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学祭騒動⑧
「んっ、んんっ……っ……」
どんどん深くなるキスに……胸が締め付けられて……苦しい。
皇は……ずるいよ。
あんなに心配させて……そのあと、こんな風に……優しく、こんなことされたらオレ……。
お前のこと、好きにならないようにって、思ってるのに……。
「皇……」
「ん?」
「すめ、らぎ……」
「……どうした?」
キスをしながら、優しく聞いてくる。
どうした?って……そんな風に聞かれたら……余計、オレ……。
「皇っ!」
「どうした?」
オレの頬を包む、皇の手を握った。
どうした?って……。
……好きなんだよっ!
もう……どうにもならないくらい、お前が好きで……。
「皇……」
キスする皇の首にしがみついた。
「皇」
「ん?」
……好きだよ。
もう、どうにもならない。
怖いよ。こんなに……誰かが欲しいなんて……今まで一度だって、思ったことない。
このまま、ずっとくっついていたい。
願っても無理なことを……願ってしまう。
「……んっ……すめら、ぎ……」
必死で、皇の舌を求めた。
皇の息が乱れていくのが……痛いくらい嬉しくて……。
「んうっ……」
オレのこと、好きに……なって……。
オレのこと……好きになってよ。
「皇……」
「泣くな」
お前の命令でも、どうにもならない。
お前が泣かせてるんだ。
……好きで……好きで……胸が苦しい。
これが……切ないって、気持ち?
こんな風にキス出来るのに、どうしてお前は、オレのものじゃないの?
手の届かない人なら、まだ諦めもつくのに……。
お前は手を伸ばせば、届いちゃって……抱きしめて、キスしてくれるのに……。
どうして、オレのものじゃないの?
どうして……オレだけの、ものじゃないの?
「皇……」
「……そのように……呼ぶな」
「っ……名前も呼んだら……いけないの?」
「そうではない!」
「だって、呼ぶなって!」
「……っ」
唇を噛んだ皇に、息が出来ないくらい、抱きしめられた。
このまま、息が止まってしまっても……かまわない。
「皇……」
「ならぬ!」
皇がオレの体をぐっと離した。
……どう、して?
その時、ヒュルルルルル……という音がして、大きな花火が夜空に開いた。
「あっ!」
学祭の最後を飾る打ち上げ花火だ。
自分がコンテストの自己紹介の途中で、舞台を降りたことを、今ようやく思い出した。
「戻らないと!」
コンテストとかその他もろもろ、どうなったんだろう?携帯も置いてきちゃってるし……。
あの花火を打ち上げてるってことは、学祭が無事に終わったってこと?
とにかく早く戻って、皆に謝らないと!
駆け出そうとすると、何かに蹴躓いた。
「うあっ!」
転ぶ!と思ったら、皇がオレのお腹を抱えて支えてくれていた。
「あ」
「誠、そなたは……。掴まっておれ」
そう言って皇は、ひょいっとオレを抱き上げると、スタスタ歩き始めた。
「え?!うわっ!ちょっ!……やめ!皇!」
「それくらいで丁度いいな、そなたは」
「え?ちょっ!ホント、下ろしてって!」
めちゃくちゃ恥ずかしいだろ!だって!これって、いわゆる……アレだよ!お姫様抱っこだよ!
「おとなしくしておれ。そなたが歩くより早く着く」
「そんなワケ……」
「誰が責任者だ?」
「え?」
「今日の学祭の責任者は誰だ。田頭か?旧会長か?」
「え……鏑木先輩……かな。どうして?」
え?何か、文句つけるとか?朝から皇、機嫌悪かったし。って。いや、朝の機嫌の悪さは、たまきちゃんがいたからだろうけど。
って……。
「あ!」
「ん?」
「あの」
「どうした?」
「朝、さ……バカとか言って……ごめん」
朝、階段の踊り場で、皇のバカって言って……そのままだったのを思い出した。
何だか、ものすごく昔のことみたいに思うけど。
「……許さぬ」
「え?」
「一生許さぬ」
「ええっ?!」
「一生余に謝り続けよ」
「ええええっ?!」
「そなたは……誠うつけだな」
そう言って笑った皇は、急に止まって、オレにキスをした。
「……」
お前……言ってることと、やってることが、ちぐはぐだぞ。
「……」
許して、くれたの?
「急ぐぞ。しっかり掴まっておれ」
「……ん」
怒られては許されて、許されるたびに……もっと、好きになっていく。
駄目だって思いながらオレは……皇から、離れられなくなっていく。
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