132 / 144
第131話
8/24
福島入りしたその日の夜、Links全員で地元のラジオに出演させてもらって、大人組はそのまま飲み会へ。
みなと紅葉はホテルで食事をとり、みなの部屋で夏の風物詩、ホラー特集のテレビを見ている。
「怖すぎるっ!!
もう消そうよっ!!」
「さっきもそう言って消そうとしたら"待って!やっぱここだけ見る!"って言ったじゃん(笑)」
ベッドの上で枕を抱えながら恐々と画面を覗く紅葉に苦笑するみな。
彼女は先ほどもらったエビのぬいぐるみの写真をSNSにアップしながら紅葉のリアクションを楽しんでいるようだ。
8/25
100
「ん…? 凪くん?
お帰りなさい。」
「ただいま…。」
自室に戻り先に寝ていた紅葉はぎゅっと抱き締めてくれる恋人の温もりに目を覚ます。
「楽しかった?」
紅葉は身を起こしてそう訊ねる。
凪は紅葉の膝に頭を置いたまま寝転んだ。
「まぁね。…あー、ちょっと飲みすぎた。」
自身の腕を目の上に置いてそう呟く凪。
「…大丈夫?お水もって来ようか?」
「へーき。
それよりもう少しこのままでいさせてよ。
あ、眠い?」
恋人の膝枕が気に入ったらしい凪は腕を紅葉の顔に伸ばしてそう聞いた。
「大丈夫だよ。
…何かあった?」
本当は眠いけど、いつもと少し違う凪の様子にそう答える紅葉。
「何かって?」
「んと、僕とのこととか…何か言われたりした?」
噂に尾ひれが引っ付いて凪がからかわれたのではないかと心配する紅葉。
「まぁ…正直多少はあるけど、酒の肴みたいなもんだし… 」
「…そっか。でもそういうのは凪くんだけじゃなくて僕にも向けられるべきだし…!
凪くん一人にイヤな思いさせちゃってごめんね…。僕が戦うから!! もう大丈夫だよっ!!」
紅葉が産まれたドイツでは人のセクシャリティやその容姿について他人がとやかく言うのはタブーとされているらしく、冷やかしに対して厳しい。
「…男らしいね。惚れそう…(笑)
でも大丈夫だよ。
誠一が酒で潰してくれたからさ。」
それに付き合っていたらつい飲みすぎたのだと言う凪。
「誠一なんて"これで静かに美味しいお酒が飲めるね"とか言ってそこからワインボトル入れるし…(苦笑)」
笑顔を見せる凪に安心し、キスを求める紅葉…。
「…お酒くさい…(苦笑)」
ごめんと苦笑しながら返した凪は紅葉を抱き締めて眠りについた。
940
軽く二日酔いだという凪にミネラルウォーターを渡す紅葉。
ニュースの天気予報を見ると台風が近付いているらしく、今日も朝から雨模様だ。
「みんな来れるかな?心配だね。」
紅葉がファンのみんなのことを心配していると、光輝から呼び出しの電話がかかってきた。
部屋へ行ってみると、凪と同様に二日酔いらしい光輝はみなから薬を渡されて飲んでいるところだった。
誠一は3時まで飲みながら追加された論文を書いていたらしく、完全に寝起きだが二日酔いはないらしい。
「ごめん、電話でも良かったんだけど一応…。
台風来てて夜中に直撃するみたいだから出来ればもう1泊して明日のオフ日に帰る形にしたいと思うんだけどどう?」
「僕は全然いいよ。
へぇー、台風来てるんだ。
けっこうヤバイの?」
どうやら勉強に集中していてニュースは見てないらしい誠一は呑気にそう聞いた。
「雨も風も割りと強いやつみたい。
今はまだ電車も動いてるし、LIVEもやる予定だけど、繰り上げ繰り下がりで時間変更あるかも。これから会場側と打ち合わせする。
凪、みなと一緒にセトリ見直して削れるとこ検討して。
誠一はスタッフに来れるか連絡して聞いてくれる?泊まるなら人数の確認もお願い。」
「「「了解」」」
「僕は…?」
3人が返事をする中、紅葉が自分にも役割を求めて光輝に聞いた。
「紅葉は10時になったらペットホテルに電話して明日何時まで預かってもらえるか確認して。」
先に凪が大事な指示を出す。
もともと今日も無理を言って預かってもらっていて、明日の朝イチ に迎えに行く約束なのだ。いつも利用している個人経営のペットホテル兼動物病院は確か明日から家族旅行で遅めの夏休みだと言っていたので台風が過ぎたら明け方からでも出発して迎えに行かないと間に合わないかもしれない。
「そーだ! 平ちゃんっ!!」
「とりあえず物販も開場してからにする予定。終演後はなしかな…。
これからHPとSNSで告知する。
紅葉、英語でもアナウンス出したいから手伝ってくれる?」
光輝からのお願いに紅葉は張り切って背筋を伸ばし、笑顔を見せた。
ともだちにシェアしよう!