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慣れる?③
ご飯を食べながら、オレの目の前で、ずうううっと、ニヤニヤニヤニヤしているあげはが、さっきから何度も、いちいさんに怒られていた。
『雨花様が食べづらいでしょう!』って。
いや。
はい。
ものすんごく食べづらいです。
ああ、オレ……みんなに嘘をついているみたいで、ものすごく苦しいよ。
うおおおおお!あげはは、そんなニヤニヤしちゃってるけど、オレ、ヤってないんだってば!どうしたらいいの?うう。
「はぁ……」
「雨花様?」
あげはが隣で、納豆をかき混ぜる手を止めて、オレを呼んだ。
「ん?」
「ため息とかついちゃって……体、お辛いんですか?」
あげはは、オレを見ながら、相変わらずニヤニヤしている。心配してくれてるわけじゃないんだね?あう……。
「う……早く食べないと、学校に遅刻するよ?」
「はあい」
あげはは、ちょっと口を尖らせると、また納豆をかき混ぜ始めた。
あげはは、オレがあいつとヤったと思ってるんだよね?
え?っていうか、どんなことしたと思われてんの?オレ。
オレ……11歳で、あんな春画の世界みたいなこと、知ってたっけ?
保健体育で習ったの、その頃だった?え?そうだっけ?
いや……でも、男同士でそんなこととか……そんな世界は知らなかったよ!うおおおお!まだこんな可愛いらしいあげはに、悪影響が!
「はぁ……」
一人で悩んでるから、何だか思考がおかしな方向にいってるんじゃないの?誰かに相談出来たら、ちょっとは楽かも。
でも、誰に相談出来るっていうんだよ?こんなこと。
あ!ふっきーとか梅ちゃんなら、同じ候補だし!
いやいや。そこに相談するのは、おかしな話だよね?
って、あれ?一体オレ、何を悩んでるんだっけ?ああもう!何が何だか、わけわかんない。
え?……っていうか。あんまり考えたことなかったけど。
皇って、ふっきーとか、梅ちゃんと……あんな、春画みたいなこと……してるって、こと?
「はぁ……」
ため息ばっかり出てくるよ。
「やっぱり、体がつらいんですか?雨花様」
「いや!え、えっと……だ……」
『大丈夫』って言うのも、おかしくない?
「だ?」
「はぁ……」
「それとも、何か悩んでるんですか?」
「へ?うーん……」
悩んでる?悩んでるの?オレ。
悩んでるっていうか……いや、あいつが、誰とナニをどうしてようが、別に、あいつの勝手だし。
って、え?あれ?オレ、そんなことで、悩んでたんだっけ?
あいつ……候補は、ここにいればいいって言ってたくせに、『オレのすることに慣れろ』とか、言って……キス……とか、しやがって!
別に、いるだけでいいなら、そんなこと……慣れる必要とか、なくない?
オレが、あの程度で泣いたから渡れないとか、あいつは言ってたけど。
だって、泣くようなことを、あいつがするからじゃん!
あいつが、あんなこと……しなきゃいいんじゃん。
……。
あいつ……オレのこと、どうする気?
っていうか、みんな喜んであいつと、春画みたいなこと、したがってるの?
……。
そもそも奥方教育されてきた候補って、なに?
親からどんなこと教えられてきてるの?あいつと結婚するのが、当然って教えられてきてるってこと?
だったら、喜んで……する、よね?
うちの、柴牧の母様だって『柴牧家から奥方様が出たらすごい名誉なこと』とか、言ってたし。
鎧鏡家の家臣さんたちからしたら、あいつと結婚するなんて、ものすごく嬉しいこと、なの?
「はぁ……」
でも、だからって、オレには、16年間培われてきた常識ってもんが!
だってオレは、ついこの前まで、普通にお嫁さんをもらって、子供を作ってって、思って生きてきたんだよ?
父上の跡を継いで、柴牧家を守って行こうって、そう思ってたのに。
それなのに……なんでオレが、嫁なんだよ!
ああ……春画が脳内をチラついてる。
うう……。
名誉な、こと?
……。
いや!やっぱり、いやだって!
でも……あいつのすることに慣れなきゃ『夜伽の実践教育をすることになる』とか、言ってたし!
ってか、なにそれ?!夜伽の実践教育ってなに?!
え?ホント……それは、ホントなに?!
「うおおおおお!」
「うわっ!大丈夫ですか?雨花様?」
「あ、ごめん」
これが、落ち着いていられますかってーの!
「雨花様?ボクで良ければ、話を聞きますよ?」
「え?ホントに?」
はっ!
11歳のあげはに、助けを求めようとしてしまっていた!
どれだけオレ、切羽詰ってるんだよ!
「何を悩んでるんですか?雨花様」
「う、え、いや。別に」
「あ!もしかして、ヨトギの話ですか?」
「うわあああああああ!」
「やっぱりそうなんですね?」
「あげは!……夜伽なんて、その……知ってるの?」
「知ってますよ!え?もしかしたら、ヨトギがうまくいかないんですか?」
「なっ!」
なんつうことを!
え?ちょっと待って!
夜伽がうまくいかないってナニ?
逆に教えて!
「ヨトギがうまくいかない候補様は、ヨトギの先生が来て、オシオキされるって聞きました。もしかして、オシオキされるんですか?雨花様」
「うえぇっ?!」
おしおき?!
「やっぱりそうなんですか?あ!聞いたところによると、駒様は、そのヨトギの先生のお弟子さんで、ものすごくヨトギがお上手なんだそうですよ?」
「えっ?!」
まじで?!
「だから若様は、駒様のところへのお渡りが、一番多いんだそうです」
だからってなに?だからって!
夜伽が上手ってなに?
だからってなに?
ぎゃああああ!それより、あげは!11歳でしょ?!そんなこと!そんなことー!
「あげは!ぼたん!もう行かねば間に合いませんよ!」
「あ。はあい!」
ああ!いちいさん!いいところで!
……あの駒様が、夜伽上手?
ああ、春画が!
春画が……もう、ぐるぐるぐるぐる……。
駒様と、皇の顔になって、ぐるぐるぐるぐる……。
うおおおおおお!
って……またオレは、11歳の発言に、何をそんなに動揺してるんだ!
でもだって……ホント、なの?
『オシオキ頑張ってくださいね!』と、ニッコリ手を振りながら、あげはは学校に行ってしまった。
うおおおおおお!
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