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第124話
※一部NL表現があります。
「皆様お待ちかね!
新曲ですが、10月、11月と2ヶ月連続でシングルのオンライン限定配信があります!
MVも撮るのでお楽しみに!
で、ハロウィーンイベントLIVEとか、ファンクラブLIVEもやります!
詳しい日程は最後にお配りするチラシを見て下さい。」
一人ずつ今日の感想とお礼を述べて、このあとは握手をしてお見送りの流れだ。
光輝は最後にとファンのみんなに向かってマイクで話し始めた。
「えっと、私事ですが…この度ボーカルのみなと結婚いたしました。
ここにいるみんなには自分の言葉で伝えたいと思って、この場を借りて報告させていただきます。
彼女は公私共に僕の一番の理解者でパートナーです。複雑な気持ちの人もいるかもしれないけど、Linksというバンドを誠心誠意大切にする気持ちは今までもこれからも変わらないので、応援してもらえたら嬉しいです。
何か不満とか言いたいことがある人はこのあと僕の方までお願いします。
君たちの思いはどんな言葉でも全て受け止めるつもりなので遠慮なくどうぞ。」
覚悟を決めたセリフを笑顔で話す光輝に迷いはなかった。
「私に言いたいことがある人も直接どうぞ。」
みなも静かに告げる。
「え、なんで喧嘩越しなの?(苦笑)
普通に"おめでとう"で良くない?」凪の言葉に会場の張り詰めた空気が少し和らぐ。
「そうだよね?
奇跡だと思うよ。
3年くらい片想いして、交際なしで結婚して、やっと同居始めたと思ったら今廊下で寝起きしてるんだよ?
すごいことだからね!僕の親友を責めないであげてね。」
誠一のフォローにみんなが驚いていた。
「おめでとうっ!
僕は大好きな2人が結婚して、お兄ちゃんが出来て嬉しいです!」
紅葉はにこにことそう告げて両隣にいるみなと光輝に順番にハグをした。
「お兄ちゃん、宿題があるので、練習の居残りは勘弁して下さい。」
「…それは紅葉の演奏次第だよね?(苦笑)」
全然効果なかったようだ。
笑いのあとで少しずつだが"おめでとう"の声をかけてもらい、軽く頭を下げる光輝。
せっかくだから2人並んだら?という誠一に首を振り、握手会の準備が出来るまで一度袖に下がる。
まだ上手く歩けない紅葉をみて兄と呼ばれた光輝が腕を引いていく。
結局握手会の並びも上手側から誠一、凪、みな、紅葉、光輝の順だ。
「凪、頼むね。」
カナと一緒に男性スタッフもみなの後ろにつかせるが、心配な光輝は一言そう告げた。
「紅葉も、今日は俺間に入れないからしっかりね。なんかあったらスタッフが助けてくれるから慌てなくて大丈夫。
一歩下がって、深呼吸。それでも無理だったら服引っ張って教えて。」
「分かった!でも大丈夫だよ!」
紅葉はあの事件から完全に立ち直った様子だ。
凪に"あんまりアホなこと言うなよ"と釘をさされている。
「じゃあ始めようかな。
帰りの電車の時間とかヤバイ子はスタッフに言ってね。そういう時は多少順番前後するけど、みんなご協力宜しくね。」
誠一のアナウンスでファンの子たちが並びながらキャーキャー言って待っている。
「誠ちゃんなんか着崩れてない…?」
「照明暑くて…(苦笑) サービスです。」
「あ、文字通り一肌脱いでんの?(笑)」
光輝とみなに質問が集中しないように策を練っているらしい。扇子を使ってパタパタ顔を扇ぐ姿はいつも以上に妖艶だ。
「えー、俺もなんかあるかな…?
いや、脱がないけど…(笑)」
考える凪に遠くから"紅葉くんと付き合ってるんですかー?"という声と笑い声が聞こえる。
「その質問には答えられないけど…!
……俺らも一緒に住んでるよ。」
"な?"と紅葉と顔を見合わせる凪に"あれ?言って良かったんだっけ?"と首を傾げながらも凪からの笑顔にデレデレの紅葉。
よっぽど彼の浴衣姿が気に入っているらしい。
一瞬の沈黙のあとどよめきが聞こえた。
「今日のイベント相当濃いね…。」
誠一の呟きを合図に握手会が始まった。
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