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隠し事が叶った日 2

きっかけは七年前。 珍しく一人で公園に出かけた僕は、その帰りに近道をしようと細く暗い道へ入った。 もう直ぐ家の近所の通りに出るという時、事件が起きた。 質の悪い酔っ払いが僕を殴り飛ばしたんだ。 苛立ちが籠った拳が次々に襲ってきて、痛くて、怖くて、もう僕は死んでしまうんだと意識を手放す寸前。 「スズナ!!!」 ナズナの声が聞こえた。 気が付いたら僕達の部屋にいて、泣きじゃくるナズナに抱きしめられていた。 ナズナの腕の中は暖かくて、それが悲しいぐらい嬉しくて僕も沢山泣いた。 元々友達も少なくて良く虐められていたから、ある日机の上に花が生けられた花瓶があるのを見て、ナズナに泣きついた。 ナズナは花瓶を置いた生徒に怒ってくれて、僕を慰めてくれた。 グズでノロマで泣き虫な僕を優しく抱きしめてくれる。 劣等生な僕を両親でさえ嫌うのに、ナズナだけは笑顔で話してくれた。 「スズナ。ずっと一緒にいようね。」 それが子供の口約束だってことは分かってるけど、独りぼっちの俺に優しくしてくれた唯一の弟を好きになってしまったんだ。 静かに泣いている弟を抱き締める。 ナズナを泣かせるくらいなら、僕はいくらでも罪を犯すよ。 「好き。ナズナが好きだよ。」 一度、出してしまえばもう止めることはできない。 許されない想い。許されない言葉。 好きだと言ってしまえば、一緒にはいられない。もっともっとと求めてしまうその前に離れないと。 ぽろぽろ言葉が出てくる。ぼろぼろ涙が出てくる。 「ごめんね。好きになっちゃって……ごめんなさいっ!」 いつものように頭を撫でられるのが、心臓が引き絞られるように悲しい。 耳元で息を吸う音がして、僕はこの恋心の終焉を待った。 「スズナ。俺も好きだよ。」 呼吸が止まる。 「ずっと好きだったんだよ、スズナが。」 「ぁ………え。」 「だから泣かないで。」 そっと僕を抱き起したナズナが、優しく目尻を拭ってくれる。 その目から僕と同じ感情が流れ込んできて………。 僕達はお互いの額を合わせると、相手の手を取り静かに誓った。 「死ぬまで僕と一緒にいてね。」 「死んだってずっと一緒にいるよ。」 今日は、僕の隠し事が叶った日。

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