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「ご飯にしますか?お風呂にしますか?」
柊一郎の仕事用の鞄を受け取り、目の前でニコニコと笑顔を浮かべ上記の二択を問いかけるのは、柊一郎が愛してやまないたった一人のパートナー。
名前は雪白、柊一郎は愛を込めてゆきと呼んでいる。
ゆきは柊一郎よりも八つ歳下で、この前成人したばかりの青年だった。
柔らかそうな灰色の髪に青空を溶かしたような空色の瞳。
名は体を表すという風に色白で、ふっくらとした頬が淡く桃色に染まっていた。
柊一郎がゆきと結婚してもう半年になる。
結婚を機に二人はこのマンションに引っ越してきたのだ。
「先に風呂を貰うよ」
「そう言うと思って沸かしたてです!」
くりっとした瞳を細め嬉しそうに微笑むゆきに、柊一郎もつられて笑みが浮かぶ。
そうはいっても僅かに口角が上がっただけなのだが。
「なんだ、わかってたのか」
「はい!」
得意げに胸を張る姿が可愛らしくて、柊一郎は内心悶絶しているが、やはり見た目は普通であった。
「じゃあお着替え準備してきますね、ゆっくりしてて下さい」
「ゆき、」
今にも駆け足で行ってしまいそうなのを呼び止めて、柊一郎はん、と身を屈めた。
その柊一郎の行動で理解したのか、ゆきはボッと顔が赤くなる。
もじもじしながら柊一郎に近付くと、自分よりも背の高い柊一郎に届くように背伸びをして。
そしてちゅ、と触れるだけのキスをした。
「えへへ…おかえりなさい」
「ただいま」
満足気な様子の柊一郎、これが帰って来てからの二人の日課だった。
勿論朝には行ってきます行ってらっしゃいのキスもする。
なんだってまだまだ新婚ホヤホヤなのだから。
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