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幸せの嘘に気づいた日 1
はじめは、傍にいるだけで良かったんだ。
ナズナが好きで、ナズナに好かれて、それだけで良かったんだ。
許されない恋が実った。
それがどんなに奇跡的で罪深いことなのか、僕はちゃんと分かっていたんだ。
それなのに、段々満足できなくなった。
学校なんて行かないで、もっとそばにいて欲しい。
他の人とは話さないで、もっとお喋りしていたい。
でもこんなこと言ったら迷惑でしょ?
ナズナを困らせちゃうでしょ?
だから僕は我慢するよ。全部全部、我慢する。
頭が良くて、運動も出来て、色んな人から頼りにされて、将来きっと大物になるってみんなに言われる、そんなナズナが大好きだから。
勉強嫌いで、運動嫌いで、誰にも声をかけてもらえなくて、このまま消えたって気づかれないような、そんな僕なんかを好きだって言ってくれるなら。
なのになんで?
ねぇ、なんで?
夏休みも終盤にさしかかったある日。
寝つきが良くて、一度眠ったらなかなか起きない僕は、珍しく夜中に目が覚めた。
おかしい。
今日もナズナに抱きしめられて眠ったはずなのにナズナがいない。
トイレに行ったのかと思ったけれど、数十分待っても帰ってこない。
目も冴えてしまったし、なんだか嫌な予感もするし、ナズナを探すことにした。
一応トイレに声をかけるも反応は帰ってこない。
両親の寝室、リビング、キッチン、洗面所にお風呂場。
どこを探しても見つからず、とうとう玄関にやって来た僕は足りないものに冷や汗をかく。
「………くつがない。」
家を出たの?真夜中に?
夏とはいえ、高校生とはいえ、こんな時間に外を出歩くなんて危険極まりない。
寝ている両親を起こさないように、けれど急いで、玄関から飛び出した。
やはり外は真っ暗で青白い街灯の明かりがあるばかり。
ぶるり。
寒くも無いのに背筋が震えるけれど、双子だからかなんとなくナズナがいる方角が分かる気がして一歩を踏み出した。
根拠の無い大丈夫を繰り返し呟いて、ざわつく感情を必死に宥めていると、誰かの話し声が聞こえてきた。
「ーーーろーーだとーーーーーぉ。」
「ーかっーーーーもーーーっーーーるー。」
ナズナ!…………と、七草さん…?
途端に何故か二人に見つかってはいけないような気がして、慎重に慎重に音源へと近づく。
二人はどうやら公園のベンチに並んで座っているようで、混乱しながらもベンチの後ろの茂みへと足を進めた。
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