」 「ふっ…。 俺も。 好き。」 「ん…。 あ…っ! そこ…やっ!」 夕方と言ってもまだ日も高い中、2人の影が重なった。 夜… 凪は夕食の準備に追われる厨房の仕事が一段落すると友人の迎えで出掛けて行った。 紅葉は平九郎と部屋から彼を見送ってしばらくゴロゴロしながら暇を潰す。 珊瑚と一緒に夕食を食べる。 お祝いだからと賄いの他にすき焼きとデザートもつけてもらい、大満足の2人は宴会場の後片付けを手伝い、一生懸命働いた。 義から露天風呂に入っておいでよ、と貸切風呂の鍵をもらい、紅葉はわくわくしながら支度をして向かう。 「暑い…。 なんで夏にわざわざ風呂に入るわけ?」 基本的にシャワー派の珊瑚には真夏の温泉の良さが伝わらず、紅葉はなんとか説得して湯船に入れた。 「この温泉に浸かるとお肌がすべすべになるよ!お星さまも見えるし!」 「別にどーでもいーけど… 俺、先に出てもいい?」 「ダメだよっ! 僕が溺れたらどうするの?! ここ座ってたら?暑くないよ。」 高さのある石に珊瑚を座らせて、紅葉はお湯の感触を楽しむ。 しばらくして、紅葉も半身浴になるように階段部分に座る。 「…凪はまともな男だと思ったけど、やっぱり変態だな…。」 「えっ? 何がっ?!」 突然の悪口に驚く紅葉。 珊瑚は黙って紅葉の太もも辺りを指差す。 「あいつ脚フェチなの? 身体洗ってる時も思ったけど、キスマークヤバい。」 温泉で身体が温まり、痕がより目立つ… 紅葉は赤面して珊瑚と距離を取り、両手で脚の付け根を隠す。 「今更だろ…もう見たし。 さっきヤってただろ?」 「っ!! 気付いた…?」 「お前声デカイもん(笑)」 「えっ?!そうなの…? あの、ごめん…。お願い、今すぐ忘れてっ!」 「はいはい。 心配しなくてもすぐロビーに移動したからほとんど聞いてないって。 ピアノ触ってたらちょうどチェックインの時間になってさ。スペイン人が来たから通訳してた。…けっこう好みの男だったな…」 「珊瑚すごいね。 でも浮気はダメだよ! 通訳かぁ…。僕ももっとお手伝い出来ることがあったら良かったのに…。」 「でも彼氏の家族と随分馴染んでるじゃん? お母さんとか呼んでるのビックリした。」 「…僕、先月ちょっといろいろあって数日ここで休ませてもらって。 凪くんのお母さんがずっと面倒見てくれて…さっきもだけど、僕のこと"うちの子"って言ってくれたから…変に気を遣うの止めたんだ。」 「そっか…。 確かにちょっと俺たちの母さんにも似てるかも。裏でスタッフに怒ってる時とか…(笑)」 母さんが生きてたらあんな感じかな? 僕たちのお母さんの方が怖かったよ、と笑い合いながら2人は湯船を上がった。

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