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…承……⑥
何だよ!あれ!好き放題言って!
理由も何にも知らないくせに!
ふっきーは皇に大事にされてるからいいよね!
ふっきーは……皇にあんなこと……あんなひどいこと、絶対にされたことないに決まってる。
皇に大事にされて、喜んで……皇に抱かれてるんだろう?
だけどオレは……。
オレは……。
「……」
大事な人……。
皇は、ふっきーの大事な人。
大事な人は、わかりやすく大事にしたいって、ふっきー、言ってた。
それは、見てればわかるよ。
皇とふっきー、すごく、仲良くて……楽しそうで……大切な人なんだなって、オレが見ていて、ツラくなるくらいだ。
ふっきーだけじゃなくて……皇も、お互いが大事にしてるんだなって、わかる。
オレは……。
オレは?
あんなことがあったあと、一度も見ていなかったチョコプレートの箱を開けた。
『あなたの存在に感謝する』
あんなことがあったのに、これは貰った時のままだ。
でも……皇の気持ちは、変わっちゃったんだ。
実家に帰るか帰らないかは、オレが決めること?
皇はどうでもいいの?
オレが決めたらそれでいいの?
オレがこのプレートを捨ててもいいの?
皇は……無表情でわかりづらいとこばっかりで、偉そうだし、人の手紙勝手に読んだり、無茶苦茶なこともするけど……それでも、いつでもオレのこと、優先してくれてた。
このプレートをくれた誕生日だって、わざわざモナコから帰って来てくれたし。
生徒会のことを相談しに行った時だって、駒様に、自分の支度よりもオレの話を聞いてやれって言ってくれた。
皇はオレのこと、大事に、してくれてた。
だけど、オレは皇を大事にしてきた?
いちいさんが、皇よりもオレの気持ちのほうが心配だったって言うのも、当然だ。
皇がこのプレートを見て、オレの気持ちはここにあるって言ってくれた日も、オレは学校で『お前のものになんかならない』とか『平気で犬とか捨てるんだろう』とか、すっごく酷いことを皇に言った。
なのに皇は、オレを許してくれた。
でも……。
皇はすぐオレに『許さぬ』って言うけど、今まで皇が言う『許さぬ』を……怖いなんて思ったことなかった。こんな風に怒られてるなら、ずっと怒られててもいいって思ったくらいだ。
だけど……オレを無理矢理縛り付けた時の『許さぬ』は……本気で……怖かった。
あの時の皇、本気でオレのこと、許さないって思ってた。
何でそんなに、怒るんだよ。
本多先輩とオレが、何かしたみたいに言って……そんなわけないのに!
オレはあんなに……怖かったのに。
今思い出しても、鳥肌が立つ。
だって、先輩は男だよ?!男に自分から触られるわけないじゃん!
……皇も男だけど。
「……」
皇だけ……違うんじゃん。
皇だけ……特別なんだ。
皇が怒ってること、全部皇の勝手な思い込みなのに!
でもオレは……いっつも素直になれなくて……皇を傷付けてばかりいた気がする。
全然皇のこと、大事にしてなかった。
だって……ずっと怖かったし、恥ずかしかったんだ。
いつか皇がたった一人を選ぶ時、オレじゃない誰かを選ぶなら、オレがこんなに皇のことが好きだなんて……知られていたくなかった。だってカッコ悪いじゃん。
『そなたを選べぬが許せ』なんて言われたら……カッコ悪過ぎて、死んじゃうよ。
「はぁ……」
こんなオレより、ふっきーが選ばれて当然だ。
そうじゃなきゃ、おかしいよね。
だったらもう……実家に戻してもらったほうが……。
「……」
チョコプレートを取り出して、床に投げつけようと手に取った。
「……っ……」
……出来ない。
出来ないよ。
オレには出来ない!
だって……すごく嬉しかったんだ。
オレがここにいるだけで、皇は『ありがとう』って思ってくれてるんだって……。
お前が命令してよ!
殿様なんだから!
こんな候補はいらないから帰れ!って、お前が……。
だってオレには……このプレートを捨てるなんて、出来ない。
……出来ないよ。
オレは、皇が望むようなこと、何一つ、出来ない。
誰にも触らせるなって約束も、守ることが出来なかった。
でも、触らせたかったわけじゃないのに。
自分だけじゃ、逃げられなかった。それでも精一杯、逃げようとしたのに。
それでも……ダメなの?
皇に会うのが……怖い。
もう……何もかもから……逃げ出したい。
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