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第137話
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翔の新居はギリギリで昨日からの入居が決まり(池波の所有するマンションに決めたので審査など融通してもらった)、夜まで引っ越し作業を手伝い、合間に仕事もこなした凪はさすがにクタクタになって帰宅した。
「凪くん大丈夫?」
「なんとか…。
病み上がりなのに荷造りとか積み込みまでさせてごめんな?」
「全然っ!
僕も運転出来なくてごめんね…。
コーヒーとか辛いガムとか凪くんの好きな物買ってきたよ!」
少しずつ体調の戻った紅葉は懸命に自分が出来ることを探してやってくれたようだ。
今日はこれから茨城の大洗へ向けて平九郎も連れて出発し、フェリーで北海道を目指す。
紅葉は楽しみで仕方ないようだ。
遠足前の小学生のように朝からテンションが高い。
夜…
無事に出港し、部屋でゆったりと寛ぐ。
平九郎は道中のSAや船内のドッグスペースでもたくさん遊んで、普段とは違う場所に戸惑うこともなく大の字で寝ている。
「はぁ~!
お船の中とは思えない豪華さだね。
凪くん奮発してくれたんだね!
ありがとうー。」
「たまにはね。ってか、割り勘にしたじゃん」
船代とホテル代は割り勘で高速代や食事代は凪が、平九郎にかかる代金は紅葉が負担する約束となった。
「向こうで食べたいもの決まった?」
シャワーを浴びてビールを煽りながら、凪は紅葉に希望を聞いた。
「うん。
ラーメンととうもろこしとアイスと牛乳!」
「安上がりだな(笑)」
「だってジンギスカンと海鮮はみんなで食べるんどよね?
あとは…メロンかなぁ。
お土産にも買いたいね。」
「いいよ。
北海道は有名なお菓子も多いから楽しみだな?」
「…お菓子はやめとく…。」
まだ気にしている様子の紅葉に凪は苦笑しながら恋人の髪を撫でた。
「気にし過ぎ(苦笑)
欲しいのあったら俺が買ってやるから…
少しずつ食べればいいよ。
友達にもお土産であげたら喜ぶと思うよ?」
平九郎を撫でながら、2人でベッドに寝転がりミュージカル映画をのんびりと眺める。
「これ翔くんが劇中歌の音楽監修したやつだよ。」
「そーなの? すごいね!」
賑やかでアップテンポの曲を聴きながら映画を楽しみ、見終わると紅葉はお疲れの凪にマッサージをすると言い出した。
「あ、うん。
ありがと。」
背中に乗る恋人に"軽すぎるな…"と思いながらも、紅葉の好きにさせる。
肩や腕、背中を一生懸命マッサージをする紅葉は時折「気持ちいい? どこがいい?」とご丁寧に凪の顔を覗き込んで聞いてくれる。
凪的には"誘ってんのかな…"と、思いつつ…普段ならこのままそういう流れに持ち込むのだが、禁欲を宣言してまだ数日…。
しかも紅葉は病み上がりだ。
ここは我慢だと凪は背中から伝わってくる体温と部屋着から見える細い脚に意識が向かないようにちょっと前に気になっていた映画を観ることにする。
マッサージすることに飽きたのか、恋人の逞しい背中にくっついた紅葉は凪が(気をそらすために)見ている恋愛映画に目を向ける。
「漢字が難しくてよく分からない…」
「えっ?」
妙なことを言う紅葉に疑問の声をあげる凪…。
「…?」
「お前はフツーに英語で聞いてるんじゃないの?」
「そっか!!
なんかすっかり日本語に慣れちゃってて、つい日本語を見ちゃってたよ(笑)
英語モードにしてたら良かったんだ…(苦笑)」
「面白いやつ…(笑)」
背中に紅葉を乗せたまましばらく映画を観る2人…
「…っ!チューしてる…っ!」
キスシーンにそう言いながらちょっと羨ましそうに画面を見つめる紅葉。
「俺たちもキする?」
凪が聞くと「いいの…?」と遠慮がちに言うので、後ろを振り返りゆっくりと口付けた。
紅葉が背中に乗ったままの変な体制で何度か唇を合わせると、凪は紅葉を上に乗せたまま仰向けになり、紅葉を抱き寄せて舌を絡めた。
純愛期間と言った手前、すぐに切り上げ、身を起こして「続き、観る?」と無理矢理映画へと話題を変える凪…。
本当は映画の続きを観るより目の前の恋人と抱き合いたいが…
2人きり(平九郎もいるけど…)+旅行というシチュエーションでいつまで堪えられるのかと凪は内心気が気じゃない。
しかも画面の中の男女はキスより先に進んでいて、視界に入った光景に紅葉は顔を覆う。
「そーいえば、紅葉はこういうシーン観れるの?珊瑚は映画でも女の裸見るの無理って言ってたけど…」
「僕はそこまでじゃないけど…恥ずかしい…っ!
女の人の裸なんて見たら失礼だよ!
凪くんも見ちゃダメっ!」
けっこう濃厚なラブシーンに驚いた紅葉は凪のノートPCを閉じてしまった。
「…AVじゃなくて映画だよ?(苦笑)
お前この前までみな(イトコ)と風呂入ってたじゃん…!」
「そうだけど…!
やだ。…僕といる時は観ないで…っ。」
「分かったよ。
紅葉…、怒んないで?」
「怒ってないよ…。」
「じゃあ…拗ねてる?」
「拗ねてないもん…っ!」
恋人の可愛いリアクションに和む凪。
クスっと笑うと紅葉をベッドに押し倒し擽り始めた。
「きゃーっ!!
やー、ははっ!! ん、くすぐったいっ!
にゃはっ!」
「"にゃは"って何?(笑)」
こうして波に揺られる長い移動中もずっと2人でくっついて、部屋の中のちょっとの移動でも手を繋いだり、いろんな話をしながら過ごした。
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