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学祭騒動③
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「えっ?なんですか?これ?」
学祭二日目の朝、生徒会室は、女性物の服やら小物やらで溢れかえっていた。
昨日10時過ぎまでここにいたのに、いつの間に搬入されたの?
「今日俺たちが着る衣装だよ。ばっつんは、どれがいい?俺が見繕ってやろうか?ん?」
「……いえ、結構です」
旧生徒会長の鏑木 先輩が、にやにやしながらオレの肩に腕を置いた。
「やーめーろ」
本多先輩が鏑木先輩の腕を取った。
「おっ!本多くんは俺よりばっつんが大事なんだね?うぅ……そうか、オレも田頭可愛がっちゃおうかな」
「気持ち悪いっす、先輩」
田頭がイヤそうな顔をすると、鏑木先輩はもっとイヤそうな顔をした。
「お前を可愛がるとか、むしろ俺のほうが気持ち悪いわ!」
「先輩、自分で言ったくせに、ひでーっす」
「あ。ちょっとそういうとこ可愛いな、田頭」
「気持ち悪いっす、先輩」
「お前が可愛いとか、俺のほうが気持ち悪いわ!」
エンドレス、続きそう。新旧会長のこの二人のやりとり。
それにしても……。
隣に立つ本多先輩をチラリと窺った。
「……ん?」
「あ……いえ。先輩はどれを着るんですか?」
「どれを着たって、僕とばっつんとサクラ以外は気持ち悪いだけだよ」
「あ、原先輩」
旧書記の原先輩は、サクラ以上に見た目が女子で、サクラ以上に毒舌キャラだ。
「確かにな」
昨日あんなことをしたのに、本多先輩はいつもと全然変わらない。
どういうつもりなんだろう?
そんなことを考えながら、ぼうっとしていたら、原先輩にピンクの振袖を渡された。
「え?」
「僕がチアガールで、サクラが神猛学院女子部の制服。で、ばっつんが和装でもう完璧!」
「は?」
オレは自分の意思とは関係なく、ピンクの振袖を着ることに決まったらしい。
チアガールと女子部の制服に比べたら、振袖で良かったけど。
あんな短いスカートを履くくらいなら、振袖のほうがてんでいいに決まってる。
聞いていた通り、学祭開始のだいぶ前から、校門前は女の子で溢れかえっていた。
いつもはホモばっかりだと思っていたこの学校のそこここで、浮き足立った空気が流れている。
何かオレ、ちょっと安心したよ。
ホントはみんな、女の子が好きなんじゃん!
そうだよ。普通に女の子と恋愛しろ!
っていうか、皇も、女の子を見てウハウハしてたりして!
……いや、まさか!
急に心配になって、自分の教室に駆け込むと、梅ちゃんが皇の腕を取って、甘えるように何かを話していた。
梅ちゃんは、女の子と比べたって可愛い。
お盆の時、どうして二の丸のほうに梅ちゃんがいたのかは、結局未だに聞けないでいる。
皇はすでに奥方様を梅ちゃんで決めていて、鎧鏡家の人間として、お盆の儀式に出席させていた……とか?
あんな二人を見ていると、そんな風に考えてしまう。
そんなふうに思いながら二人を見ていると、梅ちゃんがオレに気付いて『あ!』と、手を振った。
オレも手を振り返そうとした時、ガラリと教室のドアが開いた。
「あ、いた!」
背の高い女の子が、手を振りながら教室に入って来た。
「うおおおおおっ!」
モデルさんみたいに背の高い美人だ。教室にいた男子共が、ものすごい雄叫びを上げた。
うん……気持ちはわかる。
しっかしあの子……オレより背、高いかも。
その子はズカズカ進んできて、皇たちの前で止まった。
えっ?!
「探しちゃった」
「生徒以外はまだ入れない時間のはずだ」
え?皇が……女の子と普通に話してる?!
えっ?!誰?!
……だれーっ?!
「みよし」
女の子がにっこりした。
みよし?
……みよし?
「その子がいくんの知り合い?」
「紹介して!紹介!」
男子共がわらわらと女の子を囲み始めると、梅ちゃんがその子の前に立って、両手を広げた。
「先輩方、この子はダメですよ」
「え?みっちゃんの知り合いなの?」
「あ!」
そうだ!深英 !みよしって、梅ちゃんの本名じゃん!
え?なに?梅ちゃんの知り合い?ホント誰?
梅ちゃんよりも背の高いその子は、梅ちゃんの肩を掴んでにこにこしている。
やっぱり、すごい美人だ。
っていうか、誰かに似てる?
くっきり二重なのに涼しげな目元とか。
日本人じゃないんじゃん?ってくらい高い鼻とか。
大きめの口とか。
あの、笑った顔、とか。
「あ」
皇だ。
皇に似てるんだ。
「とにかくまだ入るな」
その子の手を取って、教室から出そうとする皇に『私はお兄ちゃんに会いに来たんじゃないの!』と言って手を振りほどいたその子は、梅ちゃんの後ろに回った。
2年A組の教室が『えっ?!』一色に染まった。
お兄ちゃん?!
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