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叶った恋を楽しむ日 2
夏休みということもあり、館内にはそこそこの利用者がいる。
僕達は席が埋まってしまう前に宿題を広げられるスペースを確保した後、各々本を探すことにした。
ズラリと並んだ本棚はなんだか威圧感が凄くて、もうやる気が折れてしまいそう。
それでもご褒美のためには頑張るしかないと、背表紙に目線を滑らせていく。
正直、そこまで読書は好きじゃないし適当に心が惹かれる題名を探していると、一冊の本に足が止まった。
「ん!っぐぬぬぬぬ~~!!」
届かない!!!
丁度本棚の最上段にあるそれに手を伸ばすものの、指先が触れる程度。
全然届かないなら諦めて脚立持ってくるけど、ギリギリ触れるときってムキになるよね!?
ってことでぬんぬん唸りながら精一杯腕を伸ばしていると、横から伸びてきた手が目的の本を抜き去った。
「はい。これでしょ?」
どうやら見かねた弟が助けてくれたようだ。
ちょっと獲物を横取りされた感はあるけれど、素直に助かったのでお礼を言ったのに……。
「スズナは伸びなかったから小さいもんねー?」
「まだ!これから!!伸びるの!!!」
「はいはい、図書館では静かになー。」
「~~~~~~~~~!!」
頭を撫でてもらうのは大好きだけど、今のこれは絶対僕を馬鹿にしてるでしょ!!
小学校くらいまでは僕の方が高かったのに中学に入った頃には逆転してた。
すくすくと成長する弟は可愛いけれど、お兄ちゃんとしては複雑。
大声で騒ぐことが出来ないから「不服です!」と全身で表す。
「拗ねないでよー。だってほら小さい方が得なこともあるって。」
そっぽ向いた僕の頬を突いたナズナに腕を引かれ、突然のことにたたらを踏む。
「ほら。俺にすっぽり収まれて、最高でしょ?」
砂糖を煮詰めたような声で囁やいたナズナにしっかり抱きとめられる。
言葉通りすっぽりと収まったこの場所は、いつだって僕を甘やかせてくれる場所。
皆に無視されたって、否定されたって、僕を迎えてくれる大切な場所。
確かに、ここにいられるなら、いいかも。
気が付いたらナズナの首に腕を回していて、ぎゅうっと抱きしめ合う。
大好き。大好き。大好き。大好き。
僕の弟。唯一の片割れ。大好きだよ、僕のナズナ。
「さ、感想文頑張ろうな。」
「ん。ご褒美のためにね!」
ひときわ強く力を入れた後、二人とも潔く離れる。
そうしないと、いつまでも離れられないのを僕もナズナも良く分かっていたから。
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