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幸せな終わりを迎えた日

物心ついた頃には、兄を愛していた。 引っ込み思案で、勉強も運動も苦手だけど、自然が好きで、絵を描くのが好きなスズナ。 俺はそんなスズナが大好きなんだ。 だからあの日。 目の前でスズナが殴り殺された時。 世界が崩壊したんだと思った。 俺が、一人で行かせたから。 俺が、迎えに行かなかったから。 だから、スズナはこんな目にあったんだ。 スズナが俺の全てで。スズナさえいればそれでよくて。スズナがいない人生なんて生きている意味がない。 なんで?なんでスズナが殺されなくちゃいけないの?スズナはまだ九歳なんだよ? 認めない。 俺は認めない。 遺体を見たって、葬式を終えたって、俺はスズナが死んだ事を信じなかった。 涙一つ溢さない俺をみんなは訝しんだけれど、死んでないんだから泣く訳が無い。 そんなこと考えながら部屋に戻ったら、ベッドにスズナが眠ってたんだ。 嬉しかった。 すごく嬉しかった。 スズナが俺をおいては逝かないと言っているように感じたから。 半透明のスズナは、自分に何が起きたのか覚えていないようだったから、咄嗟に嘘をついた。 スズナは生きていると。 「スズナ、ずっと一緒にいようね。」 父さんに、母さんに見えなくたっていい。 クラスの友達に聞こえなくたっていい。 道ゆく人に触れられなくたっていい。 俺にはスズナがいて、スズナには俺がいる。 大丈夫。寧ろ好都合だ。 誰からも認識されないことを虐めとして受け取っているスズナを慰め、励まし、親からも見放されたと嘆くスズナに、俺だけが味方だと擦り込んでいく。 泣いているスズナは可愛くて可哀想で、とてもとても愛おしい。 そうして七年かけて恋人同士になれた。 勿論、その間に何回もスズナは気づきかけていた。 自分が死んだこと。生きてないこと。 その度に騙して、騙して、ここまでやってきた。 歪んでいる?間違ってる? なんとでも言えばいい。 けど、スズナが俺を好きな気持ちは本物で、俺がスズナを好きな気持ちも本物だ。 俺はスズナに殺されるのも本望なんだ。 嬉しいんだ。幸せなんだ。 大好きだから、スズナが大好きだから! だから、ほら俺を殺して。 二人で、幸せになろうよ。 約束したでしょ? 死んだってずっと一緒だよって。

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