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第118話※微R18
2人はお風呂上がりに会った義父にアイスを買ってもらって、部屋へ戻った。
「凪くん帰ってくるまで珊瑚の部屋にいていい?」
「どーぞ。」
平九郎はもう寝ていたので、兄弟2人きりでテレビを眺めながらアイスを食べる。
「そういえばクラウドファンディング、目標額達成したから終了した。」
「えっ、もう?!」
聞けば多くの人が賛同してくれたようで、動物園と遊園地両方に連れて行けそうだと珊瑚は言う。
「余ったら寄付する予定。」
投資してくれた人へのお礼に2人のヴァイオリン演奏動画を2曲ダウンロード出来るようにしてあり、みなもピアノ演奏の動画を提供してくれた。
彼女は今、話題のドラマで主人公のピアノ演奏の代奏をしているので話題性もあり、多くの人が注目している。
演奏技術もだが、使っているピアノが彼女の母親のピアノなので余計にだ。
(もちろん、この仕事をとってきたのは光輝である。)
他にも珊瑚の写真も何点かポストカードとして印刷出来るようにし、紅葉は落書きとも言える絵をアップしてある。
「嬉しい…!みんな喜ぶよ!
ホントにありがたい~!」
「そうだな…。」
「僕行けないけど、みんなのことよろしくね。」
「おー、任せとけ。」
歯を磨いて布団の上で寛いでいる紅葉はうとうとし始める。
「おい、ここで寝るなよ?」
「ふぁい…。」
「お前がここで寝たら、俺が凪と一緒に寝るよ?」
その一言で覚醒した紅葉はダメ!と飛び起きる。
「冗談だって(笑)
ホントにあいつのこと好きだねー。
毎日一緒にいるのに飽きないの?」
「それはないよ。
一緒にいる時も大好きだけど、今日なんか全然一緒にいれなかったし…。
あぁ、割烹服姿の凪くんめちゃくちゃカッコ良かったぁ!
明日も写真撮らせて貰わないと!
あ、えっと…、離れてる時間も会いたい気持ちが高まってもっと好きになるよね?」
「そうか…?」
「そうだよっ!!
早く翔くんに会いたいでしょ?」
「…まだ…。だって1日目だし。
あ、俺、ここ残って撮影してく。
先帰ってて。」
「えっ?!
そっか…。」
「うん。
観光地は行かなくてもいいやと思ってたけど、さっきのスペイン人に聞いたら目的地までの道とかけっこう穴場的なとこもあるみたいで…
せっかくだから明日から少しずつ見てくる。」
「いい写真撮れるといいね。
…来週、翔くん都内でLIVEあるから、出来たら出国前に見てあげてね。」
「ん。もうあいつから200回くらい言われてる(笑)」
「なんだ、珊瑚もラブラブだね!」
「そう?
いまいち付き合うって感覚慣れてなくて…。
ちゃんとした恋愛なんてほとんどしてないからさー。
まぁ、ヤることはヤるけどね。」
「えっ?!」
「何? 紅葉たちもしてるじゃん。」
「だって…付き合ったばっかりだよね…?」
「変? むしろ付き合う前からだけど…」
「なんとっ!!」
「お前は本当に真面目だな。
結局、凪以外とは経験ないの?」
「あるわけないよっ!! 凪くんが初めて好きになった人で、初めての恋人だもん…!」
「ある意味すげー貴重だな…。」
「…怖くないの?
あの、ごめんね。軽視してるわけじゃなくて…。
僕、いろいろあったって言ったでしょ?
男の人にしつこくされて…まだ凪くん以外の人…珊瑚とお父さんは大丈夫だけど、義くんとか翔くんでも2人だとちょっと怖いんだ…。」
凪が翔や義に紅葉と話す時は距離を取るように伝えているのだろう、珊瑚が見る限り、海でもパーティーでもそしてここでも紅葉は落ち着いている。
「そっか…。
本気で惚れたやつが出来ると臆病になるって言うし、あんまり気にすんな。
俺は…今までは平気だったけど、あいつとはこれからちゃんと向き合うつもりだし…!
浮気もしないよ。…多分。」
「多分?(苦笑)
うん。
幸せになってね、珊瑚。」
048
隣の部屋の物音で凪の帰宅を悟った珊瑚は部屋の前まで行き、少し襖を開けるとおかえりと告げた。
「なんだ、お前 か…。」
「なんだ、って…(苦笑)
紅葉ならこっちの部屋で寝てる。
…夜遊びにしては早いお帰りだな。」
「夜遊びってか、ただの飲み会だよ。」
バカ話してただけでやましいことは一切ないと凪は笑うと、珊瑚の部屋へ恋人を迎えに行く。
「一応、さっきまで起きてたんだけど…」
凪を待っていたのだろうが、今はぐっすりと眠る紅葉。
「俺まだ起きてるし、ここに置いといてもいいよ?」
「いや、運ぶよ。作業するなら気になるでしょ?」
「飲んでるのに平気?」
「ふらつく程飲んでないって。途中でタクシー降りて酔い冷ましながら歩いてきたし。」
紅葉の前髪を指ではらう凪はにこやかに恋人の寝顔を見つめる。
「そっか…。
あ、俺、撮影で残りたいんだけど…ここ泊まってて平気?」
「了解。伝えとく。
帰り、名古屋来れそうなら平九郎と義くんの車で来て合流ね。もっと残るなら新幹線で…とりあえず一回家に帰って来いよ!
ここの宿代とかは気にしなくていいから。
メシいらない時は厨房に言っといて。
まぁ、もし手が空いたら時々手伝ってやってよ。お前何でも出来るって評判だからみんな喜ぶよ。」
「分かった。ありがとう。俺も助かる…。」
「お守りありがとな。頑張れよー。」
凪は紅葉を横抱きにすると自室へと戻った。
珊瑚は引き続き作業に集中する。
少しでも良い結果を残せるように…。
少しでも自分を変えれるように…。
少しでも翔と自分も凪と紅葉のような素敵な恋人同士になれるように…。
そんな願いを込めて…。
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