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予感②
屋敷に戻って、部屋に一人きりになってしばらくすると、シロが窓枠をカリカリ引っ掻き始めた。
「え……」
これって、まさか……また皇?え?だって、雪が降ってるのに……。
急いで窓を開けると、やっぱり窓のすぐ下に皇がいた。
『どけ』と言って、オレを窓から下がらせると、ヒョイっと部屋に入って来た。
「何してんの?雪降ってただろ?」
「シロを預かっても良いかと思うてな」
皇の髪で水滴に変わっていく雪を払うように、皇は小さく頭を振った。
「え?」
「シロがいるゆえ、そなたは今夜宿下り出来ぬと聞いた」
「出来ないわけじゃなくて、自分でそうしたんだよ。でも、今更お前にシロを預けたところで、今夜帰れるわけないじゃん」
「あ?」
「だって、オレの明日の朝ご飯とかさ、もう準備してくれちゃってるよ?きっと」
「……遅かったか」
顔をしかめながら、シロに向かってそう言った皇に吹き出した。
「うん。遅いよ」
オレを睨みながら、こちらに差し出してきた皇の手を取ると、あまりに冷たくてびっくりした。
こんな冷えながら、それでも、オレが宿下がり出来るようにって、来てくれたんだ……。
『遅いけどありがとう』と言うと、ぎゅうっと手を握られた。
「痛っ!……馬で来たの?」
「いや。シロを連れて行くつもりでおったゆえ、歩いて参った」
「すごい、冷たいよ、手」
「……そなたが温めよ」
皇の手を口に近付けて、あたためるように『はぁ』と息をかけた。
「あったかい?」
皇を見上げると、何も言わずキスされた。小さな音をたてて離れていく皇の唇も、すごく冷たい。
その冷たさに体を震わせたオレを、じっと見つめた皇が、唇だけじゃなくて、顔中にキスを落としていく。
皇は唇を重ねたまま、オレを床に押し倒した。
背中が、冷たい。
なのに、体は、熱くなっていく。
皇が、プレートの入った箱を抱きしめていたあの夜から、皇の指は、少しずつ、オレの体を求めるようになっていた。
「んんっ!」
冷た過ぎる指が、すっとお腹をなぞるようにシャツの中に滑り込む。
「つめた……んっ!」
責める言葉を言わせないように、唇を塞いでくる。
冷たい指が胸に届くのと同時に、オレの足の間に割り込んでいた皇の膝が、オレの中心を軽く押した。
「やっ……」
体を捩ると、背中からギュッと強く抱きしめられた。
皇の指は、また無遠慮にシャツに潜り込んで、オレの乳首を探り当てると、撫でるように小さく動いた。
「青葉……」
耳元で囁く……低くて、甘い、声。
「や、んっ……」
こんな風に、キスをされながら、胸をいじられるのは……あの夜から、もう毎回、で……。
最近ではもう……キスされるだけで、乳首が疼いて……仕方ない。
キスされると胸が疼く、条件反射みたいになっちゃってて……。
もうだって……あの夜から二ヶ月近く、3日とあけずこんなことされたら……そんな変な条件反射だって……起きちゃうよ、バカ。
皇はでも……乳首を触るだけで、まだオレの……中心には、触れてはこなかった。
だけど……オレはもう……今も、下着の中でビクビク震える中心を、どうにかしたくて仕方なくなってる。
もう、どうしよう……。
「も……帰らないと!ダメなんじゃないの?!」
無理矢理、皇の腕を引き剥がした。
皇から離れるように体をずらすと、床と擦れたシャツがめくれて、隠れていた胸が、晒された。
「っ!」
オレの手首を押さえつけた皇が、晒された乳首に口を近づけて……。
「ぁっ!」
軽く、口付けた。
ビクンっと大きく体をしならせると、口端を上げた皇が、さらに咥えるように、乳首を包んだ。
もっ、そんなの、ホントにダメ!
胸から広がる快感が、下着の中で膨らむ中心を、濡らしているのがわかる。
「だ、め……皇……」
懇願するように皇を呼ぶと、唇を離した皇が、オレのおでこにキスをして、シャツを直してくれた。
「シロは連れて参る」
「……ん」
シロを連れて、窓から出て行った皇を見送って、すぐにトイレに駆け込んだ。
ズボンを下ろすと、先端から滲んだもので、下着が色を変えている。
「も……バカ……バカ!」
ああもう!
皇の、あのすごく冷たくって大きい手で、こんな風に触られたら……。
「は……あ……はぁっ……」
初めて……舐められた。
ああ、もう!ああ!もう!
中途半端に……触んないでよ、バカ!
「あ……んっ……す、め……っ」
射精したあと、トイレの中で途方にくれた。
どうしたらいいの?この、ちょっと濡れたパンツ。このまま洗濯になんて、出せるわけない!
「……皇のバカ!」
明日実家に持っていく荷物の中に忍ばせて……実家で洗う?もうそれしかない。
「はぁ……っくしゅ!……寒っ!」
もういいや。もう早く寝よう!寝ちゃおう!
小さいバッグにパンツを突っ込んで、オレは新しいパンツを履いてベッドに入った。
そういえば、シロがいない夜って、久しぶりかも……。
何だかいつもよりやけに寒く感じて、オレは布団を肩まですっぽりかぶって目をつぶった。
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