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幸せの嘘に気づいた日 2

思えば、最初からおかしかったんだ。 僕と違い明るくて社交的なナズナには、幼い頃から沢山友達がいたけれど、一度だって遊びに出かけることはなかった。 周りは気付いていないが、ナズナはとても警戒心が強い。 見上げるほどに高く、貫けぬ程に分厚い心の壁の内側にいるのは僕ただ一人だけ。 ナズナはいつだって僕だけを優先してくれていたんだ。 それなのに七草さんは違った。 僕だけと過ごしていた放課後や休日も、今では三人で過ごすことが当たり前のようになっている。 学校帰りに七草さんを家に連れてきたことだってある。 今まで、そんなことはただの一度も無かったのに。 僕と仲良くしてくれるからナズナも気を許しているのだと思っていたけれど、それだけじゃあ壁の内側には入れない。 あぁ、どうして今まで気づかなかったんだろう。 七草さんは僕の初めての友人であるとともに、ナズナにとっても特別な人なのかもしれないってことに。 そうだよ。僕なんかより七草さんと結ばれた方が、きっとナズナは幸せになれる。 同性で血を分けた双子の僕なんて放っておいて、可愛くて柔らかい女の子と恋をした方が良いに決まってる。 結婚して、子どもを育てて、二人で睦まじく老いていく。 そんなありふれた幸せをナズナが感じてくれるなら、その方がいい。 その方がいいんだって、分かってる、けど………。 沈んでいく気持ちをごまかすように首を振る。 先ずは、二人が人目を忍んだ真夜中に何を話し合っているのかを確かめなくては。 ベンチ裏の茂みに到達したその時、飛び込んできた言葉に身体が凍りついた。 「スズナ君はもう死んでるんだから。」 ……………は? 「そりゃ双子の兄が死んだのは悲しいと思うけど、そろそろ解放してあげなよ。」 聞きたくないのに止めろという声も出せず、言葉はどんどん続いていく。 「私だって食い止めてあげたいけど、もう無理だって。このままじゃどう足掻いたってスズナ君は怨霊になる。ナズナ君の身体だってもう持たないよ!」 泣き叫ぶような七草さんの声が、ぐるぐる、ぐるぐると脳内を巡る。 何を、言ってるの? 僕が、死んでる? 怨霊ってどういうことなの。ナズナが持たないって何。七草さんは何の話をしているの。どうしてナズナは何も反論しない。 どうして。 どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。 どうして、僕に隠し事したの。 ねぇ、ナズナ。

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