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第122話

1800 都内 Links ファンミーティング 『真夏の納涼会』 小さめのホールでファンクラブの会員向けのイベントが始まった。 メンバーはそれぞれモデルのように浴衣姿的で登場し、大きな歓声に包まれる。 みなは特注の浴衣で、全体的な色は黒系。 上がメンズのシンプルな生地でロングブラウスのようなデザイン、背中とサイドはレースで透け感も出している。 下は蝶の柄の入った生地でガウチョパンツの作りになっている。 帯は黒と赤でゴールドのラメが入った黒いレース帯も重ねて和小物も飾られている 足元はサマーブーツ。 髪はハーフアップで纏めていて、ユニセックスの印象を崩さずまさに彼女のイメージ通りだ。 「普通の浴衣と比べると生地を2倍くらい使ってて、ちょっと重い(苦笑) 値段は4倍くらい…もっとかも(笑) なんかスタッフの子たちが"姐さん"って呼ぶんだけど…(苦笑)」 誠一は白地に黒のラインが規則的に入った浴衣。 帯は濃茶だ。普段より色気が増している。 「思いきって白にしたよ。 似合う…?」 「似合うけど…なんだろう…、爽やかなはずなのにヤバいお兄さん感があるんだけど…(苦笑)」 そう言う光輝は優等生の模範で濃紺の浴衣。 黒のアクセントが入っていて、帯はベージュと黒。みなの見立てらしい。ご機嫌だ。 凪はシンプルに黒だが、黒でも重すぎず、一目で上質だと分かる品のある浴衣と白地に黒のラインの入った帯。 情事後なのもあり、大人の色気が漂っている。 「紅葉、ちゃんと正面を向いてもらっていいかな?何のために席を離してると思ってるの?」 「凪のこと見すぎだよ…(苦笑) 楽屋でもずっと写真撮ってたのに…。」 みなと誠一に注意された紅葉は慌てて前を向いた。 紅葉は紺色の浴衣で濃緑の波模様が入っている。凪と同じ加工生地。帯は白で、髪はピンで右サイドを纏めている。 早苗は生地の素材と帯の色を合わせて2人の浴衣を選んでくれたようだ。 可愛い!とのファンの声に笑顔を見せる紅葉。 「このサンダル…下駄?は歩くのが難しいね。 もう3回も転びそうになったよ?」 「そう?…ビーサンにする?(笑)」 隣に座る光輝にからかわれて一瞬ドキリとする紅葉。 九州の時といい、今日もいろいろバレてる気がする…。 ファンの子からの質問を集めて回答していく。 最初は今年の夏休みの想い出について。 誠一は 「まだ夏休みとってなくて、まぁツアー中だからね?(苦笑) 北海道のフェスに合わせてちょっと休むつもりだけど、ずーーっと星の観測です。」 「ずっと? 一人で?」 「そうだね…。 あ、浴衣持って行こうかな。 気分だけでもね。 あとはお酒があればいいかな。」 光輝は 「夏休みはないです。お仕事させていただきます。」 「2人とも暗いね…(苦笑)」 そう言うみなは 「フェスとか出させてもらって紫外線を浴びる機会が多かったから、一度エステと美容室で頭皮と髪もケアしました。 あと暑くてランニングがあまり出来ないから室内で出来る体幹トレーニングを始めたかな。 外側も内側も磨いていきます。」 凪は 「何だろう? ちょっと海行ったりしたくらいかな。 泳いだりはしてないけどね。 あとは実家の手伝いで、気付いたらみんなに弁当作ってた(笑)」 紅葉は 「お庭でプールして、花火して、スイカ割りをしました!」 「絵日記描けるねっ! 宿題は終わったのかな?」 光輝も客席もほんわかムードだ。 「明日からやります……。 みんなはもう終わってる?? あ、まだ? 良かった!」 客席に仲間を見つけてホッとする紅葉。 ここでみなが切り込んだ。 「紅葉はいろんなところでデート疑惑が出てるみたいだけど、説明しとかなくて大丈夫?」 「デート…?」 「某バンドのドラマーKくんの水族館チュー写真の相手は自分じゃないって言っておいた方がいいよ。」 「あ!アレ? 僕じゃないよ! あんなに背高くないし! 僕、水族館行ったことない……。」 えっ?! という声が会場から溢れた。 「ちょっと! 水族館くらい連れて行ってあげなよ。 都内にもあるじゃん!」 みなから投げられた言葉に苦笑する凪。 「ファンのみんなからオススメの水族館聞いたら?」と誠一。 「あの、翔くんの相手は僕じゃなくて僕の双子のお兄ちゃんです。」 「名前出してるし(笑) いきなり暴露するね(笑)」 光輝が止める間もなかったようだ。 「あれ?ダメだった? あのね、よく間違われるけど…2人に失礼だから言っておくね。」 「いいと思うよ。 ってことで、アレは私のもう一人の従兄弟ね。 あの子は紅葉をもう少しちゃんとさせた感じ(笑) あ、で、京都では和服美人とデートしてたって?」 一部SNSで騒がれているようだ。 「それは……はい。 ランチとお買い物に行きました。」 にこにこと認める紅葉に会場はえー?どういうこと?と気になる様子だ。 ここで凪が火消しのため助け船を出した。 「それ…、うちの母親だから大丈夫。」 一気に盛り上がるメンバーと会場。 え、親も公認ってこと?と憶測が飛び交う。 「凪のお母さんか。みんな面識あるよね。」と誠一がうまくフォローする。 「年末ちょっとお世話になったし、お弁当も頼んだからね。」と光輝も続いた。 「いつの間にか仲良くなってて、母親がガイドみたいな感じでたまに2人で出掛けてるけど…。 えっ、これ以上言わなくても…みんな察してくれるよね?(苦笑)」と凪も説明した。 「大丈夫? 誤解は解けた?」 心配そうな紅葉に光輝が大丈夫だよ。と告げた。 SNSの普及など現代ならではの問題にメンバーは苦笑する。

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