6 / 20

探り。

 (四) 「藤次郎、藤次郎はおらんか」  空が朝焼けに染まる頃。  男がふと目を覚ますと、隣にいた筈の藤次郎の姿がなかった。  男は、藤次郎が一週間のうちどこかへ出かける日がたまにあることを知っていた。  しかしそれもほんの束の間のことで、すぐに戻ってくるものだから、厠(かわや)かもしれないと思い直す。だが、何故だろう。藤次郎のことがどこか腑(ふ)に落ちない。  男は眉を潜め、思考を巡らせていると、藤次郎が姿を現した。 「あ、起きたんですかい?」  藤次郎の姿が見えたことで一度は安堵(あんど)するものの、しかし男は用心深かった。太い手を伸ばし、彼の細い腕を引くと、夜具の中へ押し込んだ。  短い悲鳴が薄い唇から放たれる。  もし、藤次郎が自分を受け入れているのであれば、彼の最奥にはいまだ自分が流した液が残っている筈(はず)だ。  そう考えた男は裏切りを確認するため、彼の着物の裾を捲り上げ、下肢を披露させた。  肉付きのよい太い指を滑らせ、紅色をした魅惑的な窄まりへと挿し入れる。 「っふ……」  藤次郎の甘い声が中心にある男の雄を刺激する。  そのまま指を挿入すれば、そこから聞こえる水音と共に、液が伝う。  その液こそ、男が藤次郎に注いだ白濁だった。 「いつ見ても卑猥な蕾だな」  男は引き締まった藤次郎の腰を見下ろし、双丘を撫でながら左右に割った。  男は、藤次郎の息が止まったのを聞き逃さない。  あらわになった赤い蕾に興奮した男は舌なめずりをする。  しかし、今朝方まで藤次郎を責めたおかげで今の自分に注ぐ白濁はない。  それならば、と。男はにやりとした。 「ああ、腹が痛ぇ、藤次郎、小便だ」  男は突然、腹を抱えてうずくまった。 「だったら厠へ」  藤次郎は男を厠へ向かわせようと身体を捩(よじ)る。しかし、男は藤次郎を逃さなかった。 「我慢できねぇんだ。お前の中でしたい。この、赤い蕾の中で、だ」  男は荒い息でそう言うと、後孔に挿し込む指の数を増やした。  すると空気音を立て、液がよりいっそう太腿を伝い、流れ出す。  藤次郎は何も答えず、身を固くした。 「何だ? 文句でもあるのか?」  断るならば仲間には加えてやらない。男は暗にそう告げた。  察しが良い藤次郎は自らの両手で後孔を広げるようにしていっそう腰を突き出した。 「俺の中に貴方の小便を注いでください」  それは恐怖なのか、歓喜なのか。あるいはその両方なのかもしれない、藤次郎の手が小刻みに震えていた。 「良い子だ。たっぷり注いでやろう」  男はそう言うと割れた裾から自らの陰茎を取り出し、まだ柔らかい後孔をひと息に貫いた。  窄まりが男の雄を従順に受け入れ、最奥へと向かう動きに合わせて肉壁が割れていく。 「熱い、熱いっ!!」  この身が焼けそうだ。  恐ろしい熱を感じながら、藤次郎は腰を振り続ける。 「っひ、ああっ!!」  やがて男の雄が最奥へ辿り着くと、熱い迸りを放った。 「嬉しいだろう? 美味いだろう?」  注がれる藤次郎は首を振り、自らも放つ小水で夜具を濡らす。 「おい、水浸しにしやがって。ここは宿屋なんだから、舐めて綺麗にしろよ?」  後孔を穿ちながら、男は藤次郎を責める。  打ち付けられる肌の卑猥な音が座敷に響く。 「ん、ぅう……」  青臭い匂いが鼻につく。  藤次郎は赤い舌を伸ばし、男に言われたとおり、夜具を汚した自ら放つ蜜を舐める。 「ほうら、まだ出るぞ? 全部受けろよ?」  藤次郎は両手を強く握り、拳を作った。  涙袋に溢れた涙が溜まる。  藤次郎は与えられる屈辱に耐えるしかなかった。  

ともだちにシェアしよう!